第1章

第1話:転生先は…

 トラックの衝撃はいつになっても襲って来ない。疑問に思った俺——柊 秋人は目を開けると、そこは真っ白な空間だった。


 「ここは?」


 俺がそう言って辺りを見渡すと目の前に1人の少女が現れた。


 「おわっ!」


 俺は驚き声が上がる。だが落ち着き少女を再度見る。その少女は金色の長髪をし、白く透き通った肌。今まで見たことが無い人形の様に整った美しい少女は。


 「ちょっ、何ですか急に!?」

 「え?あ、すみません。えっと俺は死んだ筈では?」

 「ええ。貴方は死にました。トラックに轢かれて」

 「やっぱりか。なら生きているわけな…い……よ…えぇぇぇぇ!?生きてるのか!?」


 俺の体が無事なのを見て驚いていると少女が。


 「いえ。死んでいますよ」

 「自分の体をよく見て下さい」

 「あっはい」


 そうしてじっくりと体を見てみると。薄らと透けている手、足。俺は「やっぱり死んでる?」等と思っていると。


 「死んでいますって言ってるじゃないですか!何回言わせるんですか!」


 少女に怒られました。


 (え?俺は何も言っていないぞ?)


 俺がそう思うと少女が。


 「聞こえてますから。それでは本題に入りますよ」


 少女が若干疲れ気味に話しを始める。


 「私はある世界を任されている女神です。貴方は先程申した通り、トラックに轢かれて死亡しております。私が魂を通じて半透明化でこの場に呼んでおります」

 「そんで?自称女神様?死んだ俺に何の用なんだ?」


 俺が「自称女神様」と呼ぶと自称女神様は「本当に女神なんですってば!もう…」等と言いながら話しを続ける。


 「今から30年後に日本で伝染病が流行します。貴方様が助けたその少女は、その伝染病に対抗する為のワクチンを開発し、何千何億という人々を救います。これは貴方が救ったと言っても過言ではありません」


 俺は無言で女神様を見て話しの続きを促す。


 「貴方、#柊秋人__ひいらぎ あきと__#は他の世界で生きる事を望みますか?」


 俺は少し考えるが折角ならと思い「はい」と言い了承する。


 「わかりました。ではどの様な世界に致しますか?」

 「どの様な世界?地球じゃないのか?」


 俺がそう言うと女神様は。


 「いえ、他にもありますよ。例えば電脳世界や巨人が居る世界他にも沢山あります」

 「なあ?ファンタジーな世界はあるか?」

 「ありますよ?」

 「なら文化は中世ヨーロッパ位で剣と魔法の世界で頼む」

 「え?あ、はい。わかりました」


 俺、秋人はオタクだ。だがファンタジー世界に行ってひっそりと暮らすのが夢でもある。そして自称女神様が話し始める。


 「聞こえてますからね。それとこちらの欄からスキルを選んで下さい。普通は一つの所、秋人さんには多くの命を救った事になっておりますので、この欄の他にも救った命の分強力なスキルも習得可能です。数は6つとなっておりますのでお願いします」


 言い終わると目の前に半透明の画面が出て来る。


 俺はスキル欄を一通り確認する。見た所良さそうなのが相当あったが、俺は絞りに絞って6つを決めた。


 1つ目は<経験値ステータス倍加>

 倒した時に手に入る経験値が倍になる。

 レベルアップした時にステータスが倍になる。


 2つ目は<奪う者>

 倒した魔物等のスキル、ユニークスキル、ステータスを奪う事が出来る。死んでいる魔物を喰っても手に入る。


 3つ目は<幸運>

 運が上がる。


 4つ目は<叡智>

 世界の様々な知識や技術等を得る事ができる。


 5つ目は<異空間庫>

 好きなだけ物を入れる事が可能。

 出す事も可。上限なし。


 6つ目は<ディスプレイ>

 マップや鑑定などの様々な機能が備わっている。


 俺はこれらを選択した。


 そして。


 「決まりましたね。それと体はどうしますか?そのままの姿、年齢で転生しますか?それとも赤ちゃんからやり直しますか?」


 (ん?赤ちゃんからじゃないのかな?)

 「はい。どちらでも可能です」

 (また心を読みやがって。まぁ、赤ちゃんからは面倒臭いからなあ、そのままの姿での転生でいいか)

 「わかりました。では良い人生を」


 そう言って自称女神様は俺の心を読み、転生させる。

 俺の意識が遠のいて行き───「あっ!」なんか自称女神様の不穏な声が聞こえた。だが俺はその声を上げた理由を聞く間もなく意識を失うのだった。



―——————————————



 意識が覚醒して行き目を開けると、目の前には可愛い可愛い美少女───じゃなくて緑色の体をし、ボディービルダー顔負けの発達した筋肉をした魔物、ゴブリンが居た。


 「え、え?こいつはたしか…ゴブ……リン!?」


 俺は状況が理解出来ずに居た。すると目の前のゴブリンは手に持っている棍棒で殴り掛かってくる。

 俺はなんとかそれを避けて棍棒が地面に当たった。


 ドゴンッ!


 「……は?」


 地面に小さなクレーターができていた。


 「お、おい。ゴブリン強すぎじゃね!?」


 俺は勘違いをしていた。


 この場所は、この世界で最も行っては行けない場所であり、最後の森であり、数多の勇者、英雄達が挑み死んだ場所。世界最凶最難関ダンジョン”死を呼ぶ終焉の森”だった。


 秋人がそれに気づくのはもう少し先である。

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