第20話 "陰キャぼっち"ハーレム!?

 「「「「……………………。」」」」

     

       ポチポチ


 「「「「……………………。」」」」


どんな絵面だよ…これは。。

側からこのカラオケルームを見れば、そんな感想が出てくるだろう。なんせ、俺ですらそう思っているのだから。誰一人として、声を発さないこの場で、

歌うのを決意したのは、いいものの、

何かなぁ。。歌いにくいんだよなぁ。

俺がそう思う原因は、一人の少女にあった。

  

      ぺらぺらぺら


と、本をめくる音が、タブレットの操作音と共鳴するかの様に響いていたのだ。


   本に熱中して読んでるのに…

   歌うってのもなぁ。。


さっきから、目配せをしてるものの

氷野は、一切気付くことなく

本を読み続けていた。。


「いや、家帰って読んでくれよ…。」

そう言いたい気持ちでヤマヤマなのだが、

シーーーンとした空間で、人に声をかけるのには何故か、無駄な緊張感があった。

 

それに、自分の世界に入り込んでる人間に話しかけるってのもなぁ。


読書してる人に話しかけるのには、

イヤホンして音楽聴いてる人に話しかけるのと、同じくらいのハードルが俺にはあった。


どうしようか……。

少しだけ悩んだ結果、俺はもうどうなでもなれ!!

精神で、結局氷野の存在は無視して

歌を歌うことにした。


♦︎♢♦︎


   「〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

前奏が流れ始めると、

パチパチパチと、拍手する音が聞こえた。

誰かと思って振り返ってみれば

氷野だった。


本を鞄の中にしまって、

今は、俺の方をガッツシ見ていた。


この野郎…。

絶対俺の目配せ…気付いてただろ。。

話しかけにくい状況を作って俺が困ってたのを、楽しんでたな…。。

俺が、そう思ったのには理由がある。

氷野は俺に小悪魔がする悪意がちょっぴり入った笑顔を向けていたのだ。



この子と関わるとからかわれる事がずっとこの先続きそうだ…。何て事を思いいつ

一つため息をつき、俺は

歌に集中する事にした。


目を瞑り、一人部屋で歌を歌うという

設定で、声を出す。


「君が好きなんだー。

 振り向いて欲しい〜。

 この熱い意志と想いを胸にやどして

 欲しい〜。」と。


 歌い終わって目を開けると、

 パチパチパチパチパチと大きな拍手が聞こえてきた。周りを見れば、下を向いてた

神室と安藤そして、顔を赤く染めていた

藍川、そして…小悪魔の氷野…まぁ

この場にいた全員が、拍手をしてくれた。。


まぁ、皆元気出してくれて良かったんだけど

ちょ、ちょっと過剰すぎないか??


俺は少し頬が引きつってしまった。


「君が好きだって。ふふふ。」

「守君……❤️。」

「ふふっ。」

「クスクス。」

何か、それぞれがボソボソと呟いてて、

俺には何て言ってるのか聞こえなかった。

だけど、何故だろう……。

さっきから、鳥肌がすごくたっているんだけど…。


それと、何かすごーく嫌な予感がしたので、

トイレにでも行こうかなと、そう思いマイクを元にあった場所へ戻して、

俺は退席しようとした。


ドアノブに手を掛けると


「「「カラオケ二週目歌ってこう!」」」

と氷野以外の女子が言い出し、、

俺は、ガッツし神室美沙に袖を掴まれた。

そして、かがむ様に手招きされたので

前かがみをすると、耳元でこう囁いてきた。


「もう一回歌ってくれない??

 萌えキュンキュン!!」と。


「勘弁してくれ………。」

俺は苦笑いでそう答えた。


そこから、、俺は何故か女子のカラオケ

二周目に流れで付き合わされ……


時刻は6時30分を回るかたちとなった。


女子五人…そして男子一人がカラオケルームから出て、レジへと向かう。


店員は、「2万円です。」と俺に言ってきて

延長料金含めても高すぎる!と思った。

やばい…。神室美沙にこのタイミングでお金貸して…とは言いにくぞ。。

そう思ったのだが

困った俺を見た神室美沙が、1万円札2枚を店員に渡してくれた。


「今日、助けてくれたお礼!!」

 という言葉を添えて。


 皆がうんうんと頷く中、

「えっ?何の話??」と、安藤玲だけが

頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。


 安藤玲…いや、アンダーさん。

 あなたは知らなくていい。。

 ううん。知らない方がいい。


一人で勝手にそう思いこみつつも、

皆とカラオケ店を後にする。。


 皆が楽しく談笑する中俺も時折

 会話に参加させられた。。


俺は、はははと周りの視線を気にして

愛想笑いしかできない。


だって、今俺は一種のハーレム状態…。。

こんなの…見られたら……。。


冷や汗を浮かべながら

早く家についてくれ…。

そう懇願する事しか景谷守には

できなかった。。


♦︎♢♦︎


「えっ?

 あれって

 藍川さんに安藤さん、それに

 神室さん、後あの子は……

名前知らないけど結構美人さんじゃね?

 一人男子がいるな……。

 って、あれかっ景谷じゃん!!!

 赤城…やべーもん見ちまったな。。」


「はぁ?景谷だと………。。

 これは、しめるしかねぇな。」


「やっぱそうなるよな〜。

 中間近いし。

 ここは、テストで景谷と勝負!とか

 ありじゃね?」


「ふんっ。それも、

 ありかもな。

 最初から勝ちは見えてんだけどな。」


夕日が照りつける中、、

景谷守が最も毛嫌う男、赤城は

遠くなっていくクラス最底辺の背中を睨みつけるのだった。



 
























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