第37話:やっぱり来ました
宿に戻った俺とゼノア、フィアは夕食を食べ自室へと戻っていた。
「明日は何するかな~」
「ん~、ゴロゴロすのはどうじゃ?」
「それじゃ遊ぼうよ!」
二人はゆっくりしたいらしい。
「だけどギルドマスターにこの宿の名前言っちまったしな。多分ギルドか騎士がお仕掛けて来るんじゃないか?」
うーむと考える三人。
フィアの考える表情が可愛かったので撫でてあげる。
「んー、もっと撫でて!」
「あっ! ちょっとフィアだけズルいのじゃ! 妾も撫でるのじゃ!」
「はいはい」
俺は二人撫でてあげる。
二人は「ふぁ~」と言う可愛い声を出しながら気持ちよさそうに目を細める。
もうどうなったっていいや!
俺達は寝るのだった。
翌朝。俺はメリルによって起こされた。
「起きて!起きてアキトさん! 騎士様がアキトさんの事を呼んでいるの!」
「ん~、帰ってもらってくれ。俺はあと、半日寝、る……」
二度寝を始めようとする俺を叩き起すメリル。
「違うよ! 王様が呼んでいるんだって!」
「ん~、なら呼んできてくれ……」
「起きてよ!!」
メリルに耳元で大声を出され俺は目を覚ます。
「ん? どうしたそんなに焦った顔して」
「そりゃ焦るわよ! 王様ご呼んでるって騎士様が言ってるの!」
「朝から来るのかよ……せめて昼にしてくれよ……」
そんなやり取りをしているとゼノアとフィアが目を覚ます。
「ふぁ~……む? 朝からどうしたのじゃ?」
「……まだ、ねみゅい……」
二人とも目を擦りながらそう言う。
可愛いかったのはご愛嬌だ。
「それが騎士が来てるみたいなんだ。どうする? 行くか?」
「うみゅ。そうじゃのう……何か貰えればいいのじゃが……」
まだ寝ぼけているようだ。
「くれるだろ。あっちが呼んだんだから」
「じゃのう~」
「……行くの?」
「ああ。どうする? おんぶするから寝てるか?」
フィアは首を左右に振る。
「歩いていく……」
「そうか。ほら手」
そう言って手を差し伸べる。それを握ったフィアを見てゼノアが、
「私しもじゃ!」
そう言って反対の手を握った。
なんだこの状況は……
メリルが羨ましそうに見ていたが、それよりも案内をす。
「こっちだよー」
「わかった」
階段を降りて行くと、数名の騎士がテーブルに座って待っていた。
そして、俺をみるなり身なりが良さそうな騎士が口を開いた。
「どれだけ待たせればいいのだ! 陛下のご命令だぞ!」
何かと思えば……
「こっちは気持ち良く寝てた所を邪魔されたんだぞ?」
「何を言っている! 一々迎えに来てやったのだ! 感謝しろ!」
めちゃめちゃ偉そうに威張り、俺のテンションが下へ下へと低下していく。
なので俺は、
「そうか、なら帰ってくれ。そうそう。陛下とやらに自分の態度が悪く拒否されましたって伝えといてくれ。んじゃ俺は二度寝するから」
そう言って踵を返そうとすると、顔を赤くしていた。
一連の会話を聞いていた宿のみんなは顔を青くさせていた。
騎士に歯向かう等普通しないからだ。
「何を言って! これだから下民は! それにその様な態度は不敬罪に当たるぞ!」
「はいはい下民ですよ~。不敬罪? 何それ美味しいの? それじゃおやすみ~あっそうそう、俺明日王都出て他の国に行くから」
「貴様!」
騎士は剣を抜こうとして、
「あ゛? やんの?」
ヤクザ顔負けのドスの効いた声に騎士が抜こうとした手を止めた。
こいつらと話していても埒が明かないのでさっさと済ませるために向かうことにした。
「面倒臭いな……わかった。行くから待ってろ。これから飯を食うから。なに? 陛下って呼ぶ人に朝飯すら食わせないつもり?」
「いや、いやそんなことは……」
「なら馬車で待ってろ。いいな?」
「は、はい……」
大人しく馬車に戻った所で俺はテーブルに座った。
「い、いいの? 騎士様にあんな態度を取って……?」
「いいも何も、あんなのが騎士だったら国王がダメって事だろ。てけ腹減ったから朝食お願い」
「わ、わかったよ……待っててね。スグに用意するから」
それから、朝食を食べた俺達は宿を出て馬車へと乗り込む。
俺は馬車の中でボーッとしており、謁見の憂鬱と思っていた。
ん? ちょっと、待てよ?
王が会いたいって言うなら何か褒美を貰えるって事か?
ふと思ったことに、俺はゼノアとフィアに訪ねる。
「なぁ、いいか二人とも?」
「どうしたのじゃ?」
「なにお兄ちゃん?」
俺は先程思った事を伝える。
「この王都は悪くもないし住みやすいのは確かだ。ここに住んでもいんじゃないか? 王都の誰も来なそうな所に家が貰えればって思うんだよ。どう思う?」
「それはいのう~」
「うん! いいと思うよ!」
生活金なんて魔物を狩って売れば金になる。
なんならあの魔境のドラゴンを一体売れば当分はグータラ生活が出来るはずだ。
俺は脳内で最高の計画を練り上げ、自然と口角が釣り上がる。
「ご主人様よ。妙案でも?」
「お兄ちゃん顔怖いよ?」
「なぁに、とても最高なグータラな生活を思い浮かべただけだ」
それから少しして馬車の揺れが収まり、扉が開かれた。
「到着した。さっさと降りろ」
高圧な態度の騎士の言われた通り、俺達は馬車を降りた。
目の前にあるのは長い階段だ。
見上げると、王都のどこからでも見えた白亜の城がそびえ立っていた。
「近くで見ると大きいな」
「そうじゃな~」
「わぁ~大っきい!」
城の大きさに驚いていると、騎士から声がかかる。
「さっさと来い!」
やっぱりうぜぇ~
そう思うも、また面倒臭い事になるので口には出さない。
俺達は長い階段を上り王城に向かうのだった。
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