17さい(と24かげつ)、突っ立ってました

――戦闘が数話続くのでその間は文字数が増えます――


 34階に突入ー。

 の、前に。


 お約束の武具とアイテムの更新です。まあアイテムは代わり映えしませんが、補充と上位性能に更新をしておきました。

 回復薬関係はモニカちゃんが魔法で通常のケアをして、私がモニカちゃんのケア(自分に回復魔法は使えない)と重症患者のケアをする感じですね。


 武器は何も変わらず。モニカちゃんの超硬度カトラスを今後どうしようかってところですね。武者ごぶと競り合った際に大きく破損したんですよ。幸いスペアがあったので事なきを得ていますが、前衛張るのですから34階が終わったくらいで取り替えたいところです。


 防具!みんな新品に交換しました。これは当然か。後はモニカちゃんが軽装から中装に切り替えたくらいですね。私と同じ、化学繊維のボディスーツにプレートを差し込む感じ。

 だいたい私と同じってことでハァハァしてました。百合の鏡。


 私の魔法は大きな技は出ないし、連射も効かないですね。湯治するレベルで休まないといけないのかも知れない。

 こんこんさまがそれなりに魔法を扱えるので、今はこんこんさまに頼ってます。こゃんこゃん(鳴き声)。

 あ、こんこんさまは青いきつねです。青狐。


 こんなところか。さあて参りましょう。

 33階までは私と愛ちゃんだけで駆け抜けました。超早く着いたよ。他の人を異次元に入れてしまえばこういう事ができる。本当チートな魔法やで。


 34階前でみんなを異次元から出して諸々の準備。ドキドキしてきたぁー!


「えーっと。私若月春奈から申し上げるところはとくにないです。あ、……私の悪評を気にせず参加してくれたことに深い感謝を申し上げます、ありがとうございます」

 深いお辞儀


「オイオイ、春奈さん今頃それかよ。俺らも源頼朝から力をもらいたいんだ、さっさと40階まで行こうぜ」


「えっ40階まで着いてきてくれるの」


「当然でござる、拙者であれば魔人の武器でも扱いこなしてみせるでござるよ。早く先に進みたいでござる」


「達一さん……」


「時を超えし絆さんはそうでしょうけど、私達は苦労しました。なにせ軍属ですからね」


「サーセン」


「がっはっはっはっは」


「いやホントサーセン」


 さて、34階に参ります。



 34階に上がってまず目にしたのはおびただしい数の武者ごぶの群れ。そして陣幕で覆われた、ここの総司令官がいる本陣。

 部屋の大きさはざっくりと1km4方というところでしょうか。でかいねえ。



 よし、戦争準備です。



 あちらは威嚇してこっちに向かって来ないので、そのままプランBに移行しましょう。


 異次元の扉を開いて、中から土嚢と重機関銃と65mmオートマチックグレネードランチャーを搬出。据置式の重機関銃やオートマチックグレネードランチャーは60kg以上の重さがありますが、ここのメンバーは一人で200kgは持てるので、割と楽に持ち運びできます。これはこれでチートだ。


 素早く土嚢で陣地を構築し、重機関銃を接地。弾薬を大量に確保して、さあ遠距離戦です。


 ズドドドドドドドドドド! ズドドドドドドドドドド!!


 まず重機関銃が火を吹きます。重機関銃の射程は3.5km位ありますからね。

 1インチ(約12.7mm)から13mmに規格を統一した際に射程と威力がアップしたそうです。遥香ちゃんが言ってました。

 銃弾の長さも長くしたとかなんとか。まーよくわかりません。


 ぶおおおお!ぶおおおお!


 法螺貝が吹かれました。こっちに突撃してくるか、あっちも遠距離戦に移行するのでしょう。


 むー? 相手はシールド係をずらっと前において銃弾を防ぎながら近づいてきましたね。盾に魔法防護がかかっているんでしょうか? 重機関銃をこの距離で防ぐって中々出来ないですよ。あの盾欲しいですね。プレートと交換したい。


 近づいてきてやり始めたのは弓矢の発射と、銃の発射。武者だけあって戦国時代を模しているのか、当時にそっくりな攻撃方法で攻撃してきますね。

 弓は相当な速度で迫ってきますが、みんな土嚢で隠れているのと、モニカちゃんが土嚢のすぐ内側に魔法障壁を展開しているので全然大丈夫です。

 私も普通なら、空間の中に空間を詰め込んで1単位空間の長さや体積を実質数百倍にする、空間積層防御の魔法が使えるんですが……


 銃も問題ないかな。ただ威力があるのでモニカちゃんの魔力残量がちょっと心配です。障壁に圧力が加わると詠唱者に負荷がかかって魔力量を削られますからね。魔素を削られるって言ったほうが自然かな。魔素、魔素、まそまそー♪



 重機関銃を防がれた、この今が65mmオートマチックグレネードランチャーの出番です。空中炸裂弾を発射して頭上から破片と爆風を撒き散らす!!


 ドドドドーン!


 ババババーン!


 さすが65mm、めっちゃ効いてます!! シールド役の後ろがバタバタ倒れていってます! 今度は弾種を切り替えて小型ロケットランチャーの用な感じにして発射!! ドガーン!これはさすがのシールド役も命中箇所に大穴を開けていますね!


 いける!



 正面火力は。



 ええ、今回のプランだと火力は正面にしか向けられないので、側面ががら空きなんです。そこはごぶごぶもわかっているらしく、側面に回り込む部隊が増えました。この階全てに弾が届く重機関銃で制圧射撃  (間断なく射撃し続け、敵の移動や行動を阻止する戦法)しているのでそう簡単には回り込まれないのですが、ゼロってわけじゃあありません。


 というわけで、側面を守るわけです。愛ちゃん、そして時を超えし絆で。


 完全無敵の愛ちゃん、最強コンビネーションで魔人とも相対できるであろう時をか超えし絆で。



 負ける要素ねえじゃねえか。



「はぁぁぁ!」


 愛ちゃんの、両手持ちでの袈裟斬り!


 ズブシャァ!


 すっぱーんと胴体を両断!



「いくぞ!達一、太一!」「おう!」「やるでがんす!」


 太一さんが敵集団を止めて、茂一さんが槍で横槍を入れて、太一さんの刀で斬る!!


 ズバァ!ザバァ!ドビャア!



 ぽんぽんぽーんと敵を屠る!



 春奈は突っ立っている!



「てい!」


「うおおおお!」


「がんばれー」


「たぁ!」


「達一今だ!」


「ぼへー」


「もらったぁ!」


「ここだ一夏ぁ!」


「はなほじほじ」



 春奈は突っ立っている!



 いや、扉維持してるから。頑張ってるから私も。無制限に弾薬使えるの私のおかげだから。


 ちなみにこんこんさまは私の足元で寝てます。ピンチじゃないと動かないんだよね。33階はピンチだったんだねえ。しみじみ。


 グレネード様重機関銃様白兵戦やった皆様のおかげで接近してきた部隊はほぼ消滅。後は後ろで構えている親衛隊などの少数精鋭戦力だけとなりました。200は潰したので特殊ダンジョン作戦群の人相当成長しただろうなあ。

 周知の通り、討伐に何らかの関与をしていれば成長の恩恵を得られます。防御しただけ弾を運ぶだけでも成長するってわけだ。

 2人1組の3組運用していたので、作戦群の皆さん全員成長したはずですね。


「ふむ、頃合いですな。榊どの! そろそろ打って出るときと見たがいかがですかな?」


「賛成。少し息を整えたら本陣に突撃しよう」




 少し経ちました。参りましょー。


 本陣前にいたのは20人を超えるくらいの、33階武者ごぶに似たフル装備武者ごぶ。今までの雑魚武者ごぶとはちょっと違いますね。


 ちなみに接触前に作戦群さんが97式重歩兵銃による掃射を行っていますが、ノーダメージでしたね、傷すら負ってない。もう8mm強装弾じゃ歯が立ちませんか……


 今回は3部隊、愛ちゃんモニカちゃん、一夏さんを除いた時を超えし絆、作戦群さん、という陣容です。私と一夏さんは狙える時に魔法を撃つ係。

 別名、足手まといだから弾かれた。




 20ちょっといましたが3部隊10人で攻略したので回り込まれることもなく相対できて、半数が同時に凶化するなど、まあまあ危ないときはありましたが無事に討伐成功。


 残るは陣幕内部に居る総司令官だけですね。


「じゃあここは僕とモニカでいくから。援護よろしくね」


 というわけで覗きに行ったのですが


「これどういうことなんだろう……春奈ちょっと来て」


 と呼ばれたので向かいますと、そこには



 魔法陣の中で自殺している総司令官がいたのでした。種類はゴブリントーシュかな?



「この魔法陣、33階でも見たな……」


「35階は一度降りてから挑むべきだと思う」


「愛さんがそうおっしゃるのならそうなんでしょうね」


「ソーダナ、だいぶ消耗したのは間違いない。一度降りて再度来よう」


「私達は軍令がくだらない限り、ご一緒するのは難しいですね」


「なーに、私逸見がそろそろ軍曹から曹長になるので、そうすれば私と宮本はそれなりに行動を共にすることは可能ですぞ。そうでなくとも、大規模攻勢のための兵力が欲しいときは相談していただければなんとかしてみましょうぞ、がっはっはっはっは」


 とまあ結束力が固くなった感じで一度降りて、戦利品を売却。ここで軍隊とは一度お別れ。


 戦利品だけでうちの分配が5000万超えたので、今回のは私総取りにさせてもらって異次元の中に建ててある家を改装しました。

 9人眠れる作りにしたよ。これで時こえさんと一緒に寝ても余裕があるね。ベッドルームはもちろん男女別に分けてある。



 さてと、35階に入りました。



「これはこれは……こんこんさまの出番かな」


「あのときの屈辱忘れてないでござる。今回は突っ立っているだけではござらぬよ」


「ミンナ、後ろは振り返るなよ。雷魔法で即死する」


「そっか、私以外は皆さん経験してらっしゃるのですね……」



 そう、あの時以来のあいつでした。


 あいつは、34階に貼られていた魔法陣と同じ魔法陣の上に立っていました。不気味な笑みを湛えながら。




「オンドゥルルッタ、サーミナタミナカ」





 魔人です。



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