第38話:謁見のルールなんて知らないから
俺達は高圧な騎士さんに案内されて、謁見の間の扉前で待つことに。
扉の両サイドにいる騎士が、ゼノアとフィアを見て呟いていた。
「ガキが……陛下会えるんだ。感謝するんだな」
ボソッと呟いた言葉だったが、俺の耳には聞こえていた。
面倒臭いのでスルーした。
扉の向こうが声が聞こえた。
「冒険者アキトとその仲間の登場だ」
騎士によって扉が開かれ、盛大な拍手によって迎えられた。
そのまま国王の前まで進む。
貴族達はゼノアやフィアを見て頷いていた。
何か企んでいるのだろう。
だが企んでいても関係ない。
邪魔するなら脅せばいいだけだ。
国王の前まで来た俺とゼノア、フィアは──そのまま突っ立っていた。
俺は謁見のルールなんて知らないし、聞いてもいない。
周りの貴族達が、ヒソヒソと言っているのが聞こえる。
そこに、一人の騎士が俺達に声を荒らげる。
「貴様、陛下相手に不敬だぞ! 今すぐに膝を突け!」
そんな騎士の声に合わせて、周りのヒソヒソ言っていた貴族達も声を上げた。
「そうだ! 今すぐに膝を突くのだ!」
「不敬罪だぞ!」
「だから冒険者などに謁見は不要と言ったのだ!」
ゼノアが呆れた様な視線を俺に向けた。
分かっているとも。
俺は口を開いた。
「あ? 不敬罪? 何言ってんだ。俺はそこに座ってる奴に呼ばれて来たんだ。なんならそいつに聞け」
そう言って国王を指さす。
「き、貴様ぁぁあ!」陛下に対して無礼だぞ!」
剣を抜いて斬りかかってくる騎士さん。
「よせ!」
国王は制止の声をかけるが、騎士には聞こえておらず止まらない。
……ん? まて、こいつってさっき俺達を迎えに来たやつじゃね? ……まぁ、いっか。
俺は斬りかかって来た騎士の剣を、素手で掴む。
「なッ!? 掴んだ、だと?」
周りの騎士や貴族達も、その光景を見て驚く。
俺やゼノアにとっては当たり前なのだ。
だってレベルに差が有りすぎるから。
フィアが俺の後ろに隠れた。
俺の服を掴む手が震えている。
「おい」
深淵の底から響くような声に、騎士はビクッと震えた。
「フィアが怖がってるじゃねーか? あぁ? 謝罪の言葉のないの?」
「い、いや、それは……貴様が」
「俺が悪いって? そうか。なら死んで詫びてくれ」
そのまま剣を握り潰し、頭を鷲掴みする。
徐々に力を込めて行く。
「い、いだぃっ! は、放せ! 割れる、頭が割れる!」
騎士が必死に叫ぶので、俺は手を離す。
倒れ込む騎士は、荒い息をしながら俺を睨む。
「貴様、よくも! よくも!」
「安心しろ。しっかり殺してやる。──
「な、何を言ってる!」
現れたのは、拷問等に使われたと言う、女性の形をした、高さ二メートル程の大きさの、中に空洞がある物だった。
それがパカりと開いた。
その中を見た者達が顔を青くさせる。
「な、何をするのだ!」
騎士は尻餅を着き、そのまま後ずさる。
貴族や国王は何も言えない感じである。
「ゼノア、フィアの目を塞いでろ。出来れば耳も、」
「分かったのじゃ」
ゼノアは、フィアを抱きしめ目を塞ぎ、耳を手で塞いだ。
確認したら俺は口開いた。
「喰らえ」
俺の言葉が合図となり
「く、来るな! 来るなぁァァッ!」
黒い手が騎士を掴み、中へと引きずって行く。
「や、止めてくれ! 俺が悪かった! 俺が悪かった! 誰か! 誰か助けてくれぇぇぇ!」
騎士達が助けようと動くが間に合わなかった。
掴まれた騎士が中へと引きずられ入った瞬間、グシャリという生々しい音と、悲鳴なるものが聞こえるだけだった。
俺が魔法を解除すると、
死体はあの影みたいのが食べるんだと思う。
俺は国王を見ると、ビクッと肩を跳ねさせた。
「で? 何か言うことは?」
「こ、今回はす、済まなかった」
「はぁ? 俺は殺されかけたんだぞ? せめて椅子から降りて土下座くらいしたらどうなんだ? それでも王か?」
「わ、分かった!」
国王が椅子から立ち、床に膝を突こうとして、貴族達から声が上がる。
「そ、それほなんでもやり過ぎでは無いか!」
「そうだ!」
「あ、謝ったのだからいいだろう!」
俺はため息を吐いた。
「あのなぁ……俺はこいつに呼ばれたんだ。なのにこの仕打ちだぞ? なに、お前らも死にたいの?」
そう言うと貴族達は黙り込む。
だが、騎士達に限ってはそうはいかなかったようだ。
「へ、陛下! そのような事をする必要はありません!」
「そうです! 騎士が殺されたのです!死罪でいいのでは?!」
騎士達は俺を囲み剣を抜いた。
「やめるのだ!」
「いけません陛下!」
国王はどうやら止めたいようだ。
俺は騎士達に口を開いた。
「剣を向けたんだ。覚悟はあるんだろ?」
俺が殺気を放つと、騎士達の顔色が青くなっていく。
「今ならまだ猶予はあるが? そこの国王が必死に止めてるんだ。まだ見逃してやる」
「そ、そんな事を言って──」
「そうかそうか。どうやらあんたらは死にたいようだな──
門が出現した。
人々の手が門から出てこようと、もがいているように見える。
門は禍々しいオーラを放ち開いた。
中は暗くどこまでも暗い。
正気言って俺も怖いくらいだ。
イメージしたのがあの有名な彫刻、地獄の門だったが、ここまで禍々しくらなるとは……
暗闇から幾つもの手が伸び、騎士達へと向かって行く。
「く、来るな!」
「は、離せ!」
「だ、だれかぁぁ!」
阿鼻叫喚だった。
剣で切り落とすも、再び伸びてくる。
謁見の間は、そんな地獄ような場所と化していた。
次々と騎士達が門へと引きずり込まれていき、しばらくすると、剣を抜いた騎士達はいなくなり、門が閉じて消えた。
「ふぅ……ゴミは掃除するのに限るな」
「……ご主人様よ。アレは確かにゴミだが、それよりも、あの門と棺見たいのは怖いのじゃ……」
ゼノアはぶるっと震えるのだった。
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