第55話:フィアの入学式とお友達

 ──翌日。


 今日はフィアの入学式だ。

 学院は次の日から授業となっている。そのため俺はフィアの保護者として参加するのだ。

 ゼノアもいるけど。


「お兄ちゃんにゼノアお姉ちゃん見て見て!」


 トテトテトテッと俺とゼノアの元に走ってきたフィアが、着替えてきた学校指定の制服を見せてきた。


「おお、似合ってるじゃないか!」

「じゃのう。可愛いらしい服じゃ」

「えへへ~」


 俺は嬉しそうに頬を緩めるフィアの頭を撫でてやる。


「ほんとアンタはその子を大事にしてるわね?」

「当たり前だろ」


 そんなアルハの言葉に俺は真顔で返した。


「はぁ……まあいいわ。ほんとに可愛いし」

「変なことするなよ? 今度こそ浄化するからな」

「分かってるわよ!」


 浄化という言葉に過剰に反応するアルハ。

 どうやら、そうとう堪えたらしいことが分かる。

 それから朝食を済ませ学校に行くことに。


「早く行こうよお兄ちゃんとゼノアお姉ちゃん!」

「おう」

「じゃな」

「アルハ留守番は任せた」

「このアルハ様に任せなさい!」

「はいはい。そんじゃ」


 家を出て学校に向かうことに。

 俺とゼノアの間にはフィアがおり手を繋いでいる。

 周りからは暖かい視線が向けられていた。


 そう。これこそが俺が求めていたスローライフなのだ。


「お兄ちゃん」

「どうした?」

「お友達出来ないかな?」

「フィアならできるさ。なっ、ゼノア?」

「うむ。フィアならきっとできるのじゃ」

「楽しみ!」


 早くお友達できないかな、と楽しげなフィア。

 そうこうしているうちに俺たちは学校へと到着した。


「ここが、学校?」

「そうだ。今日からここでみんなと勉強するんだ」

「わぁぁ!」


 目をキラキラと輝かせているフィアに、俺は声をかける。


「行こうか」

「うん!」


 それから会場に着いて、フィアは新入生の列に並び、俺とゼノアは保護者席に座ることに。

 少ししてフィアの入学式が始まるのだった。



 ◇ ◇ ◇



 フィアは職員の言われた通りに新入生の列に並び待機していた。

 列は二列となっており、隣の女の子がフィアを見ていた。その視線に気づいたのか、フィアが隣を見て口を開いた。


「……どうしたの?」


 その女の子は、フィアと同じくらいの身長で、赤色のショートヘアをした子であった。


「え、あ、その……エミリーと言います」

「フィアなの。これからよろしくなの!」


 そんなフィアにオドオドしながらも、よろしく、と返事を返すエミリー。


「エミリーって呼んでもいい?」

「うん。なら私もフィアって呼んでも、その、いいかな?」

「うん。私とエミリーは友達なの!」

「友達……うん! 友達!」


 にぱぁーっと笑顔になる二人。

 

 フィアに初めて友達が出来た瞬間であった。

 もしこの場に秋人とゼノアがいたのなら、「可愛い過ぎる!」と言ってフィアの頭を撫で撫でしていただろうことは間違いない。


 その光景を見ていた職員の先生ですら、微笑ましそうに頬を緩ましていたのだから。



 ◇ ◇ ◇



 それからは滞りなく入学式が終わり帰りの時、フィアが俺とゼノアの元に戻ってきた。


「お兄ちゃん今終わったの!」

「しっかり見ていたぞ」

「妾もじゃ」

「ありがとうなの!」

「それでその子は?」


 俺は先程からフィアの手を握っている女の子を見る。


「この子はエミリーちゃん。お友達!」

「良かったなフィア! 入学式でお友達を作れるなんて!」

「えへへ~」


 フィアの頭を撫で撫でする。

 俺はフィアのお友達であるエミリーに自己紹介をする。


「俺は秋人でこっちはゼノアだ」

「ゼノアじゃ」


 俺の自己紹介に、エミリーちゃんも自己紹介をする。


「え、エミリーです。その……」


 俺とゼノアがフィアの何なのか分からないようだった。


「俺とゼノアはフィアの保護者だよ」

「ではお兄さんとお姉さんですか?」

「だな」

「うむ」


 俺とゼノアは頷いた。


「学校ではフィアと仲良くしてくれ」

「はい!」


 するとどこからかエミリーを呼ぶ声が聞こえた。


「エミリー! どこなのー?!」

「ママー、こっちだよ~!」


 すると、「エミリー!」と言って駆け寄ってきた。

 赤毛の髪が特徴の綺麗な女性だった。

 一緒にいる俺とゼノア、フィアに気づいた。


「フィアちゃんって言うんだよ!」

「フィアです。エミリーちゃんのお友達です。よろしくお願いしますなの」


 頭を下げてお辞儀をするフィアに、「よろしくね」と言って挨拶をする。そして俺を見た。


「事情があってフィアの保護者をしている秋人です。こっちはゼノア。とても可愛らしいお子さんですね」

「これはどうも。エミリーの母のエリーシャと言います。娘がお世話になりました」

「いえいえ。気にしないで下さい。これからフィアがお世話になると思いますが」

「こちらこそです」


 少しエリーシャさんと話をした俺たちは、家に帰る。

 もちろん夕食は豪華なディナーとなるのであった。






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