第40話:これからどうしようか・・・

 俺達は現在、森に森に降りていた。


「どうするか……挨拶してないしな」

「じゃなぁ~」

「でもまた会えるだろ」

「じゃな!」

「うん!」


 部屋にはなんにも置いて無かったので、戻る必要は無いようだ。

 フィアもそれでいいようなのでそうする事に。

 なら、と俺達は他の国に行くことにした。


 歩くのも癪なので、再びゼノアに乗って行くことに。


「高い高い!」


 フィアが喜んでいるので良いだろう。


『ご主人様よ』

「どうした?」

『前から何か来るのじゃ』

「前?」


 フィアと遊んでいたが、視線を前方に向けた。

 見えるのは小さな鳥の様な大群。


「鳥じゃないのか?」

『いや、鳥にしては気配が大きい』

「え? ちょっと確認する」


 マップを開いて確認する。

 うん。鳥じゃ無かった。


「ワイバーンだな」

『なんじゃ、モドキか』


 ゼノアに取ってはワイバーンは竜では無いらしい。


『倒すかのう?』

「いや、適当に脅せば逃げるだろ」

『分かったのじゃ』


 無駄に戦う必要は無いのだ。

 戦わないで済むならそれで結構だ。

 体力と魔力の浪費は避けたい。


 いや、使っても支障はないが……


 害意がある訳では無いなら戦わなくてもいい。

 多分距離があるから気づいて無いだけだろう。


「グルゥァァァォァァア!」


 ゼノアが咆哮をするとワイバーンは気づいたのか、急いで方向を変え逃げていった。


『いったようじゃな』

「だな。疲れないか?」

『む? 問題ないのじゃ』

「そうか。無理はするなよ」

『ふふっ』

「どうした?」


 何が可笑しかったのか? 俺はゼノアに聞くと。


『なに。優しいご主人様が一番じゃと思っただけじゃ』

「何を今更。当たり前だろ」

『そうじゃな』


 そんな感じでゼノアを鱗越しだが、撫でてイチャイチャしていると、後ろに乗っていたフィアが抱きついてきた。


「……フィアどうした?」

「ゼノアお姉ちゃんずるいの!」

『何かしたかのう……?』

「さぁ?」


 俺とゼノアは困惑。


「私もお兄ちゃんにナデナデして貰いたい!」


 プクーっと可愛らしく頬を膨らませるフィアに、俺は笑った。


「そんな事か。それくらい何時でもいいぞ~。ほれ」


 そう言ってフィアの頭をナデナデしてあげる。

 次第にフィアの顔は幸せそうになっていく。


『本当にフィアには甘いのう~』

『当たり前だ。ゼノアもだろ? いやライバルだったか? ハハッ』


 念話でそう言うと、ゼノアは反論してきた。


『な、何を言っている! 妾はフィアをライバルだと認めてはおらんのじゃ!』

『はいはい。そういう事にしておきますね』

『む~!』


 そんな他愛もない会話をして、フィアが俺の前が良いと言うので前に座らせてあげた。


 フィアが下を見ていたので、落ちないように腕を回しておいてあげる。


 それから数時間して幾つかの街を過ぎ、次の国であるレスティン王国の首都、王都付近まであと半日という所で、降りて野営をすることに。


 ゼノアも元の姿に戻り、俺は夕食を作る。

 フィアも手伝ってくれており、ゼノアは火の当番である。


 暖かい料理ができ、三人で頂いた。

 夜の見張りはする事は無い。

 俺だってゼノアだって気配には敏感だ。

 フィアだって、そこいらの冒険者には負けてはいないので大丈夫だ。

 そして、火を消さないようにし俺達は寝るのだった。


 翌日。天気は快晴。

 だが夏と言うよりは、春のような心地よい天気と言った所だろうか。

 死の魔境では環境魔物がおり、一日で季節が変わるといった滅茶苦茶な場所だった。

 こちらの方に来てからは、春のような気温から変わった感じはしない。季節は一定なのだろうか?


 そんな疑問を残しながらも、俺達は再びゼノアに乗って移動することに。

 ゆっくりと景色が流れる。

 街の上空を通る。

 街が見える程度の高さで飛んでいる。


「わぁあ! 人が沢山いる!」

「そうだな」


 あれ?

 視力を強化して街を見ると、なにやら慌てている様だ。

 何かあったのだろうか?


『なあ、ご主人ん様よ。妙に下の街が慌ただしいようじゃが?』

「だよなあ」

「お兄ちゃん、それってゼノアお姉ちゃんのせいじゃないの?」


 フィアのその言葉で納得した。

 ドラゴンが街上を飛んでいたらそりゃあ驚くわな。


「ゼノア、迷惑にならない内にさっさと去るぞ」

『うむ』


 ゼノアはスピードを上げた。街が一瞬で通り過ぎる。

 このまま行けば数時間で王都に到着する様だ。

 やっぱり空の旅はいいな。


 そんな事を考えていると、ずっと下を見ていたフィアが俺の袖を引っ張った。


「どうした?」

「お兄ちゃん。下で馬車の列が止まってる。それに戦ってるみたい」

「戦ってる? ゼノア止まってくれ」


 ゼノアが止まり、俺は視力を強化して下を見る。

 見ると、騎士の様な人達が何かと戦っていた。

 戦っている相手を見ると、どうやら盗賊の様だった。

 騎士が十五名なのに対して、盗賊はその倍の数はいるだろう。

 これではジリ貧だ。騎士が尽きるのも時間の問題だろう。

 それに、真ん中の馬車だけが妙に豪華だ。


 多分どこかのお偉いさんだろう。

 ここは恩を売っておくべきだろう。


「ゼノア、下の襲われている奴らを助けるぞ」

「どうしてじゃ?」

「運が良かったら家をくれるかもしれない」


 これが本音だった。


「成る程。分かったのじゃ」


 ゼノアは急降下するのだった。

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