37
ぼんやりとステンドグラスを眺める少女。
それを軽く肩で息をきし階段の下から少女を見上げる。額ににじんだ汗を左手で拭うが、滝の様に次々と流れ落ちていった。
「…居たと思えば。」
三日間の観察の末、少女の行動について少しだけ理解し始めていた。大抵は逃げるが、必ずと言っていい程にここへと立ち止まっていた。
このステンドグラスに何か思い入れがあるのか。自分の手で触れる事が出来ないのかと何か考えているのか…。
などと思っていたが、雰囲気が違う。
(単に気に入っている…。そう結論付けるしかないか。)
なんてことのない答えだ。
誰しも場所、物、物体。それらに好意を寄せる事はある。野生児ながらに感性が働いている証拠とみるべきだ。
しかし、なぜステンドガラスかだ。
「…ふぅ、とりあえず竜…だかからかな。」
火の吹いた頭で巡らせた考え。これもある意味、単純な答えだった。
竜は得てして高価なものを好む。輝かしい宝石、眩い硬貨。武具なんかもだ。どれにも共通点としては「光輝く・高価な品」っと言う。
何故そんな事をするのかは謎ではあるが、現にそういう生態となっている。
(カラスかっての…。)
少々溜息が漏れた。
年齢相応と思い、しばらく与え続けていた知育玩具が気に入らなかった理由もある意味生態からくるものだったのだろう。
「やり方を変えよう。…生態をもっと良く知れば教育への架け橋になるはずだ。」
本職は薬剤師だ。生態調査を主にした専門家でも知識人と言う訳でもない。
やれることをやろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます