第39話:国王とお話!

「で?」


 土下座をしとようとして固まっていた国王に、俺はそう言った。

 貴族達は顔を青くさせて、逃げたいようだった。


 国王は歯をカチカチと音を鳴らす。

 先程の光景を思い出しているのだろうか?

 国王はやっと口を開いた。


「……す、すまなかった。この度は私がそなたを呼んだのにも関わらず、こ、このようなこのになってしまった……私の落ち度だ。この首でいいのなら差し出そう」


 土下座をする国王は、思ったより国王は良いやつなのではないか?

 騎士が勝手に暴走したのだろうか?


「来る時も先程のように高圧な態度をされた」

「それは……その、済まなかった」

「それで俺からの提案だ」

「……てい、あん?」


 国王は首を傾げる。


「多分だが、もう俺には関わりたく無いだろう?」


 その言葉に貴族達は頷いていた。

 国王は違うようだ。


「違うのか?」

「正直に言えば、関わりたくはない」


 そりゃそうだ。俺に剣を抜いた騎士が皆殺しにされたのだから。


「だが、国を救ってくれた礼はしたいのだ」


 国王は良い奴のようだ。


「……そうか。それで? 礼とはなんだ?」

「なんでも叶える」


 なんでも、か……

 俺は家が欲しい。だが、この国の騎士があんな奴らではこの国には要はない。


「家が欲しかったが、騎士がこれでは要らない。だから必要なのは何も無い。他の国を目指すことにする」

「……」


 国王は答えない。


「ゼノア、フィア。こんな国には要はない。他の国で家を探すぞ」

「うむ」

「うん!」


 謁見の間を出ようと出ていこうとして、貴族が俺たちを指差し口を開いた。


「お前らは指名手配だ! 逃げられると思うな!」


 俺はその貴族に向かって言う。


「別に構わないが?」

「なっ!? わ、分かって言っているのか!」

「勿論。他国なら俺達を高く評価してくれるはずだ。次は戦争で会うかもな。王都を潰せと言われれば直ぐにしに来てやる」


 俺は歩き出す。


「そうそう、国王にアドバイスだ。少しは貴族や騎士達を見直した方がいい。じゃあな」


 そう言って俺達は謁見の間を後にした。


「騎士達に言え! そ、その者達を今すぐ殺せ!」


 出て行く際に、後ろからそんな声が聞こえたのだった。

 貴族に言われ城内の騎士達が、城を出て行こうとする俺達に剣を抜いて立ちはだかる。


「はぁ~、少しは学習して欲しいんだが……?」

「じゃな。どうするのじゃ?」

「ん~、城の真上を突き破って行くか? 楽しいかも?」

「それは名案じゃな!」


 俺とゼノアは嗤う。

 フィアは分かっていないようなので、俺は言う。


「なにするの?」

「ここから空を飛んで行こうかと思ってな」


 その言葉にフィアは目を輝かせる。


「楽しそう!」

「そうか。なら俺にしっかりとしがみついていろよ」

「うん!」


 俺はフィアをおんぶする。


「な、何をする気だ! もう逃げ場はない! 大人しく捕まって裁きを受けろ!」


 前方にいた騎士がそう言うも、それは承認できない。


「やだね。それじゃあ帰るわ」


 俺は手を真上に掲げて唱えた。


「──ファイヤートルネード!」


 俺の手の平から小さな炎の渦が現れ、それが次第に大きくなり激しさを増していく。


「な、なんだ。これは? ファイヤートルネード?」


 騎士達が驚いているが関係ない。

 それは天井を崩し、天まで伸びていった。


「いくぞ!」

「うむ!」


 ゼノアが漆黒の球体に包まれ、弾けた。

 現れたのは巨大な黒い竜。


「グルゥァァァァァァアッ!」


 響く咆哮。

 それは王都全体にまで届いた。


「ど、ドラゴン……」

「ヒィッ!」

「た、助けて……」


 騎士達は現れたドラゴンに恐怖し、一歩、また一歩と下がる。

 そんな騎士に、俺は気にすることなくゼノアに飛び乗った。


「じゃあな。国王によろしく言っといてくれ」


 そうして俺達は、天井に空いた穴から飛び去って行くのだった。



 ◇ ◇ ◇



「どうするのですか!」

「今すぐに指名手配を!」

「このままやられっぱなしでいいのですか!」

「そうです! 今すぐ軍を挙げ倒したほうが!」


 国王は貴族達から対処に関して言われていた。


(国を救ってくれたのだ……彼等がいなければ今頃は……)


 国王は分かっていた。

 あの魔族を倒した秋人の強さを。

 貴族達は家臣か配下にするべきだと言っていた。

 国王も出来れば家臣か配下に加えたかった。


 そもそもこの様なことになったのは、全て騎士達が原因だった。


「ならぬ」


 国王の言葉に反論しようとした直後、轟音が響いた。

 謁見の間にはいくつもの窓があり、そこから巨大な火柱が上がるのが見えた。


「な、なんて事を……陛下! はやり指名手配にするべきでは?!」


 口々に指名手配にするべきだと声があがる。

 だが、それは出来ない。


 火柱が上がった所が崩れる音がした。

 その振動は城に響く。


「あ、暴れている……」


 国王は大丈夫だと信じていた。

 秋人が謁見の間で騎士達に放った言葉。

 剣を抜かない限り殺しはしないのだ。

 なら、貴族が先程捕らえろと命令を聞いた者達が、殺られているのだろう。


 次の瞬間、城を揺らす程の咆哮が鳴り響く。

 その咆哮の大きさに、全員が耳を塞ぐ。


「な、なんだ!?」


 再び窓の外を全員が見ると、そこから天へと飛び立つ巨大な黒い影。

 それが空で羽を広げた。


「ど、ドラゴン……」

「な、何故この様な所に……」


 空中で咆哮を再度上げた黒いドラゴンは、雲の中へと消えて行くのだった。


 全員が肩をガクガクと小刻みに震わせていた。

 それは恐怖からであった。

 そこに国王が口を開いた。


「……指名手配は無しだ。あの者を敵に回してはならぬ。いいか?」

「「「き、御意!」」」


 こうして一連の騒動は収まった。

 そしてこの事件をきっかけに、貴族の見直しや騎士の見直しがされるのであった。

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