第33話:魔族との戦闘②

「してご主人よ。この後はどうするのじゃ?」


 ゼノアの質問に俺は考えるも。


「いや、見つけながら殺っちまうか」

「じゃな」


 俺はマップを展開し魔族を探すが、


「ちっ。虫のようにいやがるな」

「魔族を雑魚と言えるのは妾達くらいなのじゃがな」

「うっせ。んな事よりどうするか」


 マップを見ても王都内で蹂躙している魔族が見える。

 冒険者が次々とやられて行き数が減って行く一方だ。

 一番近い場所から片っ端に二人で魔族を空に還して行くと、


「止まれ貴様等!」


 上空から声がかかり見上げると、そこには立派な角を生やしいかにも強そうな奴が現れた。魔族の男は怒りを顕に魔力のオーラを出しながら口を開く。


「我ら同胞をよくもやってくれたな」


 そんな魔族に俺は言葉を返す。


「やって来たのはそっちだけどな」


 まだ数は多い。俺とゼノアがいなかった恐らく王都は陥落していただろう。魔族の人数は100人弱。この人数で王都を落とせるのだ。それだけ魔族が強いって事なのだが。


「今から我が殺してくれよう」


 魔族が一瞬にして俺に近寄り力を込めた拳が俺に迫る。魔族は俺が反応出来てないと思い微笑む。だが俺に当たると思われた拳はガンッと言って阻まれた。


「なに!?」

「反応出来てないと思ったのか? ほれ」


 俺は光属性を込めたデコピンを放つ。


「ぐあぁぁぁあっ!」


 吹き飛び家に当たり激しい音を上げて崩れ、魔族は瓦礫に埋もれる。


「アレで吹き飛ぶのはちょっとな」


 ゼノアは呆れている。


(最強のドラゴンさん。あなたがそれを言っちゃダメでしょ。レベルが違うんだよ)


 ブーメランとも知らずに内心でそう思っていた。

 瓦礫がどかされ再び現れる。ボロボロな格好で。


「や、やるではないか人間。あの一瞬で最大の攻撃を放つとは」


 何やら勘違いをしているようだがまあいい。


「我だけでは倒せないようだな。ならば同胞を呼ぶのみ」

「ん? なんだ、ビビってお仲間を連れて来るのか? なら早くしてくれ」

「くっ! まあ良い。確実に仕留めるにはそうしないとだからな」


 魔族の男は冷静になり声を大きく叫ぶ。


「我が同胞達よ。強敵だ。皆でかかるぞ!」


 その声を発した瞬間。魔法陣が現れ魔族が出てくる。

 マップを確認するとこの王都全域の魔族が集まっていた。


 俺とゼノアが潰したと言っても半分にも満たない。まだ60人以上の魔族がいる。


「これで貴様も終わりだ。魔族がどれだけ強大か思い知らせてやる」


 俺の背後には駆けつけてくる冒険者と、それを遠目から見るギルドマスター達がいた。

 駆けつけてきた冒険者が口を開く。


「君ランクは?」

「Fだ」


 それを聞いて駆けつけた冒険者達が急いで走ってくる。


「ここは下がるんだ! 残った子を助けたのは手柄だ! だがこの魔族は強い! しかもこの人数だ! 早く逃げるんだ」


 俺とゼノアは「何言ってんのコイツ」みたいな視線を向ける。

 他の冒険者も同じ様なこと言って戦うと言い出したのでそのままにさせておく。


「主よ。いいのか?」

「さあな。死ぬ前には助けるよ」


 集まった冒険者を見て魔族は口を開く。


「雑魚が集まっても何も変わらん。消えろ」


 魔族の数名が冒険者に向かって魔法を放つ。

 攻撃が着弾し吹き飛ぶ冒険者達。


「ぐつ、強い!」

「まだ負ける訳には……っ!」


 すでに俺とゼノアは「何やってんのコイツら」と言う視線をしていた。

 駆けつけてちょっとした攻撃で吹き飛んで皆傷を負っている。

 駆けつけるギルマス。


「だ、大丈夫か! 矢張り君が強くてもこの人数は無理だ! 逃げよう!」


 俺はギルマスに対して口を開く。


「黙れ。お前はそこで立って見てろ」

「何を言って──」


 そこにゼノアからの追撃。


「主が言っておるのじゃ。黙らんか」

「ッ!」


 黙ったギルマスに冒険者達も俺とゼノアを見る。そこに先程声をかけた冒険者が何とか無事らしく口を開く。


「だ、駄目だ。早く、早くその子を連れて逃げるんだ!」


 俺はうんざりしながら口を開く。


「何も出来ずにやられた奴がほざくな。黙って見てるか家に帰れ」

「何を言って──」


 魔族からの攻撃が俺に飛来する。


「あ?」


 俺の魔力による衝撃波。それによって全ての攻撃が消される。それと同時にこの場の全ての者が息を吸うことすら出来ない程の一瞬だけのプレッシャー。

 それは、この場の全ての者の心臓を鷲掴みされたような圧倒的な支配力。


 全ての者が冷や汗を流し震え膝を突く。それは恐怖によるものでもあった。


「人が話しているのに攻撃するとはな……」


 その言葉に魔族の男は狼狽えながらも口を開く。それはこちらが有利で勝てると思っての言葉だった。


「こ、この人数では貴様も勝てまい!」


 その言葉を聞いて俺は魔力を高め先程のプレッシャーを放ちながらゼノアへと言う。


「奴等はもう勝った気でいやがる」

「そのようじゃな。では、」


 俺とゼノアの声が重なる。


「「教育をしてやう(をしてやるのじゃ)」」


 二人から放たれる圧倒的なまでの魔力とプレッシャー。

 魔族はヤバイと思ったのか逃げようと上空へと逃げる。


「元に戻っていいかの? 主よ」


 ゼノアの問いに俺は頷く。


「いいぞ」


 そう言った瞬間。ゼノアは黒く夜の月明かりすら反射しそうな漆黒で艶やかな球体へとなる。

 周りは何が起きるのか分からない様子だ。

 そして、球体は空に浮いて高さ50メートルのところでピキッビキッと漆黒の繭が割れて現れたのは──


「「「ど、ドラゴン!?」」」


 漆黒の巨大なドラゴン。


「グルゥァァァァアッ!」


 咆哮一発翼を一打ち。咆哮の威圧により動きを止める魔族達。一打ちされた翼によって強風が吹き荒れ王都の外まで出される魔族。


 そんな#ドラゴン__嫁__#の頭に飛び乗る黒衣の姿の俺。ゼノアに言う。


「奴らを逃がすな」

『わかったのじゃ』


 魔族の前に壁が現れ逃げ道の進路を塞がれる。


「逃げられるとは思うなよ? お前等に待つのは”死”のみだ。そして地獄の底で俺に詫び続ける事だな。消えろ、虫共が」


 俺は魔法名を言う。


「#黒き太陽__ブラック サン__#」


 魔族達へと向けた俺の手から圧縮された黒い炎の小さな塊が魔族へと高速で飛来する。

 避けれることも無く魔族達の中心にいったことろで、俺は魔族に向けていた手の平を握ると、


 ドゴォォォォォォォォンッという大きな音を立てて夜の空に黒い太陽が咲いたのであった。







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