第47話:クレアは怖がり?

 俺の購入した家へと現在向かっていたところ、クレアがおずおずと聞いてきた。


「あ、あの、本当に幽霊が出るのですか?」

「分からない。多分嘘なんじゃないかな。俺に聞くって事は幽霊が怖いのか?」

「そ、そそそんな事あるわけないですよ! わ、私がいつ幽霊が怖いとい、いい言ったのですか!」


 いや、怖いんだよね?


「怖いんだな」

「怖いのじゃな」

「怖いんだ」

「ち、違いますから!!」


 俺達三人からそう言われ、慌てて否定をするクレアに俺は言う。


「そうか。なら着いた事だし中に入るとするか」

「ほえ?」


 変な声を上げたクレアは俺が見ている方を向いた。

 広い庭だが雑草が生えまくっており、家もボロく苔や蔓がくっ付いていた。

 そしてなにより、どんよりしている空気。


 俺は門を開けて中に入ろうとする。


「ま、待って下さい!」

「どうした?」


 振り返りクレアを見た。

 クレアは顔を青くさせていた。


「い、行くのですか? 今日はこの辺にしておきませんか? 家ならこちらで用意しますし……」

「怖いんか」

「怖がりなのじゃ」

「怖がりー!」

「だから違いますから!」


 いやいや。青い顔して否定されても説得力ないからね?


「行くか」


 門を開けて玄関へと向かって歩き出す。


「ま、待って! 置いて行かないで下さい~!」


 小走りで俺の後ろまで来ると、服の裾を掴みビクビク怯えていた。

 そんなクレアを見ると、何故か小動物みたいに可愛く思えた。


「ご主人様よ。どうするのじゃ? 先に中を見るのかのう?」

「んー、幽霊ってのも気になるから先に中を見回ってみるか」

「わかったのじゃ」

「お化け屋敷楽しみ!」


 こらフィア。ここはお化け屋敷じゃないからな。

 入ってから玄関までの距離が中間程になると、草むららか拳ほどの石が飛んできた。


 俺は飛んできた石を素手で砕いた。


「ひぃっ!?」

「どこから飛んできたんだ?」

「そこの草むらからじゃったぞ」


 みんなしてそっちを見る。


「……何もないな」

「じゃな……」

「やっぱり幽霊?」

「ゆ、幽霊!? な、なら早く帰りましょう!」


 クレアは最初の悲鳴の時、俺へと思いっきり抱きついていた。

 俺はクレアを見て口を開いた。


「クレア、やっぱり怖いんじゃないか」

「そ、そんなことないです! ただ驚いただけですからね!」

「はいはいそうですね~」


 俺はさらに進む。

 すると今度は少し大きめの石が飛んできた。

 今回も同様に素手で石を殴り砕く。


『出て行け! ここから出て行け!』


 どこからかそんな少女の様な声が聞こえてきた。


「誰だ? 誰かいるのか?」

『関係ない! 早く立ち去れ! さもなくばもっと酷い目に遭う!』


 声の主に尋ねるも、そんな返答が返された。


「う、うぅ~アキトさん? 帰れって言ってますし帰りませんか?」


 クレアは怖いのか、さらに強くしがみついた。


「何言ってんだ。このまま帰って寝てたら枕元に現れるかもしないぞ?」

「な、なんとかして下さい! わ、私寝れなくなってしまいます!」


 顔を真っ青にしたクレアは俺の肩を揺さぶった。


「悪い悪い、冗談だよ。いや、冗談ではないかも? まあ、それよりも進むか」


 さらに進んで行くと、再び声が聞こえた。


『立ち去らないと言うのなら強制的に追い出す』


 地面から太い丸太程の蔓が伸び、俺達へと遅いかかってきた。


「アキトさん!」

「任せろって」


 指をピンと伸ばし親指を曲げ、手刀の状態にした。

 そして、襲い掛かるムチの様な蔓に向かって振り払う。

 すると、一拍遅れて蔓が切断された。


「よし。玄関に着いたし入るとするか」


 俺が扉に近ずこうとしたとき。


『何をしにこの家にきた』

「何をしに? 俺達はこの家に住む者だ。そっちこそ誰なんだ?」

『住む? この家は私の物。誰にも渡しはしない』


 相手の声のトーンが落ちたことから察するに、怒っているようにも感じる。


「そうか。幽霊とかには渡せないしこの家の敷地ごと浄化するしかないか……」

『ふん! 出来るものならしてみろ!』


 マジでいいの? 浄化されちゃうよ?


「え? いいの? んじゃ──光の浄化ホーリーセラフィー


 瞬間家全体が、いや、敷地内全体が光り輝いた。


『うっ、や、やめてぇぇぇぇぇぇえ!』


 悲鳴が聞こえた。


「目の前に出てきてくれたら止めてやってもいいぞ?」

『だ、誰が出るもの、か!』

「そうか? ならもう少し威力を上げるわ」

『えっ? ちょっとまっ──』


 俺は少しだけ威力を上げた。


『い、やぁぁぁぁぁぁぁあっ! で、出る、出るから!出るからやめ、てぇぇぇぇぇぇえ!』


 その言葉を聞いた俺は魔法を解除した。


「ほら解除してやったぞ。出て来いならさっきの倍の威力でやるからな?」


 すると扉の前に光の粒子が集まり、一人の十五歳くらいの少女が現れたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る