文明開化の音がした!

散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする

たぶん一度は聞いたことがあるはずのこの都都逸(はやり歌)に代表される、断髪令が出たまさに明治4年(1871年)、この物語はスタートします。

主人公は、廃藩置県で東京府になった江戸に、小姓として奉公に上がる予定できた12歳の少年、周(あまね)くん。

意気揚々と上京したはずが、ところがどっこいついた早々、屋敷を明け渡せと政府から追い出された主人を追って、周少年は中屋敷から下屋敷のある青山へ移動します……。

約150年前の明治になったばかりの東京。
皆さんどんなイメージ持ってますか?

わたしはどうも文明開化の音がした華やかな一部のイメージが植え付けられていたようで、荒廃した江戸=東京を知りませんでした。

でも大丈夫。
周くん視点で、人がすっかりいなくなってしまった荒野のごとき東京の姿を見ることができます。

穴だらけの塀から抜け出した先でひょっこり出会う主人。

御一新のどさくさやお家騒動に巻き込まれた子供たちが、それでもしたたかに、伸びやかに、文明開化の中で自らの道を手探りで、西洋文明に触れていく様は痛快でもあります。

途中、不思議の国のアリスが出てきたり、個人的には湯島聖堂の博覧会シーンなどは注目の描写です。

そしてそれらがパズルのピースのようにはまっていき、サムライガールとサムライボーイがどうなっていくのか。

どうぞ明治一桁年代の空気を満喫しながら、その世界を堪能してください。

朝ドラがお好きという作者さんに合わせれば、「あさが来た」好きにはおすすめです。「西郷どん」も見ていればばっちりかもしれません。

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