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「これで良しっと。」

 時間は掛かったが、少女の服を脱がす事が出来た。辺りには服の残骸が細かく散らばり、もはや雑巾としても役に立つかどうか、わからないものとなってしまった。

 案の定、奴隷として扱われていた為に、先の麻布の服だった物以外、下には何も身に着けていなかった。

 しかしなんだ。

「…ちっとは恥じて欲しいものだな。」

 裸一貫いっしまとわぬ。

 恥部も胸部も手で隠す事も無く、素っ頓狂な振る舞いもなく、ただぼんやりとその場に立ち尽くしたままであった。

(こういうところは野生児らしいっちゃらしいな。)

 そもそも、服自体が少女にとってあまり着たくなかったのかも知れない。

 こう言うところも教える必要があると思うと、気が遠くなる話だ。

「先のことを考えても、今は仕方ないか。

まずは、その臭い身体を洗うか。」

 少女から腕から手を離し、あらかじめ置いたままの海綿を手に取った。瓶の水を含ませ、固形石鹸をこすりつけた。

 徐々に石鹸と海綿の間から泡が立ち始めた辺りで、少女の興味がこれに移ったのかじっと私の手を見つめてきた。


「興味。まぁこれが一番学びになる思考だよな。」

 少女の手を今一度取り、泡立てた泡の一部を手に乗せてみた。

「ぐぅ…?」

「言葉はまだわからないだろうが、それが泡。

汚れと臭いを落とすものだ。」

 興味津々に顔を近づけ鼻をひくひくと動かして匂いを嗅ぎ、先が二つに割れた舌を伸ばした。

 まぁ、おおよそ予想通りの展開だった。

「ぐにぃ…。」

 全力で眉間にしわを寄せ、大仰な苦悶の顔を見せた。

 舌にまだついている少量の泡を指先で払い、ぺっぺと唾を飛ばした。

「そう、今の味覚は苦いだ。

これは食べ物ではないから、苦くて食えないんだ。」

 私はそう言いながら、少女の身体を泡立てた海綿で擦り始めた。

(正直、苦くて暴れまわるかと思ったが…。なんだか、意外だな。)

 妙に大人しい。信用してくれているのだろうかはさて置き。身体を洗っている最中はこのままでいて欲しいものだ。

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