第18話:村を出ます
───殲滅後の夕方
俺とゼノアは現在、村人達と一緒に宴をしていた。狩った魔物や獣を村で料理が上手い人達が作る。
勿論料理を作る人は村に居るやけにレベルが高い奥さん達だ。若い女性も何人か手伝っている。
俺とゼノアの皿にはどんどん料理が載せられていく。蒸した肉や焼いた肉、肉を使った料理をどんどん食べていく。
ゼノアは元は竜だからか沢山食べている。それを見た村人の男性達は負けんとばかりに次々と料理を食べていく。
だが一向にゼノアの食べていく速度に変化はない。
(どれだけ食べるんだよ…)
ちなみに俺はゼノアが食べた量の2/5も食べていない。
次第に村人達の食べる速度が落ちていく。2時間経過してやっとゼノアの食べ終わる。
「ふぅー、沢山食べて満足なのじゃ!」
「そ、そうか。なら良かったよ」
それからは村人達と話したり、俺が知っている料理を作って振る舞ってみたり、村人(男)達と模擬戦をやって、無駄な動きをなどを指摘していたら”師匠”と呼ばれたりしていた。
──次の日の朝
俺とゼノアは現在村人の出入口にて村人達と別れの挨拶をしていた。
村のみんなが俺とゼノアを見送りに来てくれた。
代表で村長が涙を流しながら言う。それと一緒に村の男達も涙を流す。
「うぐっ…し、師匠。ひっぐ…私達は、うっぐ、師匠から教わった事を忘れないで、うぐっ…鍛錬する事を約束します!そして」
(いつ師匠になった!?)
次には村長の奥さんが言う。
ちなみに奥さんの名前はアンバーさんと言う。
「秋人さん、いえ、師匠、私達の知らない料理を教えて頂きありがとうございます!」
こっちにも師匠と言われました。
そして秋人は諦めた。
そう言うと村の女達、特に若い女の子達が俺を熱い視線で見つめてくる。この視線は───そう。もっと料理を教えて欲しいと言う視線だ。
(こんなに可愛い女の子達がまた俺に料理を教えて欲しいだなんて…うぅ…)
秋人は勘違いをしていた。
そこに村長がこんな事を言う。
「師匠。頼みがあるのじゃ」
「ん?なんだ?」
俺は村長の真剣な顔を見て大切な話だと理解する。
「師匠に預けたい子がいるのじゃ」
思いもよらない事に俺は少し固まったあとに聞き返す。
「何故俺に預けるんだ?」
「その子の親は二人ともその子の目の前で魔物に食われて亡くなっておるのじゃよ。そして相当のショックを受けてしまい心を閉ざしてしまったのじゃよ」
その理由に俺の表情が若干暗くなる。村長は続ける。
「その子は現在独り身。私達みんながなんとか励ますも心を開いてくれないのじゃ。そこで師匠に頼んだのだ」
「そこでなんで俺になるんだ?」
その質問に対しては村長の奥さんアンバーさんが答えてくれた。
「その子の名前はフィアという。今回の宴で師匠が出した料理を美味しそうに笑顔で食べていたんだよ…私達にはけして見せる事がなかったあの子の笑顔を…。本当は明るく元気な子なんだい。師匠頼みます。どうかまたあの子の笑顔を取り戻して下さい」
そう言って村のみんなが頭を下げて「お願いします」と言ってくる。
俺は考えることなく受け入れる。
何故か?それは俺自身、子供は見捨てないで助けると決めているからだ。それに──俺も一時的だが親が居なくて姉と実家暮らしだからな。丁度フィアと同じ位の歳だ。
そして決まるなりアンバーさんが家からフィアを連れてくる。見た感じ年齢は11~12歳だ。身長は145cm位。そして本当は綺麗だろう金髪も少し艶が無くくすんで見える。そして見るからにやつれている。
アンバーさんは俺の目の前に連れて行き。
「この人と一緒に旅に出て世界を見て来なさい。この人ならフィアが抱えている悲しさも背負ってくれるさ」
フィアは顔を上げて俺を見る。目が会い俺は挨拶をする。
「俺は秋人だ。君の名前を聞いてもいいかな?」
フィアは小さな声だがはっきりと聞こえる声で伝える。
「フィア」
「そっかフィアちゃんか」
「…うん……お母さんが…付けてくれた」
「いい名前だね。それとフィアが今背負っている悲しさは俺も分かるよ」
そう言うとフィアは「え?」と言ってくる。
「まあ、ここからは長くなるから次の街に向かいながらでも話そうか」
「…うん」
そして俺はフィアを連れて村人達に「短い間だったが世話になった。またどこかで会おう」と言って、ゼノアは「バイバイなのじゃ~」と言って手を振って村を跡にするのだった。
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