第50話:新しい家でスローライフを・・・
幽霊屋敷から一転。今では新築同様になった。それを見た不動産屋が何があったのかを尋ねて来た。
そんな不動産屋に俺は一言、「魔法って便利ですよね」と言ったら察したようだった。
幽霊に付いても聞かれたが、そっちに関しては「出ますよ。でもいい人です」と伝えた。
結局不動産屋は、俺に管理している家を同じように綺麗にして欲しいそうだったので、それなりにお金を頂き新築同様にしてやった。
おまけに光魔法で浄化もしてやったら、不動産屋が喜んでた。
それから一ヶ月近く経った現在。
俺は家でのんびりしていた。
幸い料理は出来たので問題はない。
そもそも魔境で暮らしていたときも自炊してたしな。
幽霊のアルハは、この家の管理を任せた。
家よりも庭の方が広いので、その手入れとかだ。
今のところはメイドや執事を雇う予定はない。
俺達だけでのんびり暮らせればそれでいいのだ。
クレアは時々護衛を連れて家にやって来る。
その護衛には騎士団長のグリファスさんがいたりする。
俺も暇さえあれば騎士達に混ざって、アストと共に訓練に参加している。
「ご主人様よ。ちょっと良いかのう?」
「……どうしたゼノア」
「妾の膝枕とやらの感想はどうじゃ?」
俺はゼノアに膝枕をされていた。
そう。されたのだ。俺が膝枕の良さを熱弁したせいなのだろうか?
片目を開きゼノアを見た。
「予想以上に素晴らしいな」
「ふふっ、それは良かったのじゃ」
ゼノアは俺の顔を覗き込むように見て、優しく微笑んだ。
やばい。ゼノアから母性を感じる……
何故だろうか。
フィアはすやすやと気持ちよさそうに寝ている。
「ゼノア」
「どうしたのじゃ?」
「これからこんなゆっくりした日が続くといいな」
「そうじゃな」
俺は起き上がった。
ゼノアがまだ膝枕をしたそうだったが申し訳ない。
俺は「ごめん」と言ってゼノアの頭を撫でた。
「むぅ……わかったのじゃ」
「ありがとな」
「して、何をするのじゃ?」
「そろそろお昼だろ?」
「うむ」
「なら飯を食わないとな」
「食べるのじゃ!」
「よし。フィアが起き前に作るか!」
こうしてゼノアと一緒に昼飯を作るのだった。
三人でお昼を食べた後は外でお買い物だ。
これが最近の日常となりつつあった。
買い物が終わった頃には日が暮れ始め、空は茜色に染まっていた。
家に着くと門の前に馬車と騎士がいた。
いつもの派手ではない馬車なので、恐らくクレアだろう。
「こんな時間にどうしたんだ?」
「さてのう。夕飯でも食べに来たのじゃろうか?」
「お兄ちゃん、クレアお姉ちゃんなの?」
「多分?」
にしては護衛がいつもより多い気がする。
俺達が近寄って行くと一人の騎士が駆け近寄ってきた。
「アキト!」
「この声は、グリファス?」
「ああ! 少しいいだろうか?」
「大丈夫だよ」
「助かる」
馬車に戻ったグリファスが、中にいるだろう人に声をかけた。すると扉が開き、クレアにフィリップさんが降りてきた。
「このような時間にすまんな」
「申し訳ないです」
二人で謝罪をするがそんな事は気にしてない。
「クレアお姉ちゃんだなの!」
フィアは走ってクレアに抱きついた。
「フィアちゃん」
フィアはむぎゅーっとクレアに抱きつく。
「フィアちゃんはクレアが好きだなぁ~」
フィリップさんがそう言うと、フィアはフィリップさんに「大好きなの!」と言って満面の笑みを浮かべた。
その笑顔にフィリップさんやクレア、グリファス達騎士までもが頬を緩めて和んだ。
「……ここだと何だし中に入るか?」
「すまぬな」
「ありがとうございます」
「グリファス達も入ったらどうだ? 少し狭いかもしれないが」
「すまないな」
家の中に入った俺達はリビングで、対面のソファーに座ったフィリップさんとクレアにお茶を出す。
勿論騎士達にも出して上げる。
この騎士たちは一緒に訓練している人達で顔見知りでもある。
そんな話はさておき、俺はフィリップさんに家に来た理由を尋ねる。
「フィリップさん。家に来るなんて何かあったのか?」
「うむ。アキト殿に頼みたい事があってな」
「頼みたいこと?」
聞き返した俺にフィリップさんは頷いた。
そして、真剣な顔でこうお願いされた。
「アキト殿には学園でクレアの護衛に付いて欲しいのだ」
「……は? 今なんて」
「だからアキト殿にクレアと一緒に学園に行って欲しい」
そうフィリップさんは言った。
「え? は? えぇぇぇぇぇっ!?」
驚愕し変な声が出てしまった俺。
「突然すまない。これから説明をする。実は──」
それからフィリップさんは説明を始めた。
説明を聞くと、クレアは現在お見合いや婚約の申し出の手紙が多数きているらしい。
それを全て断っていたのだが、ある一人の貴族が学園でクレアに婚約しろと詰め寄って来たらしい。
「クレアには好きな人と結婚して欲しいのだ」
アストは次期国王としてあり、常に結婚している。
第一王女であるルナさんも公爵家の人と結婚しているようだ。
政略結婚に近い形で結婚した二人だが、どうやら両思いだったらしい。なんと言う幸運なのだろうか。
フィアには難しいはなしだったようで、この辺りでまた寝てしまった。
「そんなこともあり、アキト殿にならクレアを任せる事も出来る。なんなら婚約してくれたっていいのだ」
「ちょ、ちょっとお父様!?」
クレアは顔を真っ赤に紅潮させた。
「俺にはゼノアがいるんだ」
「別に二人だっていいだろう? 正妻ではなくてもいんだ」
やばい。断るにしても断りずらい……クレアは良い子なんだよなぁ~可愛い所もあるし。
クレアは潤んだ瞳を俺に向けた。
これ、断ったら泣きそうな気がしてきた……
ゼノアを見た。
「妾は構わないのじゃ。強いオスに群がるのは当たり前じゃ」
よくわからない説得感がある。
「……ダメ、ですか?」
うぐっ……
「ま、待ってくれ。フィリップさん」
「どうした?」
「俺は一般人でFランク冒険者だ。そんな奴が相手でもいいのか?」
この身分差を利用して今回の話を無かったことに──しようとした。
「関係ないな。どうした? 嫌なのか? それとも私の娘が可愛くないと言いたいのか?」
「そんなわけないだろ! 滅茶苦茶美少女じゃねーか!! しかも家事も出来るとか完璧過ぎだろ! 正直に言うと嫁に欲しいくらいだわ!」
「ちょ、その、あ、アキトさん……流石にそこまで言われると、その、恥ずかしい、です……」
今まで以上に顔を真っ赤に紅潮させたクレア。
「ハッハッハ!」
愉快そうに笑うフィリップさん。
「アキト殿」
そして、真剣な目でこちらを見て口を開いた。
「クレアを貰ってはくれないだろうか? クレア、自分の気持ちを正直に言いなさい」
「……はい」
俺を見るクレア。未だに頬は朱色に染まっていた。
「アキトさん。その、す、好きです」
言った瞬間、クレアの顔は今まで以上に真っ赤に染まっていた。
「ありがとう。俺も嬉しいよ。よろしくな」
「~ッ! はい!」
嬉しさからかクレアの頬に涙が流れ、どの様な花にも負けない程の満面の笑みを浮かべるのだった。
「ゴホンッ! 両者は私が認めた婚約者となったわけだ。それでアキト殿、学園に行く件は受けてくれるのかね?」
「ここまでされたんだ。行くしかないだろう……」
「ハハハッ、なんの事やら。クレアをよろしく頼む」
「ああ、任された」
こうして俺の短な安らぎは、クレアという婚約者を守るために学園に行く事になるのだった。
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