銀の裏地
夢語バク
雨は降り地に注ぐ
プロローグ
この国は予てより奴隷業が盛んであった。
国内の山から白樺模様の白い石材が採取できる事から石材加工が有名となり、住宅から家具、装飾品から国王の住まう城に至るまで様々な物がこの白い石で出来ていた。
白く綺麗な石で出来た品々は近隣諸国にも羨まれ、国は多額の金額をつけて手広い輸出を行い国を大きくしていった。
しかし、この白い石は重く硬い鉱石。
需要の増加に伴い、専門の職人だけでは切り出す事もままならなくなっていっていた。
その為か、いつしか労働の強制を推奨し、人権を剥奪した者の強制労働を良しとする事が常習化していった。
人権の無い彼らは虐げられながら、過酷な環境での労働に身を置いていた。
時は流れ、白い石の殆どを掘り尽くしたが奴隷は残ったままだった。
それは需要の高い時期に前国王が奴隷法を制定していたと言う事もあるが、法律だけでなく、奴隷と言う身分が格差が国民に深く根付いている事の証でもあった。
しかし、以前とは明らかに違うものがあった。
住居、家族、生活環境、給金。
人としての尊厳や勉学の自由こそまだ認められていないものの、彼らにもある程度の自由が与えられていた。
だが、ある程度の自由があるだけであり、国民の考え。そして何よりも階級制度は未だに残ったままであり、王族・貴族・庶民、そして奴隷の順は変わり無く今も在り続けていた。
そんなこの国でもっとも暑い時期が過ぎ去り、強い日差しで育った作物も、もうそろそろと収穫でき始めた頃だった。
新しく即位した国王は隣国との連合国家となる事を公言すると共に、とある声明を発表した。
“奴隷制度、及び奴隷と言う階級の撤廃”
これは王国でも一番外れに位置する辺境の町にもすぐに広まる事となった。
§
白い石の壁が連なるも、外観は所々ひび割れており今にも崩れそうな家屋が幾つも点在する町。
王都からは馬を走らせ数日と遠く、隣国にも険しい山々に阻まれ入出国も難しいとされ、もはや陸の孤島とも見れる場所にその町はあった。
かつては険しい山から採れる白い石材で一躍していたのだが、いち早くに石材も採れなくなり、瞬く間にこの町は衰退していった。
今では巨万の富を得た成り上がり貴族も姿を消し、きらびやかだったであろう建造物は鳴りを潜めて崩落を待つばかり。
かつては商人で栄えていただろう噴水の広場も今では人は居れども、飢えに苦しむ者、物乞いに明け暮れる者、息も絶え絶えしく絶命も間近な者。
人も建物も皆一様に果てることを待つ事しか出来ず、この枯れた噴水と同じ様に、この町も枯れ果てやがて石材の家と共に崩落していくのだろうと、住まう人はおろか通りすがる旅商人ですらそう思われていた。
国からも見放されている町だが、この時でさ繁盛している店がある。
それは奴隷商店だった。
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