異世界でひっそりと暮らしたいのに次々と巻き込まれるのですが？

第46話：王城を案内してもらった

　家を購入した翌日。

　俺達はフィリップさんに会っていた。

　隣にはクレアも同席していた。

「それで、見つかったのか？」

「ああ、良い家だ。なんか幽霊が出るとか言っていたが俺達には関係無いから購入してきた」

　二人は家を購入したことよりも、幽霊をが住み着いていた事が驚きだったようだ。

　何処の家を購入したかクレアが俺に尋ねた。

「アキトさん、何処の家を買われたのですか？」

「ん？　買った場所か。王城からの距離はそこそこだったな。たしか何処かの裕福な人が住んでいたって言ってたな。訳あり

物件だったけど、庭も広くて静かな場所だった」

　話を聞いたフィリップさんが俺に尋ねた。

「あの家か。訳ありでそこそこ広い庭となれば一つに限られる」

　まさかフィリップさんが知っていた様だ。

「アキトさん、他の家にしませんか？　訳ありは不安です」

　クレアは心配してくれるようだ。

　フィリップさんも頷き、提案を口にした。

「良かったらこちらで用意するが？　勿論金は要らない。どうだ？　あの家は入居してもすぐに出て行くんだ」

　フィリップさんには申し訳ないが、買ってしまったし、そもそも俺はあの家が気に入っている。

「悪い。丁度立地が良いんだ。ボロくても魔法で外装と内装は新品に出来る。幽霊だってゴーストと変わらないなら除霊は出来る。心配はいらないよ」

「そう、か……」

　フィリップさんとクレアは残念そうな表情をしていた。

　申し訳無い気持ちはある。

「そうだ。少し城の中を見回っていてもいいか？」

「構わんよ。中庭で騎士達が訓練している。どれ、案内ついでに見に行こうか」

「ん？　フィリップさんも来るのか？　ああ。これも国王の責務だ」

「そうか」

　俺達はフィリップさんに、城内を案内してもらう事に。

　宰相さんのダーウェンさんに執事のグーテさんも同行するようだ。

　案内の元、俺達は場内を見て回る。

　書庫や謁見の間なども見て回った。

　最後に中庭のお訓練場に来た。

　訓練の風景を見ていると、見覚えのある人がいた。

「王子であるアストさんが何故騎士と混ざって訓練を？」

　疑問を口にすると、フィリップさんが教えてくれた。

「アストは剣の腕と魔法の腕が一流なのだ。だからこうして時間があると騎士達に混ざって訓練をしているんだ。他の騎士達も負けまいと努力している」

「そうなのか」

　みんな頑張っているのがわかる。

　そこに丁度休憩に入ったのだろう。

　俺達に気づいたアストさんがやってくる。

　他にももう一人やってきた。

「お父様にクレア。それにアキトさん達も。どうしましたか？」

「ああ、今アキトに王城を案内していたところなんだ。丁度ここが最後だ」

「そうだったのですか」

「陛下、騎士の練度も高まって来ました」

「そうかそうか。頑張ってくれ」

「はっ！　して陛下、そちらの方々は？」

　騎士の人が俺を見てそう言った。

「話して無かったな。ワシとクレアが王都に戻る途中、盗賊に襲われてところを助けてもらったのだ。」

「そうでしたか」

　グレファスさんと言う騎士は前に出て口を開いた。

「陛下と姫を助けて頂き感謝する。私はこの国の王国騎士団団長をのグリファス・ハン・マージェンと言う」

　自己紹介をしたグリファスさんに俺も自己紹介をする。

「冒険者をしているアキトだ。こっちはゼノアにフィアだ」

「ゼノアじゃ」

「フィアなの！」

「アキト殿にゼノア殿、フィア殿だな。よろしく頼む」

　それから、フィリップさんがグリファスさんに俺が強いって事を話すと、模擬戦を申し込まれた。

「フィリップさん良いのか？」

「好きにすれば良い。私も見て見たいからな」

「私もです」

　フィリップさんとクレアが見たいというので、グリファスさんの提案を受ける事にした。

「ならお願いするよ」

「アキトさん、私も良いでしょうか？　世界最強がどれくらいなのか試したいのです」

「構わないよ」

「あありがとうございます！」

　訓練所に移動する事に。騎士達もなんだなんだしていたが、模擬戦と聞いて盛り上がっていた。

　場所が開き、俺とグリファスさんが対峙する。

「世界最強、か。私も憧れているんだ。あの魔境の頂点なら最強なのだろう。全力でいかせて頂く！」

「ああ、かかって来い！」

　こうして騎士の合図によって試合が始まった。

「はぁ！」

　一瞬で俺の目の前まで迫ったグリファス。

　だが、俺にはその動きは見え見えだ。

　懐に入ったグリファスが剣を振るった。それは俺の脇腹への直撃コースだ。

　だが、俺は動いていない。

「はぁぁぁあ！」

　剣が入った。剣圧で砂埃が舞う。

　砂煙が晴れた。

「な、何だと！　素手で止めただと!?」

　俺はガッチリと剣を掴んでいた。

　グリファスが剣を戻そうとするが動かない。

「ほれ」

　俺が剣を離すとグリファスは後退した。

「なんという力だ。ハハハッ！　この私がまるで赤子の様だ！」

「次はこっちから行くからな」

　そう言って俺は走ってグリファスの目の前まで移動した。

　恐らくグリファスは、一瞬で俺が目の前に移動したように見えただろう。

　焦ったのか、グリファスは剣を振り下ろした。

　剣は俺に直撃し──霧散した。

「なに？」

「幻想だ」

　そう言って俺はグリファスの背後から剣を突き付けた。

「……参った。私の負けだ。まさかこの私が一瞬で負けるとはな。ハハハッ！」

　愉快そうに笑うグリファス。

「良い経験になった。また機会があれば相手してほしい」

「ああ、いつでもいいぞ」

　次にアストさんの相手をした。

　結果はグリファスさんと同様に一瞬で終わった。

　見ていたみんなは呆気に取られていた。

　フィリップさんにクレア達ですら、こうも簡単に終わるとは思っていなかったようだった。

「グリファスさん誘ってくれれば行くから。まだ数日は王城に泊まってるから」

「わかった。それに俺の事はグリファスでいい」

「そうかなら俺もアキトでいいよ」

「わかった」

　グリファスさんとアストさんと握手をして訓練所を後にするのだった。

　昼時となり、食堂にで食べた。

　あの後、アストさんからも「アストで構わないよ」と言われアストと呼ぶことにした。

　昼食を食べ終わり、俺は口を開いた。

「んじゃこれから家に行って修繕してくる。それと除霊だな」

　立ち上がった俺達にクレアが声を掛けた。

「あの、私も着いて行って良いでしょうか？」

「フィリップさんが良いなら」

　クレアがフィリップさんを見ると、笑顔で頷いた。

「行っても良いぞ」

「アキトさんお願いします」

「おう。フィリップさん、クレアの護衛は良いのか？」

　フィリップさんは呆れた表情になった。

「世界最強が付いているんだ。必要無いだろ？」

「それもそうか」

「頼んだぞ」

「おう。頼まれた」

　俺達は家を見に行くのだった。