第34話:魔族との戦闘③
──その日、王都の人々は目にした。
ドラゴンの頭に乗った黒衣の人物が魔族達を一瞬にして消滅させる所を。
俺とゼノアは再び漆黒の繭に包まれる。
今度は球体が霧散し人の姿になったゼノアが俺の横にいる。
俺とゼノアはゆっくりと地上へと降り立ち、下にいた面々が何が何だかといった表情のまま固まっていた。
「帰って寝るか」
「じゃな」
俺とゼノアはギルマス達をスルーして宿に戻ろうとする。
そこに再起したギルマスが慌てて声を掛ける。
「ま、待ってくれ! そなたFランクなのではないのか!?」
歩きながら振り向かずに答える。
「Fに決まってるだろ。証拠にほら」
そう言ってポケットから、冒険者カードを取り出して上に掲げて証拠を見せる。
ギルマスは暗くて良く見えないにしろ、確かにFランクのカードであった。
「二人とも名前を聞いていいか?」
再び問うギルマスに俺は立ち止まり最初のときと違う事を言う。
「無名の化け物と」
「最強のドラゴンじゃ」
ギルマスはただただ無言になる。
そこにネインが俺とゼノアの元へと駆け寄りとんでもない事を口走る。
「私をあんた達の弟子にしてくれ! いや、お願いします!」
「「断る(のじゃ)」」
即答で断る二人に「もう少し考えてもいいのでは?」と聞くも帰ってくる答えは同じ。
「私を好きにしていいからお願いだ!」
おかしくなったのか、とんでもない事を口走るネインに、他の面々がまさかそこまでしてネインが弟子入りをしたいなんて思いもしなかった。
「とんでもない事を口走るな! てか俺はコイツがいれば十分だから」
そう言って俺はゼノアの頭を撫でる。ゼノア自身は「ゼノアがいれば十分」と言われ少し顔を赤くして照れている。
とても可愛らしいドラゴンである。
「そんな! お願いだ! 私はどうしても強くならなければいけないだ!」
「そこまでして弟子入りする理由が俺には分からない。はぁ……こん厄介な事になるなら終焉の森に篭ってれば良かった……」
「同感じゃ。あそこは殺伐としてるが慣れれば楽しいからのう」
「だな」
終焉の森と言われ固まるみんな。
ネインが口を開く。
「何処に住んで居たか聞いてもいいか?」
答えるか迷ったが、口に出してしまってはもう遅い。
嘘を付いても良いが正直に答える。
「”死を呼ぶ終焉の森”だ。あそこは適応すれば住みやすい」
「妾はお主に眠りを邪魔にされたのじゃが?」
「でも楽しいだろ?」
「無論じゃ!」
二人して微笑む。そんな俺とゼノアとは対照的にネインやギルマス達はというと全員が絶句していた。
「ま、まさか……だがあそこは勇者や英雄でも入ったら出れないと」
「あのダンジョンは魔王ですらも近ずかないと言われるほどだ……」
ギルマスは適応したのならレベルはと思い尋ねる。
「……因みにあのダンジョンの魔物の平均レベルを聞いてもよいか?」
「まあいいが。ゴブリンでレベル100はあった。奥に行くに連れてレベルは600くらいかな? 最高峰の山に住むドラゴンは平均6500くらいだったな」
さらに絶句する面々。そりゃ勇者でも英雄でも帰って来れないわけである。
さらに聞くか迷ったギルマス。そこにネインがギルマスが聞こうと思った事を尋ねる。
「それなら適応したと言うあなた達のレベルはいったい……」
俺は迷った。なんせレベルが『???』なのだ。ゼノアに至ってはレベルが15000だ。
これを正直に言うか迷ったが、ゼノアが答えてしまった。
「妾はあの森の支配者なのじゃ。レベルは15000なのじゃ!」
「何正直に答えてんじゃボケェェェエ! 適当に誤魔化せよ!」
「ご主人よ、耳が痛いのじゃ。別にいいじゃないか。誰も勝てないのじゃから」
「それもそうだな」
納得してしまう。
自分達を超えられる者がいたのなら一度見てみたいものである。
「俺はレベル三万になって進化したからレベルは『???』になったから知らん。そんじゃおやすみ~」
更に絶句するみんなを無視して俺は宿に戻るのであった。宿に戻ると待っていたフィアが「お兄ちゃん魔族とやらは大丈夫だったの?」と聞かれて笑顔でこう答えた。「何言ってる。お兄ちゃんは最強だから誰にも負けるもんか!」と。
だがもう一人。ここにいる。そうメリルである。
心配そうに見つめられ口を開こうとする前にこちらから言葉をかける。
「大丈夫だったか?」
「う、うん! 大丈夫だよ! 聞きたいんだけど空であった爆発はもしかして……それにドラゴンも見えて……」
あの光景を遠くでも見える筈である。
正直に答える。
「あの攻撃は俺でドラゴンはゼノアだ」
「うむ。妾はドラゴンで竜王なのじゃ!」
無い胸を張るゼノアさん。少し虚しく感じるのは気の所為だろうか?
結局メリルに話す事になり、戦闘に出て行く前に言った話の続きを話す事になるのであった。
勿論次の日は爆睡であった。
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