第53話:合格発表

 入学試験の合格発表当日。

 俺とゼノアは学院へと結果を見ていた。貼り出された合格者名簿を下から上へと確認していく。貼り出しに関しては一般人と貴族は一緒である。

 この学院のクラスは上から順にSクラス、Aクラス、Bクラス、Cクラスと別れていた。


「ん~と……名前はどこだ?」

「見当たらないのじゃ」


 そう呟きながら確認をしていると。


「そこを退け貴様!」


 ん? 何か聞こえたけど俺ではないだろ。


「そこを退けと言っている! 聞こえないのか!」


 再び傲慢そうな声が聞こえた。

 五月蠅いやつだな、と思いながら後ろを振り向いた。

 すると、そこにはそれなりの身なりをした青年がおり、俺を凝視していた。

 恐らく貴族だろう。

「そこを退けと言っている!」


 そう言って俺を指さす青年。

 周囲を見渡すと、周りにいた人達は俺とゼノア、青年から離れて見ている。


「……もしかして俺か?」


 自分を指差し青年に尋ねた。


「当たり前だ! 貴様私を知らないのか?!」

「ん? 誰だよ。今自分の名前が無いか探してんの。話なら後で聞くぞ?」

「貴様っ! 平民の分際で! 私の父はルーミド伯爵だぞ!」

「うん。それで? 伯爵はお前のお父さんなんだろ?」

「じゃのう」


 ゼノアも頷いている。

 そこでようやくゼノアに気づいたのだろう。青年はゼノアを見た。


「貴様のような子供がここで何をしている。さっさと去れ」

「何を言っとるのじゃ? 妾も試験を受けたのじゃ。何か飛び級とか言われたのう」

「なっ!? 平民の分際で何が――」

「あっ、アキトさんにゼノアさん!」


 青年貴族の声は、後から聞こえた声によって遮られた。俺達はその声が聞こえた聞こえた方を見と、そこにいたのは――


「クレアか」

「クレアじゃのう」


 クレアであった。後ろには顔見知りの騎士さんがいた。

 青年貴族はクレアを呼び捨てにした俺をキッと睨んだ。


「貴様! 姫殿下のことを呼び捨てにして!」


 周囲の人達も俺とゼノアに戦慄の眼差しを向けた。

 そんな周囲の反応も気しないクレアは青年貴族に声をかけた。


「あなたはルーミド伯爵の――」

「はい。息子のジェインです」

「お久しぶりですね。幼少期のパーティー以来ですね」

「お久しぶりでございます姫殿下。そうです。それで、この者の無礼な発言に関しましては……」


 それでようやくこちらを見た青年貴族とクレア。俺を見たクレアは口を開いた。


「アキトさんとゼノアさんは知り合いですから。ね?」

「ああ、そうだな」

「じゃのう」


 その発言に青年貴族は驚愕していた。それは周囲の人達も同じであった。

 一国の王女と友達なのだから。


「アキトさんにゼノアさん、結果は?」

「それが見当たらなくてな」

「今Aクラスまで見たのにないのじゃ」

「クレアはもう見たのか?」

「いえ、これからです。でも、Aクラスに無いとなると……」


 ジェインが俺のことを指差し口を開いた。

 その顔は喜色に染まっていた。


「貴様は落ちたのだ!」

「そんなことありませんよ。アキトさんとゼノアさんは私よりも頭が良いですからね」

「……え?」


 クレアはジェインを一瞥し結果を確認する。


「アキトさんありましたよ。私達三人ともSクラスみたいですよ。主席は――」


 俺も上から確認し見つけた。一位主席――アキト、二位次席ゼノア、三位にクレアだった。


「あんな問題で主席取れるのか……」

「じゃのう」

「あの、お二人の理解能力が可笑しいですよ?」


 そんな俺達の会話に、ジェインは固まっていた。


「お、お前がしゅ、主席だと……ありえん! ありえんありえんありえん! 絶対何か仕組んで――」

「ジェインさん?」


 クレアに名前を呼ばれたジェイン。


「な、なんでしょうか?」

「この学院では皆、平等ですよ? 貴族だからとかは関係ありません。皆様も忘れなきようお願いします。アキトさんとゼノアさんも確認もしましたし事務所で手続きを済ませません?」

「そうだな」

「家が一番落ち着くしのう」


 それから事務所で説明を受けて制服を受け取った俺達。

 因みにジェインはAクラスだったみたいだ。まあ、どうでもいい情報ではあるが。

 俺はクレアが乗ってきた馬車に同席させてもらった。このままフィリップさんにも報告するためだ。


 馬車で移動の最中、俺はクレアに尋ねた。


「学院で、貴族だから、王族だからっていうのは禁止なんだな?」

「はい。国王であるお父様が定めたものです。学院では全ての者が平等である、と」

「なるほどな~。それは正しい判断かもな」

「私もそう思います」

 

 それから王城に着いたのだが。俺が主席と言うことを聞いたフィリップさんは、「祝辞が楽しみだ」と言って笑っていたのだった。

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