第21話:フィアは妹枠です。ゼノアは?

 現在フィアは思いっきり泣いたせいか、俺の背中でぐっすりと寝ている。



 「主よ、どこに向かっているのじゃ?」

 「んー。どこだろうな。気ままな旅ってのも悪くわないな」

 「そうかのう」

 「取り敢えずマップで確認した所、ここから二十km程にまた村があるらしい」

 「こんども同じ様な村人かのう?」



 ゼノアが言う村人はチート村人の事か。



 「あんな村人がそこら中に居たらたまったもんじゃない。今度の村はレベルが10程度と普通の村人だ」

 「なんじゃ、期待外れなのじゃ」

 「いやいや、あんな村人を期待するなよ……」



 それとあの村だが、この辺り周辺の村人達はあの村人達はおかしい程に強いと知っている。


 盗賊達はそれを知らなかったのだ。情報収集は大事だと言う事が、盗賊達自身が身に持って教えてくれたのだ。



 (ありがとう盗賊達よ…)



 それから俺とゼノアは村へと歩き続ける。途中で目を覚ましたフィアが俺の背から降りる。その顔は憑き物が取れたかの様にスッキリとしていた。


 フィアが元気になって何より。



 「ありがとう…えっと…」

 「好きに呼んでくれ」



 俺がそう言うとフィアは少し考えたのち言う。



 「お、お兄…ちゃん…」

 「お、お兄ちゃん、かぁ…悪くわない」



 俺には姉しかいなかったので、そう呼ばれるのは少しむず痒い。次にゼノアを見て────。



 「お兄ちゃんは…渡さない…」



 そう言ってフィアは両手で俺をガシッと抱き付いて「渡さないから!」と視線で訴える。

 ゼノアは何かを言おうとするが、それよりも早くフィアが言う。



 「将来はお兄ちゃんのお、お嫁さんになるの!」



 その言葉にゼノアは「なんじゃと!?」となり、ガックシと膝から崩れ落ちる。俺は妹が「将来はお兄ちゃんのお嫁さんになる!」と言っているように思って微笑ましく思う。そしてゼノアは。



 「ず、ずるいのじゃぁぁぁ!妾も主のその、お、お嫁さんになるのじゃぁぁぁぁ!」

 「……は?」



 ゼノアはフィアが言った言葉に焦ったのか声を出して叫ぶ。俺は一瞬硬直しもう一度聞き直す。



 「ゼ、ゼノア、今なんて言った?聞き間違えでなければさっき、俺の嫁になるとか言っていたが…気のせい、なのか?」

 「だ、だから妾も主のお、お嫁さんになりたいのじゃ!!」



 ゼノアは顔を真っ赤にして顔を横にブンっという効果音が出そうな程の速度で顔を逸らす。

 俺も顔を赤くなりついゼノアと同じで顔を逸らす。


 ゼノアは可愛い。誰がどこから見ても超が付く程の美少女だ。だが見た目は少女だが年齢はそう、ステータスで確認出来る。


 普通は表示しない様にしていた。最近俺がゼノアの年齢を確認した事がある。今回は細かく表示しよう。



 名前:竜王

 Lv.15000

 種族:竜種

 性別:女

 年齢:2745

 スキル:<火魔法(S)><風魔法(S)><竜魔法(S)><飛行(S)><完全耐性><竜王の威圧><環境変化><絶対領域>

 称号:天災級、最強の一柱、絶対者、最強種、空の王者、竜の王、最強の主

 備考:竜種の王で体長200メートルの黒竜。秋人と契約した竜(テイムでは無い)



 そう、俺はけしてロリコンではないのだ!そうだったとしてもこれは合法なのだよ!


 それとフィアも可愛いが俺からして見れば新しく妹が出来た感覚だ。恋愛対象では今は見ることが出来ない。今は、だ。



 「そ、そうか。二人とも嬉しいよ。フィア、今はそう言った目では見ることはできない」

 「ならお兄ちゃんに大好きになってもらう様に頑張る!」

 「期待してるよ」



 そう言った俺はフィアの頭を撫でる。フィアは気持ちよさそうに目を細める。次にゼノアだが。



 「ゼノア…」

 「な、なんじゃ?ま、まさか正妻にしてくれるのか!?」

 「まてまてまて!その前にゼノアは俺の事をどう思う?」



 ゼノアは顔を赤らめながらも、しっかりと俺の目を見て言う。



 「無論、す、好きなのじゃ!」

 「理由を聞いても?」

 「うむ。竜種は自身よりも強い者に対して感情を抱く事があるのじゃ。その感情は様々じゃが、妾の場合は主に対しての恋愛感情だったみたいなのじゃ。主に負けた時はそんな感情は無かったのじゃが気づけばこの感情があったのじゃ。って妾から言わせるではないわ!」

 「自分で言ったんじゃないか!?」



 ゼノアは照れ隠しに俺に向かって殴り掛かって来るが、俺はそれを回避する。照れ隠しなのか連続で全力の攻撃をしてくる。一発一発が必殺の一撃であるそれを躱す。躱して躱して躱す。


 攻撃が当たらない俺に、ゼノアはまだ赤い顔をしながら言う。



 「何故当たってくれないのじゃ!」

 「当たったら俺はタダじゃ済まないぞ!?お前の全力の攻撃を1回でも喰らったら俺の身体でも辛いからな!?」



 それから10分間殴り続けるが当たらない。そして当たらない事が分かると攻撃を止める。



 「はぁ…はぁ…まあよいのじゃ。それで?答えを聞いても?」



 俺はゼノアの目を見て真剣に答える。俺が出す返事は──。



 「俺は、ゼノアがそう思っていた事に対してとても嬉しいよ」

 「なら──」

 「ああ。よろしく、な?」



 俺は照れて頬を掻きながら視線をゼノアから逸らしてそう言う。ゼノアはその赤い顔を笑顔にして俺へと抱き付くのだった。




 それとフィアは”妹”枠(今はまだ)。ゼノアは──”嫁”枠になりました。

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