第56話:身の危険を感じたのだ
フィアの入学式が終わり翌日。俺たちも今日から学院だ。
表上では魔法を学ぶための入学だが、本当は婚約者となったクレアの護衛である。護衛といっても悪い虫を近ずけるなとのフィリップさんからのお達しである。
(本当にフィリップさんは過保護だよなぁ……)
「お兄ちゃんにゼノアお姉ちゃん早く学校いこう!」
朝食を食べた俺とゼノアを引っ張って急かすフィア。
学校が楽しみで仕方がないのだろう。
「そうだな。アルハ、後は頼んだ」
「うむ。妾も学院とやらが楽しみじゃ」
「はいは~い」
頼りなさそうなアルハの声を耳に、俺たちは家を出てフィアを送りに行った。
ルンルンと鼻歌を歌いながら俺とゼノアの前をスキップするフィアを見て微笑む。
そんな可愛らしいフィアは、近所の人達とも仲良くなっており時折挨拶をされる。
「フィアちゃんおはよう」
「おはよう!」
「フィアちゃんおはよ~」
「おはよう!」
そんなこんなでフィアを学校に送り届けた俺とゼノアは学院へと向かう。
学院に着いたのだが、俺はクレアの護衛と言うこともあり、クレアの到着を待っていた。
すると一際目立つ馬車が停車する。
その馬車には見た事ある紋章が描かれていた。
そう。王家の馬車である。他にも何台か貴族の馬車が停車していた。
そして、クレアが馬車から降りてきた。
クレアの登場、というよりは馬車が来た時にはすでに沢山の視線を集めていた。
「アキトさん! ゼノアさん!」
そのクレアが、俺とゼノアを見つけて手を降って駆け寄って来た。
視線は俺とゼノアを交互に行き来し、コソコソと声が聞こえてくる。
「おいアイツ、首席だろ? クレア様とどんな関係なんだ?」
「さあな。だけど親しくしているのは確かみたいだな」
「羨ましい……」
「全くだ。死ねばいいのに」
キラン、と目が怪しく光った。
(や、やばい。俺殺られるかも!?)
俺の学院生活に果たして安全はあるのだろうか。
そう思って仕方がない。
ゼノアも視線を感じたのか、念話で語りかけてきた。
『ご主人様よ。殺して良いのかのう?』
『いや殺しちゃだろだろ!? そもそも同じ学院生だろうが!』
『むう。致し方ないのじゃ』
『おい。うっかり殺すなよ?』
『分かっておるのじゃ』
俺は「本当かな?」と思っていると。
「アキトさんにゼノアさん。早く行きましょう」
「……そうだな」
「うむ」
そんなクレアの声によって、俺たちは校舎に向かうのであった。
それからも好奇の視線や嫉妬、敵意、殺意の視線が俺に突き刺さるも、スルーする事を決めた。
そして、俺たちは教室の前にきた。
「緊張しますね」
「だな」
「そうかのう?」
ゼノアはこの緊張感が伝わらないだろう。
ファーストコミュニケーションが失敗すれば、友達が出来ないでぼっち生活になることを。
「行くか」
「はい」
クレアを先頭に俺たちも教室に入ったその瞬間、視線が俺たち三人へと集まった。だがそんな視線もすぐに外れた。
教室を見渡すと、どうやら俺たち以外は全員来ていたようだ。人数は俺たち含めて十五人。やはりSクラスと言うこともあり人数は少ないようであった。
俺たちは指定された席に座り、担任となる先生を待つことになった。
そして、チャイムが鳴るのと同時に教室の扉が開かれた。
見た目は三十代くらいだろう少しダンディーな男性であった。
そのまま教卓に行くと口を開いた。
「はじめまして。このSクラスを担当することになった、ザイン・ティーチャと言う。一応は貴族だが気にするな。好きな物はお花を愛でることと家庭菜園だ。よろしく。
それと入学式に国王陛下から聞いている通り、この学院で貴族だからとか言うことは禁じられているからな。以上だ」
そういってザインは自己紹介を済ませた。
ザイン先生はお花を愛でるという可愛い趣味をお持ちのようである。
「さて。私の自己紹介もした事だし次はお前たちだ。まずは首席である君だな」
ザインは俺を指名する。
指名された俺は立ち上がり自己紹介を始める。
「みなさんはじめまして。アキトと言う。好きな物は──特にないな。一応は底辺冒険者をやっている。近接、魔法全てが得意だ。これから宜しく頼む……ぼっちにだけはなりたくないから気安く話しかけてくれ」
俺は席に座り、次はゼノアであった。
「ゼノアというのじゃ。妾の全てはそこのご主人様に捧げておる。好きな物はご主人様。魔法が得意なのじゃ。よろしくたのもう」
ゼノアはそう言って席に着いた。
ザインのみならず、他のクラスメイト達もザワザワしていた。
「ご、ゴホン。それでは次は──クレアさん」
「はい」
クレアは立ち上がり自己紹介を始める。
「皆様はじめまして。クレア・フォン・レスティンと言います。第二王女ですが、ザイン先生の仰る通り身分差は関係ありません。気安くお話しかけて下さい。そうですね、得意な魔法は火属性です。よろしくお願いします」
優雅な一礼をし席に着く。
それからも自己紹介が続いた。貴族がいたり一般がいたりと様々であった。
みんなが個性豊かな自己紹介をしていた。中には友達がいる人もいた。
自己紹介が終わった俺たちに、ザインは口を開いた。
「さて。自己紹介も済んだところでこれから魔法による実技を行う。私の後に続いて第一訓練場に移動する」
こうして俺たちは訓練場に移動することとなった。
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