第20話:新たな仲間フィア

 姉に連れて来られて場所は父と母が死んだ山。



 事故から1年の月日が経った。



 猛スピードで突っ込んで来たドライバーは、自動車運転過失致死罪で6年の懲役となっている。



 そして今日は親の命日。



 俺は父と母を自分のせいで死んでしまったと思っていた。俺が「綺麗だよ」なんて言わなければ父と母は今も一緒にいたはずだ。



 「………………」



 俺は無言のままその場を見つめる。そこに姉が俺を見て言う。



 「いい?母さんと父さんは秋が殺したと思っている?」



 姉の”殺した”と言う単語に俺は身体をビクっと震わせる。姉は続ける。



 「でもね。母さんと父さんはそうは思っていないと思うよ?」

 「…え?でも俺のせいで母さんと父さんは…」

 「違うわ、あれは事故。誰のせいでもないし秋のせいでもないのよ」

 「だけど───」



 俺が言おうとすると姉が。



 「もう!ごちゃごちゃ言わないの!ほらこっち!」



 俺は姉に手を引かれて何処かへ連れて行かれる。連れて行かれて数分するとある場所へと着いた。


 着いた場所は展望台。そこから山の風景を見渡す事が出来る。そして現在の季節は秋。展望台から観る景色は紅、オレンジ、黄、茶色といった様々な色で色鮮やかに紅葉していた。


 それを見た姉は呟く。



 「わぁ…綺麗だねぇ~~。父さんと母さんもこの景色を観たのかな?だったら嬉しいな♪」



 そんな姉を見て小さく呟く。



 「なんでそんなに風にいられるんだよ…」


 

 俺の呟きは姉に聞こえてコチラを見て言う。



 「だって言ったんでしょ?”好きな様に元気で自由に生きてくれ”って。違った?」



 その言葉に俺は父と母が言った言葉を思い出した。


 「──これからは…好きな、ように…元気で…生きて行くの…よ」


 (そうだ。元気でいなくては。父さんも言ったように元気で…)



 俺は顔を上げ姉の目を見て話す。



 「そうだね。元気を出さないと、な。ありがとうな姉ちゃん!」

 「そうよ。じゃないと母さんと父さんが悲しむわよ?」



 俺は再び紅葉した山の景色を観ながら天国に居るだろう父さんと母さんに誓う。



 元気で生きることを。


 自由に生きることを。


 女の子には優しくすることを。


 子供に優しくすることを。



 それらを誓った俺は事故以来初めての笑顔で姉に言う。



 「姉ちゃん!観光に行こっか!」

 「もう!危ないわよ!」



 そしてその日、俺と姉は観光をして帰るのだった。




 「とまあこんな感じだったよ。俺は姉には感謝しているんだよ」



 俺が転生者と地球と言う事を隠しながらフィアへと説明が終わる。


 フィアは真剣に俺の話しを聞いていた。

 

 そして。



 「フィアに聞くが親は最後に何か言っていなかったのか?」



 俺が問うとフィアは頷き小さい声ながらも、両親の最後を教えてくれた。



 「お父さんとお母さんは最後に…「笑顔を大切にして。生まれて来てくれてありがとう」って」



 そしてフィアはその時の光景を思い出したのか目に涙が溜まっていた。


 村長から聞くにフィアは、両親が亡くなってから一度も泣いていないと言う。


 俺はフィアに言う。



 「そうか。なら両親の思いに応えてあげないとな。言ったんだろ?笑顔で居ろって。違うのか?」



 そう言うとフィアは顔を横に振って「違う」と言う。



 「なら今は泣け。今までの事を吐き出すかの様に思いっきり。な?ほら」



 そう言って俺は両手を広げ、フィアを招く。



 「う、うぐっ…ぐすっ…うわぁぁぁぁぁぁん」



 そしてフィアは俺に抱き着いて今までの悲しみや思いを、思いっきり吐き出すかの様に泣くのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る