24
少女は二階にいた。
吹き抜けの階段から2階の廊下へと渡り、四足歩行で悠々と歩いていた。
本能的に怖くて逃げだしたはずだが、2階の手摺の下から獣人を見下していたら、逃げ切れたと感じたのだろう。少女はどこか得意げになっていた。
さてとと一息付けられる場所を見つけた少女は、逃げ切れた余裕から気にしていた場所へと歩みを進めて行った。
少女はそれに近付いてから、廊下に腰を下ろした。
日の光が差し込み七色に光り輝く。礼拝堂全体を明るく照らす、ステンドグラス。
少女の目にはキラキラと眩しく、いつまでもは見ていられず、少し瞼を伏せた。目を閉じても七色の光は瞼の裏側にいつまでも残り続け、少女には光り輝く太陽を彷彿していた。
もう少し近くでみれないか?
少女がそう思うまでに、そう時間は掛からなかった。
飛びつこうと手摺に手を掛けた時だ。
「そこにいたのか。」
男の声が後ろから聞こえてきた。
少女の登って来た階段を軋ませながら男は悠々と歩いてきていた。
男を見るなり、少女は手摺から手を放し静々と足音を忍ばせて近づいていく。まだ男に気を許している訳ではないのだろうか、一定の距離を置いて廊下に座った。
しかし、男の目からすれば懐ききったイエネコの様な姿を思い浮かべていた。
§
ややあってから少女は男に手招かれ、一階の流し場へと連れられてた。
男が手に持った角灯に火を付け、壁に引っ掛けると部屋の隅々までに光が届き渡る。
日中でも倉庫と同じ様に薄暗く、床一面には冷たい石材が敷き詰められていた。
男は主に野菜の洗い流しや調剤に失敗した薬品を流す為に使用しているからか、隅にクモの巣こそ張っているが他の部屋に比べれば比較的きれいではあった。
部屋の中には大きな水瓶が一つ。中には蓄えられた真水と小さな手桶。
他の部屋とは明らかに雰囲気が違うこの部屋に、少女は少々怯えながら辺りをキョロキョロと落ち着かない様子を示していた。
「うーむ、しかしどうしたものか…。」
ここまで手招いてきたがっと、男は眉間にしわを寄せて少し唸る。
子供が居た試しのない、いわゆる独身の男。誰かの背中など洗った経験など皆無であった。
「手こずりそうだが、やるだけやるか。」
ある程度のシュミレーションをし、覚悟を決めた。
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