第42話:国王と王女は驚く
クレアと名乗った少女は、惚れ惚れする程綺麗で優雅な、気品のあるお辞儀をした。
俺達も自己紹介をする。
「俺は秋人だ。柊 秋人。こっちは」
「ゼノアじゃ」
「フィアと言います!」
「そうか。アキト殿にゼノア殿、フィア殿だな」
「アキト様にゼノア様、フィア様ですね」
騎士達が一斉に、俺に頭を下げた。
「助けて頂きありがとうございます。この御恩は一生忘れません!」
そう言って再び「ありがとうございます」と言われた。
あの国とは違いこの国はいい人達のようだ。
国王のフィリップさんは中々に好感が持てる。
「ではこっちの中に入ってくれ」
「いや、少し待ってくれ」
ここまで良くさせられたなら、少しでも助けてあげないとな。
盗賊に殺され、未だ倒れている数名の騎士達に近寄る。
「何をされるので?」
疑問に思った騎士が俺に尋ねた。
「王都まで運ぶのだろ?」
「はい。みんなも家族がおりますので」
「なら綺麗な体の方がいい」
そう言って並べた騎士達に、俺は刺された傷口や切り傷を治す。そして、生活魔法のリフレッシュを掛けてやり、汚れ等を落としてやった。
「これで良し」
「珍しいなご主人様よ?」
「まあな。ここまで良くしてくれた騎士や国王さんはいなかったからな」
「言われてみればそうじゃな」
「やっぱりお兄ちゃんは優しいね」
騎士やフィリップさん、クレアが俺に礼を言ってきたが、「気にしないでくれ」と言って馬車に乗り込んだ。
ガタガタと揺れる馬車の中、対面にフィリップさんとクレア。俺の両サイドにはゼノアとフィアが座っていた。
「騎士達の戦いを見ていて、今日が命日かと思った。だから改めて礼を言わせてくれ。助けてくれた事と、亡くなった騎士に対してしてくれたことに感謝する」
「私もです。ありがとうございます」
二人は深く頭を下げた。
「気にしないでくれ。フィアが助けてほしいって言うから助けたんだ」
そう言ってフィアの頭を撫でてあげる。
「それでもだよ。本当にありがとう」
それから軽く話していると、俺が乗っていたドラゴンの話になった。
恐らく騎士達の声で窓から見たのだろう。
「アキト様、あの乗っていたドラゴンは?」
「クレアさん。俺達に“様”は付けなくていいよ。冒険者だし。な、二人とも?」
「うむ。ご主人様の言う通りじゃ」
「私もいいよ。私は村娘だから」
「分かりました。ではアキトさん達も私の事はクレアとお呼び下さい。それで、あのドラゴンは?」
俺はゼノアを見る。
『別に構わんのじゃ。私を倒せるのはアキトくらいだしのう』
『それもそうだな』
そう言う事で、俺はドラゴンの正体を話す事に。
「あのドラゴン、実はゼノアなんだ」
そう言ってゼノアの頭を撫でる。
それを聞いたフィリップさんとクレアはと言うと。
「「えぇぇぇぇえっ!?」」
目を見開いて驚いていた。
「いや、でも、どうやってですか?」
「妾は元々竜種じゃ。スキルで人の姿になっているだけなのじゃ」
「「竜種……」」
「ただの竜じゃないぞ?」
「え?」
「竜王だ」
俺の発言に、再び驚愕の声を上げた二人。
「ふぃ、フィアさんは?」
「フィアは普通の村娘だ。両親が亡くなっててな。村で一人なのを俺が誘ったんだ」
「そうなのですか……そのすみません」
クレアは聞いてはいけないことを聞いたと思い、スグに謝罪した。
「別に大丈夫だよ! 今はお兄ちゃんと一緒だも!」
「ふふっ、ありがとう」
クレアはフィアに微笑み頭を撫でた。
「それで、アキトは何故竜王なんかを?」
それを話すには、まず俺が転生者って事を説明しなければならない。
「その前に決して口外しないって誓えるか?」
「……誓わなかったら?」
「力の限り暴れる」
「誓う!」
フィリップさんは即答した。
「信じるからな? 実は──俺は転生者なんだ」
暫しの沈黙が流れる。
ガタガタと馬車の音が聞こえるのみ。
そして、二人は二度目の驚愕の声を上げた。
「死んでそのままの姿で、俺はこの世界に転生したんだ」
「転生者って事は分かったが、それと竜王とはどう繋がるんだ?」
「そこが気になります」
俺は口を開いた。
「転生者したのは良かったんだ。だけど、あのヤバい森で目を覚ましたんだよ……」
「ヤバい森?」
クレアが尋ねる。
「“死を呼ぶ終焉の森”って所でな」
「死を呼ぶ……」
「……終焉の森?」
「聞いた事ないか?」
「いや、ありますよ! 大ありです!」
「そ、そうか」
「勇者や英雄ですら入って帰って来れなかったと言われる最難関ダンジョンですよ!?」
「そうだ! どうしたらそんな所で目が覚めた!」
女神とか言っても信じなさそうなで、「よく分からん」と言っておく。
「まさかゴブリンのレベルが百を超えているとは思わなかったわ……マジで死にかけた……」
「ゴブリンで百越え……」
フィリップさんは予想以上のレベルに驚いていた。
「しかも数日しないで季節が変わるもんだから参ったよ。環境魔物ってなんだよ……レベル余裕で六千は超えてたしなぁ……」
「ろ、六千……ハ、ハハハ」
クレアがレベルが桁違いの可笑しさで、変な笑いになっていた。
その森で俺が一年過ごした事を説明すると。
「い、いや、笑えない冗談だ……」
「まさか、そこまでアキトさんとゼノアさんが強いなんて……」
「俺とゼノアだけじゃないな。フィアの村だって強いんだ。森から数百km離れた村だったからな」
「……え?」
「村人全員の平均レベルが百だった。しかも平気で地竜を狩っているたから驚いたよ……」
「村人がレベル百……」
フィリップさんとクレアさんはもうダメなようであった。
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