25
「ほれ、まずは立ち上がって。」
腰を落とし、手を地面に落としている少女。
立つように手で指示してみると、意図を理解してかすっと立ち上がってくれた。
改めて、少女の服装を見てみたが、一言で言えばボロボロだ。所々に裂けた穴が開いており、肌が露出していた。
「…脱がすよりも破った方が早そうだ。」
元より着ている服は雑巾にでもする予定だっただけに、それでも良いかとも考えた。
倫理的にも、教会的にも薦められる話ではない気がするっと少々葛藤するも、さして気にする程でもないだろう。
信仰者と言うわけでも、神を信じる者でもない。
職業柄、病(やまい)は根拠をもって根絶することが出来ると信じている。願いだの祈りだので病気が退く訳がないんだ。
「…これも疫病関連云々の予防のためだ。」
少女が恐れないようにとゆっくりと小さな両肩に手を当てた。触れただけでもよくわかる。骨と皮だけの様で風が吹けば飛ばされてしまいそうな身体だ。
少し怯えているのか、小刻みに震えている。あまり悠長に構えている猶予はなさそうだ。
(しかし、少し力を入れただけでも破れてしまいそうだな。)
少女が暴れない様にゆっくりと後ろを向かせ、服を留めている紐を緩めた。
首筋から素肌がのぞかせた。
暴れまわる様子や野生児だと言う事から、野山を駆け回る印象があったが、素肌は意外にも白かった。
長く捕らえられ、幽閉されていたと推測できる。物珍しいから見世物として売られる予定だったのだろう。
「ぐぐぅー…。」
低く唸る少女。野生児だから気恥ずかしいっと言う事はないと思うが、気の良い事ではないようだ。
「少し、我慢しろよ…。」
少女の華奢な手首を軽く握り、服の袖をゆっくりと脱がす。
衣擦れの音が鳴る。この音を聞いていると独特の緊張感を覚え、自身でも軽く動揺していたのか、微かに手先が震えていた。
「…あっ。」
少女のか細い腕の半ばを過ぎたあたりで肩の一部の穴が大きく開いたと思った途端、一気に裂けてしまった。
「……もう、面倒だな。」
袖や背中の大小様々な裂けた穴に目を向け、一言こぼした。
少女に怯えられない様に小さい穴に指を入れて、ゆっくりと裂く。さながら立体的なパズルを解く様に少しずつ解いていく。
脱がすだけでこれだけ疲労するとは、思いもしなかった…。
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