第13話 チャラ男からの誘い!(改稿)
「なぁ!! 夏目さんってどこから来たの??」
「景谷の隣だなんて。席替えは1ヶ月後だから我慢してくれな」
「夏目さんってさ〜〜」
などなど。休み時間に入った時、俺は我が身が、不安でたまらなかったのだが転入生への好奇心の方が強かったのか今、俺の存在感は0となっている。
助かったぞ。ありがとな……まじで。それに、担任も。
担任からの脅しもよく考えてみれば、クラスメイトの行動を抑制してくれてるように思える。
一気にクラスメイトが、転入生の夏目優奈に
話しかけていたため、彼女は目がグルグルと回っていた。
ご愁傷様です!!
俺は、ヤジがこっちに飛んでこないようこのまま転入生の方にクラスメイトの意識をそらそうと、ソロリソロリと忍び足で廊下に出る。
すぅーはーすぅーはーと、深呼吸を何度かしていると誰かから、肩をトントンと叩かれた。
「なぁなぁ。景谷君……頼み事があるんだけど
聞いてくれる?」
「げっ」
「はは。心の声漏れてるよ! 大丈夫??」
俺に話しかけてきた人物。それは、クラスでも有名なチャラ男の爽やかイケメン……水壁忠政だった。
普段は、俺への悪口はクラスメイトと軽いノリで言う位で、他の男子と比べたらこいつの俺への好感度はそんなに悪くないんだと思う。
けど、俺に面と向かって話をしてくると言ったことはこれまでに一度もなかった。
今日、俺にずっとニコニコ笑顔を向けてきていたから、何か企んでんのか???
そう思うと、少し怪訝な顔になってしまう。
「そんな警戒しないでよ! いったじゃん!
頼み事がしたいって。別に君を陥れるような事はしないよ。君にとっても悪い話じゃないと思うよ」
「わかった……それでその頼み事って」
「うん。聞いてくれるか。そうか。そうか」
ま、眩しい。なんなんだこいつの笑顔は。
男の俺でも、見惚れてしまう程の爽やかな笑みだった。
この笑顔を向けるだけで、どれほど多くの子が恋に落ちるだろうか……。想像しただけで身の毛がよだった。
俺にはそんな笑顔はできない……。やっぱり、この世界は不公平だ。そうこう思っていると、水壁が頼み事について話し出した。
「で、その頼みっていうのは! 君にカラオケに来てもらいたいってことだよ!」
「は?」
「は? じゃないよ……。カラオケ!! カラオケに来てもらいたんだ。景谷君に!!」
「な、な、何で?」
「それは。君が来てくれれば、美少女が参加してくれるはずだからだよ」
「そんなことはな……」
「あるさ!! 少なくとも、安藤さん。カラオケとかクラスの打ち上げに全く参加しない彼女。君が来ると言えば、安藤さんは必ず来るよ! それに、今日の転入生。何故か君は彼女と知り合いっぽかったしね。しかも、だ。今日クラスに急に来たロリ美女の神室美沙。君は彼女とも接点を持っていた。彼女に俺は何度かこういった誘いをしたが、見事全て断られたのさ。でも、君が来ると言えば?? 話は違ってくると思うわけよ」
なるほどな。こいつの企みは、美女とお近づきしてハーレムをしたい、と。最初の自己紹介の時、海賊王になるとか言ってたが完全に、チャラ王もしくはハーレム王の間違えだな……。
ククッ。笑える。けど、悪いな。
カラオケみたいな場所は陰キャにとっては
死地でしかないんだ。
どうせ、陽キャな奴がいっぱい集まってくんだろ?? だったら、尚更行かねーわ。
「悪いけど……」
「うん! 君ならそう言うよね!! だけど、ね。最初に言ったろう?? 君にとっても悪い話じゃないと思うって。取引だよ。君がカラオケに今回参加してくれるなら、僕は、赤城グループの君への怒り。まぁ、君に手を出させることは絶対にさせない。悪口をとめるのは流石に無理だけどね。彼らの怒りをなだめてみせるよ」
うっ。この取引………すごく貴重だぞ。
実のところをいうと水壁は、話術がとんでもない奴でもあるのだ。
人の心理をよくわかっている。実際に、短気な赤城を水壁が一人で抑えているのも何度か見たことがあった。
今は注目が転入生の方にいっているから俺は一時的にターゲットにされてない……。
でも、いずれは。考えただけで恐ろしい。
いくら、担任が怒ろうとも誰が何をしようとも影に隠れてコソコソとやってきそうだ。特に赤城グループは。
けど、水壁に頼めば身の危険を気負いしなくて済むのか? なら、カラオケ一回行ったほうが良くね? 案外、いや直ぐに自分の中で答えがでた。
「わかった…その取引ならカラオケに行こう。
途中で取引破棄とかしないでくれよ?」
「どんだけ信用されてないの?? 僕は………はぁ。大丈夫。約束は守るよ。それと、カラオケには他クラスの女子とか男子は来るけど、赤城達。まぁクラスの連中はあまり来ないから」
「そうしてくれると助かる……」
「うん!!! じゃあ、はい。この紙にカラオケについての詳細書いてるから」
そう言って、水壁は俺に紙を渡してきた。
俺が紙を受け取ると、嵐のように、安藤さん、神室さんを誘ってくると言って去っていった。転入生を誘うのを、今回しなかったのは
多分彼なりの優しさだろう。ここで現在、注目の的である彼女を誘えば赤城達が、食いつくに決まってるからな。
ふぅーお俺は息を吐き、折り畳まれていた紙を広げる。
えっとー、日時はいつなんだ?? って!!!!!!! 今日の放課後だと!!!!
あんにゃろー。いきなりすぎんだろ。だから、あいつ紙を渡して逃げてったのか。
でも、まぁ……。いきなり誘われでもしたら、安藤玲も神室美沙も予定かなんらかが入ってて参加できないだろう。
いやー、俺だけ得することになるな
それじゃあ……。いやー申し訳ない申し訳ない(棒)
心の中で、そう思っていると、誰かからまた肩をトントンとたたかれた。
「話は聞かせてもらったよ。ふふっ。景谷くん。カラオケに行くんだ!! なーらー私も行・こ・う・か・な」
何でだよ。どうして、ここであんたが来るんだ。藍川真美!!!!
ははっと苦笑いしかできない。
どうやら、神様は俺に意地悪でしかないらしい……。
♦︎♢♦︎
約束は守るよ、景谷。
だけどな……。これは、ただのカラオケじゃない。お前という人間を見極めさせてもらう。
チャラ男な少年はドスの効いた声で。一人物陰でそう言うのだった。
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