第23話:俺か? 俺はただの…
俺はマップで襲われている村人をメティスに言ってもらい、最優先で盗賊達を始末していく。
五人程倒すと盗賊達が俺に気づいた。
「死んでいる?お前が殺ったのか。誰だてめぇは?」
その声は盗賊の頭らしい人が発していた。その声に気づいた盗賊達が、俺を囲む様に周りへと集まって来た。そして俺はその問に応える。
「ふっ、俺が誰かって?俺はただの通りすがりだ。気にするな」
俺がそう言うと盗賊達のリーダー、お頭が青筋を立てながら言う。
「俺達がワイルドウルフと知ってふざけてんのか!?うん?」
お頭は俺の後ろの方を見ると笑う。そして。
「いいのがいるじゃねぇか。今ならそっちの二人を寄越せば見逃してやる。とうだ?」
そしていやらしい笑を浮かべる。俺が断ると思わないのだろう。
ため息一つ。そんなしょうもない事を行ってきた盗賊のお頭に、俺は呆れながら告げる。
「バカか?お前ら顔をよく見ろ。そんなんじゃ女どころか虫も寄りはしないぞ?それになんか臭うし」
「んだと!」
「それに─────」
俺は続けて話す。
「俺の嫁と妹に手を出そうとしたな?」
スキルの<威圧>を放つ。
すると盗賊達全員が身体を震わして歯をカチカチと鳴らし、恐慌状態へと陥った。
「うっ…」
「お、お頭、これは撤退するしか──」
「な、何言ってやがる!お前ら早くあの男を殺れ!」
「でも──」
「いいから行け!奴の四肢を引きちぎれ!」
頭がそう言うと部下の盗賊達が一斉に襲って来た。
恐慌状態を抜けるとは。大したもんだがお頭に対しての恐怖が勝ったのか…
「部下の言う通り、素直に撤退すれば良かったのにな…」
そんな哀れみを感じつつも俺は、魔境で培った無駄のない動きで攻撃を躱していく。
俺の体術も魔境で培った無駄な動きが一切ない我流だ。
攻撃を少しの動きで躱しなが次々と倒していく。倒すときにナイフで盗賊の首の動脈を切断する。
そして盗賊の数は十人を切った。
どんどん倒されていく仲間に盗賊達は一歩後ずさる。
「な、何してる!さっさと奴を殺せ!何してる!早く殺れ!」
「ふっ、ふははは」
「何がおかしい」
急に笑い出した俺に、盗賊達とお頭はおかしい奴を見る様に見ていた。
盗賊のの発言に俺は応える。
「自分は後方で攻撃しないで部下に任せると?命令しないで攻撃して来ればいいだろ?」
俺はナイフを<異空間庫>へと収納する。
そして。
「ほら丸腰だぞ?来いよ。十分以内に俺に傷を付けることが出来たら逃げても構わないぞ?」
俺がそう言うと盗賊達が目の色を変えて攻撃をしてきた。
そして十分後。
「タイムアップだ」
そう告げると俺は盗賊達へと闇魔法を放つ。
「
「うぐぁっ…」
「が、あ…」
「うっ…」
盗賊達は痺れさせてその場に倒れ込む。だが喋れる様にはしてある。それに気づいたお頭が口を開く。
「くそっ…お前…お前は一体何者…なんだ?」
「またそれか…今回は応えてやろう。俺は─────何者なんだ?」
「いや、お前が知ってるだろ!?」
お頭ナイスツッコミ。
俺は少し考える。そして。
「そうだな。俺は────旅人さ」
「結局は最初と同じじゃねぇか!」
「復讐したい奴らにお前らを殺らせてやるから、少しの間黙ってろよ?」
「うぐっ…」
俺は<異空間庫>から人数分のナイフを取り出す。そして集まって来た村人達を見て話す。
「お前らが復讐をしたいのなら殺らせてやる。今ならこいつらは動けない。どうする?殺るか殺らないかだ。最愛の人が取られた者。妻、夫を奪われた者。人生を狂わされた者。復讐をしたくはないか?」
そう言ってナイフを村人達の前の地面へと突き刺す。最初は怯えていたが、徐々に徐々に村人達の目には一つの意志が宿っていた。それは復讐の意志。一歩また一歩とナイフへと近ずいていく。
俺はゼノアとフィアを連れて犯そうとした奴らは、死よりも苦痛と恐怖を与えてから殺すと決めていた。が、今回はこの人達に譲ろう。
そしてナイフを握って動けない盗賊達へと近ずいて行く。復讐の目を宿して。
盗賊の目の前に立って。
「俺はお前に目の前で彼女を犯され殺された」
「や、止めてくれ!命、命だ──」
「貴方に私の夫を殺された」
「死にたくない!死にたくな──」
「お前に俺の息子を殺された」
「あれはお頭の命令で─────」
そして最後はお頭だけが残った。
「残ったお前は俺が殺してやろう。苦しまずに行かせてやる」
「す、すまない!許してくれとは言わない!だけど命だけは───」
俺はお頭に言う。
「分かった」
「本当か!?」
「勿論だ。俺は寛大だからな。それと体力回復剤だ。飲んでおけ。ほら口を開けろ。これを飲んだらさっさとこの場を去れ」
お頭は疑問に思っていない。
「わ、分かった!」
俺は<異空間庫>から魔物が寄ってくる、特殊な匂いを発するポーションを出して、口を開けたお頭に飲ませた。
これは俺が魔境でレベル上げをしていたときに仕様していた物だ。効果は一日だ。
※ちなみにマスカット味です。
「う、美味い!」
「おっと忘れてた」
「あ、ああ!」
秋人は
「これはなんだ?」
お頭が聞いたそれはビーカーに入った紫の液体だった。
「それは俺が調合して作った状態異常を治すポーションだ。いざとなったときに使え」
その品は数時間後にまた麻痺して動けなくなるものだった。
そしてお頭は笑を浮かべて村を去って行く。
その日森から叫び声が聞こえたとか聞こえなかったとか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます