第45話:幽霊が住み着いてました
「このお部屋をお使い下さい。何かありましたら近くの者に声を掛けて頂ければ結構です。それではごゆっくりどうぞ」
グーテさんが部屋を出て行き、残る三人。
にしても……部屋が広い!
兎に角広い!
余裕で五人以上は住めるやん……
ベッドは三つ用意されている。
軽くみて回ると、トイレにシャワーまで完備されている。
ちょっと高級なホテルに宿泊した気分だ。
俺達はソファーに腰を下ろす。
「……で? クレアとなんの話をしていたんだ?」
「私も気になる!」
「そ、それは別にいいではないかのう?」
少し同様している気がする。
「話すんだ」
「話してゼノアお姉ちゃん!」
「む、むむむっ……だが、言っていいのだろうか? ダメな気がするのじゃ」
一人ブツブツ呟くゼノアに、俺とフィアは「話せ」と言って近寄る。
「わ、分かったのじゃ! 話す! 話すから待つのじゃ!」
俺とフィアは顔を見合わせ頷く。
「よく言った。さあ、話すがいい!」
「話すの! 早く話さないとゼノアお姉ちゃんの鱗を剥がしていくの!」
「それは止すのじゃ!」
鱗を剥がすと言われ焦った声を上げるゼノア。
「じゃあ話すの!」
「は、はいなのじゃ……」
ゼノアは言う。
それは──クレアが俺に好意があること。それだけだった。
「……は? クレアが? そんな訳無いだろう。違うと言ってたじゃないか。勘違いはゼノアなんじゃないか?」
「……ご主人様は鈍感じゃのう……」
ゼノアがボソッ呟いたが俺にはよく聞こえなかった。
「詳しく話すの!」
フィアは聞こえていたのだろう。
ゼノアに詰め寄る。
「うん? 俺もよく分からないから聞かせてくれ」
「「ご主人様(お兄ちゃん)はダメなのじゃ(の)!」」
「えっ?」
物凄い剣幕でそう言う二人に、俺は「はい」としか言えなかった。そして、一人ベッドの上で体育座りをするのだった。
それから少しして話し終えたのか、フィアとゼノアがこちらを向いた。
「お兄ちゃん! あの人の事は許すの!」
「だ、そうじゃ」
「いや、だからなんの話?」
そこに丁度ノック音が響く。
「はい」
「グーテです。お食事の用意が出来ました。陛下とクレア様がご一緒にお食事をしたいとの事です」
「わかった。直ぐにいく」
俺達は部屋を出てグーテさんの後に着いて行く。
「おお、食事が出来てる。アキト殿も席に着いてくれ」
「食事まで用意してくれて済まない」
「ありがとうなのじゃ」
「ありがとうなの!」
感謝を伝え席に着いた。
席には他の人もいた。
「そちらは?」
二十代前半歳の男が一人と二十代の女性が一人、三十くらいだろう女性が一人だった。
フィリップさんが答える。
「こっちは妻のレイナだ」
白い長髪の美しい女性が立ち上がった。
「レイナ・フォン・レスティンと申します。夫と娘クレアを助けて頂き感謝します」
「次に第一王女のルナだ」
二十代前半の美しい金色の長髪をした美女だった。
「ルナ・フォン・レスティンです。同じく感謝します」
「最後に第一王子のアストだ」
「アスト・フォン・レスティンと申します。お父様とクレアを助けて頂きありがとうございます」
俺達も自己紹介をする。
「聞いていると思うが俺は冒険者のアキトだ。こっちはゼノアとフィアだ」
「ゼノアじゃ」
「フィアなの!」
自己紹介をした俺達は席に着いた。
「こんな話し方で済まない」
俺がそう言うとフィリップさん達は「気にするな」と言ってくれた。
「そうですよ。その方がアキトさんぽいです」
「それにそんな風に気軽に接してくれる人はいないものね」
「そうですよ」
「僕達もその方が嬉しいですよ」
クレア、レイナさん、ルナさん、アストさんがそう言った。
「ありがとう」
それから少しすると、料理が次々と席に運ばれてくる。俺、ゼノア、フィアは料理が美味しく無言になって食べていた。
食べ終わるとフィリップさんが口を開いた。
「随分美味しそうに食べていたな」
「あんな森で暮らしてたんだ。ここまで最高の料理は食べてなかったよ……」
「森?」
俺の事を知らない様だ。
「フィリップさん話してなかったのか?」
「うむ。悪いと思ってな」
「別に話して良かったのに……」
俺は馬車の中でフィリップさんとクレアに話した事を話した。
そして、案の定驚いていた。
翌日。
執事長のグーテさんに、「家を探してくる」と言って王城を後にした。
出来るだけ家が少ない方が嬉しい。
そして、不動産屋に向かった。
「それで、離れた所にある一軒家がいいのかな? 値段は?」
「ああ、出来ればそれなりの広い家がいい。値段は幾らでも大丈夫だ」
「んー、取り敢えず見に行くか?」
「直ぐに見れるならそうするよ」
店主の後に着いて行き、家を見に行く。
一件目の家に着いた。
王城からはさほど離れてない。
周りの家はそこそこデカい家ばっかだ。
この家もそれなりにでかい。
「ここは? 出来れば離れた場所がいいのだが」
「それは勘弁してくれ。数軒しかないんだ。それとここはある貴族が売り払った屋敷だ。値段は五千万ゴールドだ」
「次に行こう」
二件目は王城から中間距離の家。
周りに家が多いから無理だ。
「次」
それからも、ダメダメとなり最後の一軒家。
「ここで最後ですよ? これ以外はないですからね?」
王城から中間あたりの家。
屋敷より少し小さく周りには何もない。
いや、あるはあるのだが小さな家などが多い。
ここだけは周りに塀があり、大きな庭もある。
結構ボロボロだがそこは魔法で何とかなる。
「ここは?」
「この家はそこそこ裕福だった人の家です。お値段は五百万ゴールドです」
「安くないか?」
「ええ、それが……」
話を聞くと、ある裕福な一家が一夜にして惨殺されたとか。その犯人は捕まって処刑された。
それからこの家に住む人は一ヶ月しないで出て行くそうだ。白い何かを見たとか、少女を見たとかだ。
「訳あり物件か……」
「どうします?」
アンデッド系の魔物、というよりもゴーストは光魔法で何とかなるからここでいいだろう。
「ここにする」
「そうですか。お辞めに……え?」
「ここにするって言ったんだ」
「わ、分かりました。では店で契約を致します」
「勝手に決めたが二人も大丈夫か?」
「妾は大丈夫じゃ」
「大丈夫なの!」
二人も問題は無いようで、俺達は契約を済ませるのだった。
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