概要
廃藩置県が断行された明治四年から物語ははじまる。
武士の気概にしがみつく少年は、あこがれのかつての江戸にやって来た。しかし、東京と名前を変えたその地は、かつての武士の栄光など微塵もない街へと変貌していた。
近代化していく東京。西洋化の波が押し寄せ、戸惑う人々。
そこで繰り広げられる、旧大名家の人々の生活は、けして華やかなものではなかった。
第二章では西郷隆盛から、「不思議の国のアリス」の原書をプレゼントされ薩摩辞書かたてに翻訳に挑んでいく。
そこで、英語の重要性、本の役割、本を作る西洋紙の需要を感じ、深水通武は製紙業を起こすことを決意する。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!説得力ある時代描写のなかで紐とかれる、ういういしい成長物語
「朝ドラのような小説です」と、あとがきで、そう作者さんは書かれています。そのとおりだなあ、とわたしは思うのでした。とてもいい意味で、ご自分の作品を客観的にとらえていらっしゃると思う。
舞台が維新前後の日本ときくと、多くの人は波乱万丈、世直し思想と英雄達の漢気うずまく歴史ロマンを思い浮かべるんじゃないでしょうか。そのころを舞台とする歴史ドラマのほとんどが、そうだから。
でもこの作品は違います。焦点があてられているのは、ミドルティーンのお嬢様とその従者の少年の、出会いと日常、そしてひとときの成長の過程。
野望うずまくサスペンスで「つづきはどうなる」とハラハラさせてくる作品ではない。でもそれだけ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!レベル違い過ぎ。歴史苦手&大河ドラマに興味なしの私でも夢中にさせられた
(第一章『第一章 天高し』まで読了しての感想です。ここまでで十分素晴らしかったのと、物語の区切りがついていること、そしてカクヨムコン終了前に一人でも多くの方に読んで欲しいと思ったからです)
あまりに素晴らしくて、「作者様いったい何者?」とググってしまいました。
私は恥ずかしいくらい日本史が駄目で興味もないのですが、それでもとても面白く読めるのです。
歴史的な知識が沢山盛り込んであります。
でもそれらがすべて自然に物語に溶け込んでいる。
そしてキャラクター達の魅力的なこと!
ストーリーと構成も素晴らしいです。
きちんとした「小説」としてみた場合、第5回カクヨムコンでこれを超える…続きを読む - ★★★ Excellent!!!文明開化の音がした!
散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする
たぶん一度は聞いたことがあるはずのこの都都逸(はやり歌)に代表される、断髪令が出たまさに明治4年(1871年)、この物語はスタートします。
主人公は、廃藩置県で東京府になった江戸に、小姓として奉公に上がる予定できた12歳の少年、周(あまね)くん。
意気揚々と上京したはずが、ところがどっこいついた早々、屋敷を明け渡せと政府から追い出された主人を追って、周少年は中屋敷から下屋敷のある青山へ移動します……。
約150年前の明治になったばかりの東京。
皆さんどんなイメージ持ってますか?
わたしはどうも文明開化の音がした華やかな一部のイメージが植え…続きを読む - ★★★ Excellent!!!激動の時代の中出会った二人。彼らの想いと行く末は――
激動の明治時代――大名だった家を舞台に出会った、二人の物語です。
第1章は二人の出会い、第2章は共に過ごす二人、第3章は少し、だけど大きく成長した二人が描かれます。
時代も国も取り巻く環境も、二人の周囲は大きく変わっていきます。
明治時代を知っている方なら「これか!」と思う出来事も多いでしょう。
ハイクオリティな文章は、読者に読ませる強い力を持っています。とにかく文章の音が綺麗!
時代物に疎い私でも、すらすらと楽しく読ませていただきました。
終盤は読み終わってしまうのが勿体ないと思うくらい、話にのめり込みました。
読後感も爽やかで胸がすく思いです。この二人らしいエンディングでした。
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