第31話:出発た思いきや
宿に戻って考える。
「王都を出ても何処に行くのじゃ?」
「私はどこでもいいよ!」
んー。どこでも良いと言われても困るのだ。だがどうしたものか。
部屋の外からドンドンドンと階段を上がる音がして扉が開かれるとメリルが現れる。
「秋人入るよ!」
「それは入る前に言えよな」
「そんな事はいいわよ!」
おいおい。宿の従業員がそんな事言ってはいけません。
だが、
「どうした?」
メリルは少しモジモジしながらも来た理由を喋る。
来た理由、それは、
「やったわ!私の勝ち!」
「来た理由ってトランプかよ……」
俺は項垂れるも、ゼノアとフィアは楽しそうなので何よりと俺は苦笑いをする。
「それで……もう出て行くの?」
メリルは寂しげな表情をして不安げにこちらを見上げる。
そうか。それを聞きに来たのか。短い間だったけど結構お世話になったからな。
「んー。目的のない旅でも仲間がいれば楽しいからな」
「……私もっ───」
「行くとはいいなよ?メリルが俺達と一緒に行ったら宿はどうする?リズベルさんは?」
「………」
メリルは何とも言えない表情となる。それでも何かを言おうと口を開くが、それよりも早くに俺が喋る。
「また来るから」
「っ………」
メリルは目に涙を貯め、
「ほんとに、ほんとにまた、また来てくれるの?」
「もちろんだ。王都に来た際は寄らせて貰うよ」
俺はそう言って微笑みメリルの頭を撫で目に溜まった涙を指ですくい取る様に拭き取る。そしてメリルは小さく「うん」と言って微笑む。
気づけばもう夜となっていた。
出発の準備明日で出発が明後日になりそうだ。
体の汗を湿らせたタオル拭いた俺達は、そろそろ寝ようと布団に入ろうとしたその時、外から爆発音が複数聞こえた。近くでも爆発したようだ。
急いでマップを確認してみると、
「魔族、か?」
ゼノアが説明をしてくれる。
「詳しくは話した事はなかったのじゃ」
それからゼノアから軽く魔族の説明を受ける。
魔族。それは、人間よりも身体能力は高く獣人よりも高いと言われている。魔族1人を倒すのに冒険者ランクAが3人以上と言われている。
ならば一般人ではまともに相手にする事は不可能だ。
「それ程に強いのか……」
そんなと事を呟いていると階段を上がってくるのが聞こえる。メリルだ。
「秋人さん、大丈夫ですか!?」
「ああ。大丈夫だ」
メリルは不安な表情になり、若干だご怖がって居るようだ。
「何が、何が起こったの……」
「魔族だ。魔族が王都で暴れてる」
「魔族!?なんで魔族が王都なんかに?!」
そう言えば街の人が何やら気になる事を言っていたのを思い出す。
たしか、魔族を滅ぼしかねないマジックアイテムがあるとか言っていた気が…。
俺は取り敢えず一般人を守るために外に出て行こうとする。
「って、何処に行くきなの!?」
メリルは俺が窓を開けて外に出て行こうとすると驚いたのか、聞いてくる。
行く理由は1つ。
「今にも襲われている人が居るはずだ。助けに行くのは当たり前だろ?」
「Fランク冒険者で魔族の相手が出来るわけないじゃん!死んじゃうよ?!」
Fランクだからそう思われてもしかないよな。
「俺の実力は確かだ。魔族だって十分に相手できる。それに…」
少し間を開けてから喋る。
「終焉の森に住んでた俺をあまり舐めるなよ?」
「終焉の、森?え、何言って……」
俺が窓から出て行こうとすると、向かいの建物の上に魔族が現れた。
「ひぃ、ま、魔族!」
そして、闇魔法を放ってくる。上級の魔法だ。
俺は窓からその魔法へと突っ込み、
「話してる所を邪魔するんじゃねぇ!親に教わらなかったのか?!」
光魔法を込めた拳でその魔法を殴る。
すると、魔法は消えた。
「…え?は?」
魔族の男は自らの魔法が消滅した事に対して困惑しているがお構い無し。
空中に魔法で足場を作りそれを踏み台に魔族の男へと接近し、
「早く空にお帰り!」
顔面を殴り飛ばした。勿論殴り飛ばした魔族の男は無事死亡。
メリルは呆然と立ち尽くす。そこに俺は飛んで部屋へと戻る。
「いや、ご主人よ。あれはほんとの意味で空に帰ってるのじゃ」
「凄いよ!」
「ありがとなフィア」
「え?魔族が、一撃……どういう、ことなの?」
メリルは魔族が一撃で死んだ事に困惑を隠せずにいる。
「え?魔族って光属性の魔法に弱いんじゃないのか?」
「そうだけど。いや、だからなんでFランクの秋人が魔族を一撃で倒せるの?!」
「おいおい。さっき言っただろ?俺は強いって。終焉の森の頂点に立っただけの実力はあるんだよ」
「だって終焉の森って……あそこは入ったら生きて帰ることは無いって……」
終焉の森。世界では死の森とも言われている。一度入った者は勇者だろうと英雄だろうと生きて帰って来ることは無いと言われている。
「ははは。まあ何度も死にかけたさ。死にものぐるいで生きた。ただそれだけなんだよ」
「……分かった。信じるよ。それで、行くの?」
「ああ」
「分かった。気をつけてね」
メリルは不安気な表情のまま見送る。そんな彼女の頭を俺は撫でてからゼノアと共に向かうことにする。
フィアはまだ魔族と戦えるほど強くは無いので宿でお留守番なのであった。
行きたそうにしていたが、
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