第25話:王都

 王都の中に入ると、露店や様々な店などから声が上がり沢山の人々で賑わっていた。


 「流石は王都だ。人が多いな」


 ゼノアは腕を絡めて、フィアは手を繋いで大通りを散策する。ある者は微笑ましい者を見る様な目、ある者は嫉妬の視線。そんな視線を気にすること無く、俺達は散策を続ける。


 俺はギルドに行く事を思い出す。そして店の人に道を聞いて向かう。


 向かう途中にも、ゼノアとフィアが露店などを指差して「ご主人様、あれが食べたいのじゃ!」「お兄ちゃんあれ食べたい!」などと言って、食いながらギルドへと向かう。

 「たしかここを曲がった所にーーあったあった」


 俺は冒険者ギルドの看板を見つけた。


 何故文字が読めるのか?それは<技術(S)>にある<言語理解>があるからだ。ちなみに字も書けます。


 俺は建物を見る。見るとそれは木造建築の二階建てだ。まさにギルドって感じがする建物だ。


 その扉に手を掛けて入ると、カランカラン♪とう音を立てて扉が開く。


 中を見渡すとーー何故か視線が俺達に集まっていた。何故だ?だがスグに視線が外れる。俺は気にすることなく受付に向かう。受付は六つ程あり、男性の受付が二人、女性が四人だ。


 俺は迷うことなく、セミロングの茶髪をした一番可愛いらしい受付嬢の所へと向かう。無論男よりは女だ。何故かゼノアの視線が痛い。


 「依頼ですか?」


 受付嬢がそう聞くと、俺は来た目的を告げる。


 「いや、登録をしに来た」

 「登録ですか?」

 「ああ」


 俺がそう言うと後ろから声が掛けれた。


 「おいおい、まだ登録は早いんじゃないか?それか場所を間違えたか?」


 振り向くと、背中に斧を担いだ筋肉ムキムキの大柄な男が居た。ムキムキデスネ。


 「いや、場所は合ってるよ。身分証を落としちゃって登録しに来たんだよ」

 「だから冒険者か?腕にそれなりの自信が無いとなれないぞ?」

 「安心しろ。腕には自信がある」


 俺の強いと言う発言に、男は挑発の様に言う。


 「そんな貧弱な身体でか?言わせて貰うが、冒険者はそんなに甘くないぞ?」

 「さっきも言っただろ?腕には自身があるって。何ならその背中に背負っている武器を使って試してみるか?」


 俺の挑発に、男は顔を真っ赤にしてその挑発に乗る。

 そこに受付嬢が入って止めようとする。


 「アズベッドさん!一般人への力の行使は禁止しています!今すぐに止めて下さい!」


 成程こと男はアズベッドと言うのか。


 それに対してアズベッドは言う。


 「ナーシャさん。冒険者になろうっていうんだ、一般人じゃないだろ?」

 「うっ、それは…」


 受付嬢の名前はナーシャさんと言うらしい。そんな会話に、俺はアズベッドへと声を掛ける。


 「やるのかやらないのかはっきりしてくれ、時間が勿体ない」


 俺の言葉に同意するかの様にゼノアとフィアが言う。


 「たしかにのう。美味い飯が早く食べいのじゃ」

 「ん。早く食べたいの!」


 その発言に男は怒りで赤い顔を更に顔を真っ赤にさせる。明らかにみて子供と分かる二人の少女に言われたのだから。一人は少女では無いが。


 「んだとッ!なら今すぐにこの場で退場して貰う!」

 「ひぅっ」


 フィアはアズベッドの大声で怯える。そして男は攻撃をしようとして────────固まった。


 何があったか?それは秋人が加減をした<威圧>を振り撒いたからだ。勿論ゼノアとフィアにはやっていない。周囲の人の顔は蒼白になってガクガクしている。


 受付に居る人達も顔を蒼白にしていた。


 そして威圧を諸に受けたアズベッドはというと。


 「あ、う……」


 俺はフィアの頭に手を置いて言う。


 「あ?うちの子が怯えているだろ?」

 「ご主人様よ。妾は?」

 「………どうなんだ?」

 「スルーしないでほしいのじゃ…」


 そこはスルー。そもそもお前は怯えていないだろ?それに竜王は絶対者だろ?


 アズベッドは何とか声を出す。


 「そ、それは、その…」

 「歯切れが悪いな、そんなに言えないことなのか?」


 ここに居る者はこう思っただろう。「歯切れが悪いのはあんたのせいだ」と。


 俺が<威圧>を解除すると、ギルドに居たみんなは溜め息を吐く。

 そして俺はアズベッドに問いかける。


 「で、どうなんだ?」

 「お、俺が悪かった。この通りだ。許してくれ!」


 アズベッドは頭を下げる。


 「まあ俺は慈悲深いし?今回だけは許す。次は無いと思え」


 軽く威圧をして忠告する。


 「あ、ああ。感謝する」


 そう言ってアズベッドは自分の居た席へと戻る。仲間達から何かを言われているがどうでもいい。


 そして振り返って受付嬢へと話しの続きをする。


 「冒険者になりたいのだが?」

 「は、はい。ではこちらの用紙に必要事項を御記入下さい。それと字は書けますか?」


 俺は「大丈夫」と言って必要事項を書いていく。とはいっても書く所は名前、出身、得意な戦闘方法だ。


 だが一つ書けないとすれば…


 「出身は書かないとダメか?」


 フィアは何とかなるのだが俺とゼノアが問題だ。


 「いえ、書かなくても大丈夫ですが、入国時の審査や検問時などに信用性が薄れてしまいます」

 「そうなのか。ありがとう」


 俺は出身地だけは書かないで次を書く。次に書くのは戦闘方法だ。暫し俺は考える。そして俺は書く。


 書いた用紙を受付嬢へと渡しそれを確認している。


 「あの、戦闘方法なのですが」

 「まずかったか?」

 「いえ、その、”全て”とは?」

 「書いた通りだ。全て得意だ。武術から魔法まで。その時によって戦闘方法が変わる」

 「そうですか。分かりした」


 そして三人分の手続きが終わり説明を受ける。


 「説明を致しましょうか?」

 「頼む」


 メティスからざっくりとした説明は聞いてはいたが、本職かれ聞いた方がいいだろう。


 「では説明させて頂きます」


 俺は説明を聞き終わる。


 説明の内容はこうだ。


 冒険者ランクは上からS>A>B>C>D>E>Fとなっている。次にCランクまでは月に一回の依頼を受けないといけないのだ。受けなければ三ヶ月間の冒険者資格の剥奪だ。Bランクになると受けなくても大丈夫だ。だが指名依頼が多くなる。Aランクは世界にもそんなに居ない。更にはSランクは世界で三人しか居ないと言う。

 最後にギルド内での争い、武器を抜く事は禁止されている。


 大事なのは言うて無い。


 そして、俺達は冒険者カードを受け取って泊まる宿を探しにギルドを出るのだった。

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