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 まじまじと身体を見る気はなかったが、やはり洗い始めれば隅々まで少女を観察してしまうのは職業病の一種なのだろう。

 この辺りでは見ない蜥蜴人(リザード)種よりも珍しい竜人(ドラゴニュート)種。

 身体の構造がどうなっているのかは、研究者や医者でなくとも興味が沸くものがあった。

「うーむ…。正面はさして普通の人族と変わりないな。」

 大人しく泡まみれになってくれている少女。

 今までにない不思議な感覚で気持ちが良いのだろうか、先ほどまで苦悶に満ちた顔がゆるみ綻んだ表情をしていた。

「次は背中をっと…。」

 後ろを向くよう、少女の肩を軽く掴み、ゆっくりと後ろを向かせた。

 先ほど、服を脱がしていた際にも少々見えていたので今更驚きはしないが、やはり背中は人族とは違った。

(小さいながらに、鱗が多少生えているな…。)

 竜人種と言うだけに、喉の裏には逆鱗があるだろうと、少し探したが鱗らしいものは正面にはなかった。

 しかし、背中は違った。

 人で言う肩甲骨のあたりに、皮膚の表面を覆うように一塊に密集した鱗が生えていた。

 まだ小さい少女だけに、鱗の大きさも私の小指の先よりも小さい。少し触れてみるとザラザラとしている。

 鱗の塊の下を少しめくってみると、皮膚と鱗の間に薄い膜が覗いていた。

「これは…飛膜(ひまく)か?」

 蜥蜴人とは違い、将来的には有翼になるっと言う事か。

 これはこれで生態系の大発見に近いものを見た気がするし、もう少し詳しく調べてみたいと言う探求欲が沸いてくるのだが。

「ぐぐるぅ…。」

 少女はこの翼をあまり触って欲しくは無いようだ。

 牙をむき出しにして、先ほどの綻んだ表情とは違い、今にも飛び掛かってきそうな程に恨めしい顔をしていた。

「悪かったよ。続きをやるって。」

 すぐに未成熟な翼から手を放し、小さい少女の背中を洗い始めた。

 だが、すぐに手を止めかねない事に気付いた。

 尻の間。尾てい骨のあたりだろうか、ここにも小さいながらに鱗に覆われた尻尾が小さく見えていた。

「あぁ…。これは成長したら長くなるだろうな…。」

 家主の勘は正しかったようだ。

 今は良いかもしれないが、後々服に穴をあけなければならなくなるだろうな。

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