第48話:幽霊と話し合い
「ごめんなさぁぁぁぁぁあい! 悪気は無かったんです! ほんとですって!」
俺達の目の前に現れた少女姿の幽霊が、開口一番に喋った言葉がそれだった。
そして、綺麗な土下座をキメていた。
ゼノアは「ほほう」と言って少女の幽霊を見て、フィアは「透けてるー」と言って観察していた。
肝心のクレアなのだが──怯えていた。
しかも、「ヒィッ! す、透けて、ゆ、ゆゆ幽霊ですよアキトさん!」と言って俺の肩を思いっきり揺さぶっていた。
「クレアは落ち着けって」
クレアの頭にチョップをする。
「あうっ」
まあクレアはいいとして、今は目の前で土下座している幽霊だな。
「顔を上げてくれ」
「ゆ、許してくれるので?」
「それは話を聞いてからだ。そんな格好では話せないし、立ってくれ」
「は、はい」
立ち上がった少女。
整った顔立ちにエメラルドグリーンのロングヘア。
そして、深緑色のパッチリとした目。
どう見ても美少女だろう。
「可愛いのう」
「透けてるけど可愛いの!」
「そ、それはわかりますが、ゆ、幽霊……」
可愛いと思ったのは俺だけではなかったようだ。
「それで君は? 喋らないと成仏させるぞ」
「は、話すから待って!」
どうやら、先程放った光魔法の攻撃が相当堪えたようだ。
少女はゆっくり話し出す。
「私は今から十年前、この家で何者かに殺された。大好きだった家族ごと……」
ふむふむ。
「そして、死んだ私が目を覚ましたらここにいた。犯人の顔は覚えてない。でも恨んで恨んでいたら、私はこの家に取り憑いていた。地縛霊として」
地縛霊かよ……
てか、話の内容がめちゃ重い。
少女は続ける。
「私は大好きなこの家を守るため、ここに住もうとする人を追い出していったのよ。何人追い出したかは多くて覚えてないけど……これで私の話は終わり」
なら悪いが言わせて貰おう。
「……お前達家族を殺した犯人は捕まって処刑されたぞ」
「……え? い、今なんて?」
「いや、だから、お前達家族を殺した犯人はすぐに捕まって処刑されたってことだ」
少女は俺の目を見つめ一拍。
「え、え、えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
目が飛び出んばかりに驚いていた。
「は、初めて聞いた……」
「そりゃあ、幽霊に話す奴なんていないだろ」
「そ、それもそうね」
「それで? 無念も晴れただろうし俺が成仏させてやるよ。安心しろ。家は貰ってやる。てか買ったから俺の物だしな」
そう言って少女に手のひらを向け、発動しようとすると慌てて止めてきた。
「ま、待ってよ!」
「なんだよ。成仏したくないの? 今なら一瞬だぜ。痛いと思うけど」
「なら余計やだよ!」
俺が「ならどうしたいんだ?」と問うと、少女は答える。
「私も一緒に住むわ!」
「なんだそりゃ……」
「いいでしょ!」
「まあ、いいか」
そう答えると、少女は「ふぅー」と安堵したように見えた。
「クレア?」
「は、はい?」
「大丈夫か? てかもう慣れただろ?」
「それはその、多少は……」
「そうか」
少女に向き直る。
「さて、名前はあるのか?」
「アルハよ」
「アルハか。俺はアキトだ。早速だが中に入る」
「アキトね。わかったわ」
俺は扉を開けて家の中に入る。
家の中は少しカビ臭かった。床にもホコリが溜まっており、歩くだけで宙に舞う。
それに所々がボロくなっていた。壁も表面が剥がれたり壊れたりしており、さらに安い理由がわかった気がした。
「はぁ……一旦外に出るか」
「じゃのう。少しカビ臭いのじゃ」
「臭いの!」
「ですね……」
「な、何よみんなして! もう!」
一旦外にでた俺は家を眺める。
どうしたものか。
『メティス。この家を直せるか?』
『可能です。リペアと言う魔法で可能です』
『助かる』
脳内でメティスと会話していたために、周りからは黙っていたように見えたのだろう。
フィアが袖をクイクイと引っ張った。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「ん? ああ、この家を直そうと思ってな」
「できるの!?」
アルハが驚く。いや、アルハだけではなく、クレアも同様に驚いていた。
「リペアって言う魔法を使えばな」
「リペアって……それはこんなに大きなのは直せませんよ?」
「え? そうなの?」
『そうなのメティスさん?』
『いえ。普通のリペアでは魔力量が足りないだけです。込める魔力を多くすれば可能です』
なんだ。できるじゃん。
「ま、まあ見ててくれって」
「壊したら許さないんだから!」
「安心しろって。俺達の家になるんだから壊すわけないだろ」
「そう。なら許す」
「何様なんだ……まあいいや──リペア!」
魔力を多めに込めて発動する。
すると、敷地内が収まる程の大きな魔法陣が現れた。
「ちょっ!? 何ですかこの魔力量は!? それにこれ程大きな魔法陣なんて……」
クレアが驚いているようだがスルーしよう。
正直俺も予想外である。
家を含めた敷地内が輝き出した。
『メティス。もしかして魔力を込めすぎた?』
『はい。ですが丁度敷地内が元に戻るので問題ありません』
『そ、そうなのか?』
『はい』
メティスさんが大丈夫と言うのだから大丈夫だな。
少しして光が収まると、建てたばっかりの様な家となっていた。屋敷と言うほど大きくは無く、一軒家と言われるほど小さくない、程よい大きさの家だ。
周囲の庭を見ると、玄関へと続く道も綺麗に舗装されており、壊れていて気づかなかったが、噴水もあったようだ。
「す、凄い! 一瞬で新築の様に……」
「うっ、き、綺麗に直ってる……」
クレアは驚いていたが、アルハは感動なのか、幽霊なのに涙を浮かべていた。
「さすがお兄ちゃん!」
「フィア、まだこれだけじゃないぞ ──土操作!」
地面に手を突きそう唱えた。
瞬間、地面が波のように広がり、ひび割れていた地面が元に戻っていく。
「まだまだ! ──母なる大地!」
今度は敷地全体が、エメラルドグリーンのように粒子を放ちながら光輝いた。
すると、地面からは芝が生え、枯れた木が元に戻り緑を取り戻していった。
「ふぅー、これで元通りだな!」
「流石はご主人様なのじゃ!」
「流石お兄ちゃん!」
ゼノアとフィアは俺を賞賛し、クレアとアルハは驚愕のあまり固まっているのだった。
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