陰キャぼっちな俺の日常が、壊れていく件について

脇岡こなつ(旧)ダブリューオーシー

1章 

第1話 俺は陰キャぼっちだ(改稿)

「おいw見ろよ、景谷の奴w

 また、一人飯だぜwww」


「うわ〜。まじじゃん。可哀想な奴だよなww」


「そういえばさ、このクラスの女子達に男子でイケてるやつを投票してもらったんだけど、プププ。景谷のやつだけ、0票w。他の男子たちは少なくとも1票は、絶対入ってんのにwww」


「終わってんなー」


「だよなー」


「「「「ははははははははは」」」」


 クラスの男子からの悪口がさっきから止まらないのだが、言うなら陰で言ってもらいたい。


 敢えて、俺に聞こえるように言っているのだろう。はっきり言ってタチが悪い。


 俺がこの様に周りから蔑まれるようになったのは、高校入学から必然のことだった。


 何故なら、このクラスには陽キャの者しかいないからである。


 一年三組、このクラスだけ何故か俺以外の生徒が全員陽キャなのだ。


 入学後のクラスでの自己紹介。

 一人一人がそれぞれ自己PRをしていた時、皆がハキハキとした物言いで相手の笑いを誘うような話し方をしていた。


「僕の名前は、水壁忠政!! 海賊王になる男だ! なんちゃって。よろしく〜」


「へへっ。俺の名前は赤城風介! 他に言うことは……忘れちまった! ってことでよろしくー」


「私の名前は、藍川真美ー! 覚えといてー! 趣味は、ひ・み・つ!! よろしくね!!」


 などなど。


 俺の番に回された時、俺は"終わったな"と確信した。俺はクラスの皆とは違い、筋金入りの陰キャだからだ。


「景谷守です……。趣味はゲーム。一年間よろしくお願いします……」


 自己紹介した後には拍手が必ず起こっていたのだが、俺の自己紹介には誰も反応しなかった。


 この自己紹介が、俺の'陰キャぼっち生活"の幕開けのトリガーとなったのである。


♦︎♢♦︎


 陰キャぼっちの生活というのは、慣れてしまえば苦痛のないものだった。

 唯一の不満は、クラスメイトからの身もふたもない悪口くらいだろう。小学校だったら、こんな扱い受けなかっただろうな。

 中・高校生になるとなぜカースト制度というものができてしまうのだろうか。


 まぁ一人が好きだからいいのだが……。


♦︎♢♦︎



 高校入学から早二ヶ月がたった、とある日の授業終わり。今日も机にぐったりと体を倒し、俺は目を瞑る。寝れはしないのだが案外、リラックスできる。


「何あの景谷の姿勢。やっぱしキモいよね」


「ほんとほんと。陰キャはやっぱ無理だわ〜。はよー帰れや」


 俺の席の横を通りがかった二人組の女子が

いつものように悪口を言う。


 ぐさっ! やっぱし、メンタルやられるなぁ。俺にコミュ力があれば言い返しができるんだろうが……情けない。


「今日さー。みんなでカラオケいかね?」

「いくいくー」

「楽しみだねー」

「じゃあ。決定ーー景谷はプププ。無視でいいよな?」

「寝てるし、いいんじゃないー」

「さんせーい」


 おい。俺ばっちし起きてるぞ。まぁ誘われた所で行かないけど。


 ガラガラガラ


 教室の戸が開かれる音が耳に入る。


 結局、俺一人を教室に取り残し陽キャ集団は、カラオケへと足を運んだようだ。


「俺も帰ろうかな……」


 誰もいない教室で一人そう呟く。ちなみに俺の家は結構学校から近く徒歩10分でつく。


 昇降口を出てゆっくり歩いて帰路につくと、



 おい、まじかよ。



 俺の家の前で、大泣きしている女の子がいた。


「うぇーーん! ごめんよーー」


 あぁなるほど。亜弥と喧嘩でもしたのか。合点がいった。


 俺には中学2年の生意気な妹が一人いる。

 妹の亜弥は陽キャで、凄い上から目線で物言いしてくる。昔は素直でいい子だったのだが。


 「ね、ねぇ……君、亜弥になんかされたの?」


「うぇーーん。いかにも陰キャっぽい人に声かけられたーーー! 誘拐されちゃうーー!!」


 「なっ。違! 陰キャは合ってるが誘拐とは心外な!!」


 何を言うんだこの子は。俺の学校ですり減ってるHPに追い討ちかけないで。もう俺のライフは0よ!


「ぐすん。じゃあどうして声かけてきたの?」


「お、俺がこの家に住んでるからだ。家の前で泣かれてたらそら声かけるよ。ちなみに俺は亜弥の兄だ……」


「あなたがあやさちゃんのお兄ちゃん? 嘘だーー。全然似てないよー!!!  うぇーーん!!!」


「あぁ……面倒くさいな。確かに亜弥と俺は全然自分でも似てないと思うが……血の繋がった兄妹なんだ。とりあえず泣き止んでくれ……」


 目の前で涙が止まらない女の子を泣き止ませる方法。

 数々のギャルゲーをプレイしてきた俺には

この状況の打開策が分かる……!

 

  有効手段は頭ポンポンだ!!!!!



 けどな……陰キャの俺にはこの行為はハードルが高すぎる。それに、好きでもない人の頭ポンポンはうざいだけだと、前に妹が言ってた気がする。

 ここは……この手だな。ちょっと勇気がいるけど……年下ならなんとかやれそうだ。


「えっ?」


「亜弥となんかあったんじゃないのか……。

 相談に乗るから。」


 そう言いつつ、俺がとった行動。それは、背中をさするという行為!! 俺の中ででた、これがベストアンサーだ。けど、やっぱり恥ずかしい。


「ふふふ。ぐすん。顔赤いよ。シャイにも程があるでしょ」


 なっ! この子! からかうなよ! 年上を!! まぁでも泣き止んでくれてよかったか。



「実はね、あやさちゃんと喧嘩しちゃったの。

ダンスのペア大会が近くて、一緒に練習してたんだけど、私が失敗ばかりしちゃってあやさちゃんの足引っ張って……」


「それで、亜弥が怒ってっていう流れか…」


「うん……そうなの」


「な、何だそりゃ。亜弥が悪いじゃないか!!ダンスで大事なのは……いやペア競技で一番大切なのは思いやりの精神だろ! 相方を責めるのは一番やっちゃいけない事だ……それも、ミスの連発を責めるなんて相手を一番傷つける行為だろ!!」



あっしまった。つい、あつく語りすぎてしまった。いかんな。チームやらペアって話になるとついあつくなっちまう。


「い、意外。あやさちゃんのお兄ちゃんって

全然そんなあついキャラに見えないのに」


「あ、あぁ。っていうか、今更だけど

 俺のこと亜弥の兄って認めてくれたんだな」


「うん! そりゃクスクス。あんなに、シャイなとこ見たら……ツンデレのあやさちゃんにそっくりだと思ったよ」


それで、からかうのやめてー。顔また赤くしちゃう。


「えーーと。そ、それで君はどうしたいんだ?」


「私は、あやさちゃんと仲直りがしたい。

 けど。その前に、今よりもっと上手くなって

 次練習した時アッ!! とさせたい!!」


「なるほど。それは良い考えだな……。ちなみにあやさ以外の練習相手にあてがあるのか?」



 そう言うと、少女はビシッと俺を人差し指で指してきた。


 えっ!! ま、まさか……俺!?


「あやさちゃんのお兄ちゃんしか適任はいない。あやさちゃんが前に言ってた。兄は凄くダンスが上手って」


 あやさの奴そんな事言ってたのか。


 けど、悪いな。俺には学校で溜まってるストレス解消。いやHP回復と言った方がいいだろうか。ゲームが待ってんだよ!!!!


「ごめん。俺は」


「うぇーーーーーーん!!! やっぱり私はぁ!!!!」


くそっ! 卑怯だぞ! 泣くなんて……こんなの断れないじゃん。


「あぁ。わかった。わかった。

 手伝ってやる。ダンスな、ダンス。」


「ほんと? やったーー!!!! なら、明日の4時15分! ここの近くのコンビニで集合ってことで!」


「わかった。けど、手伝うって言っても、長くはしないぞ」


「わかってるって♪ じゃあねーーー」


 スタスタとアパートの階段を降りて行きダッシュで少女はどこかへ去っていった。


「あっ。名前聞くの忘れた……まぁいいか」


鍵をガチャっと開けて家の中へ入る。部屋へと飛び込みテレビゲームを起動させゲーム三昧すること3時間。


あぁ……腹減った。


今、家の中には俺と妹しかいない。

うちの両親は共働きで夜遅くに帰ってくる。

ごはんは、俺と妹が日替わりで作っており

今日の担当は妹だ。


「腹減ったんだが……あやさー」


「私いらないから、勝手に作ってれば! 根暗!!!」


 うおっ。今日はいつになく不機嫌だなぁ。喧嘩が原因だろうな。100%。"君子危うきに近寄らず"だな。


 俺は家の残りのインスタント食品をあっためて、適当に二人前つくり、自分のを食べ終わった後ラップで包んで、妹の分をテーブルの上に置いといた。


 食後眠くなったので、少し、自分の部屋に戻り、眠ることにした。


「ダンスか〜。久しぶりだな。今でもできんのかな…俺。ぐー。ぐー。スピー」


♦︎♢♦︎


「おい! 起きろや! 根暗の守!! くそ兄貴」


「ん? なんだ?? ってえ」


「え? じゃないわよ。あと15分しかないわよ」


 俺は、昨日ちょっとした睡眠をとるつもりが

朝の学校登校ギリギリの時間まで眠っていたらしい。


「やべー!!! 先行っといてくれ!! 起こしてくれてありがと」


「昨日のご飯のお礼……言われなくても先行くわよ!」


昨日、風呂に入ってなかった俺はシャワーを軽く浴び髪を乾かさないまま、荷物を持ってすぐ登校した。朝ごはんも食べれてない。

はっきり言って最悪だ。


唯一の救いは、学校から家が近いということだけだろう。


 はぁはぁはぁ。


息を切らしながら走り、ギリギリで遅刻せず登校できた。


 危なかった。


 とりあえず一安心した俺だったが、地獄の様な悪口が今日は特にはげしかった。


「おい! 見ろよ。景谷の髪www濡れてるぜwwwwwww」


「きったねー用水路にでもおちたんじゃね?」


「それは言い過ぎだって!ww」


 そう。髪が濡れていた事をすごくいじられた。それと、授業中腹鳴りまくった。


 本当に今日はついてない。最悪だ。


 俺は、"陰キャぼっち"な生活を今日はいつになく、不快な気分で過ごしたのだった。

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