第2話:黒歴史は増やしたくない
俺はゴブリンの攻撃から必死で逃げていた。逃げては追いかけて来る。そんなゴブリンに俺は何かないか打開策がないかを考えていた。
『良い考えがあります』
「!?」
突然脳内に響き渡った無機質な女性の声。俺は驚きながらもその声に問いかけてみた。
「あんたが誰かは知らないが、何か案があるのなら教えてくれ!」
『了解しました』
そう言って脳内で語り掛けてくる声は案を出してきた。
『それではそのまま真っ直ぐに進んで下さい』
俺は転生してスグに死にたくは無いので、言われるがままに突き進む。
『次に左へ曲がって下さい』
左へと曲がる。ゴブリンは追いかけてくる。ずっと走っているので疲れてきた。
「ちょっ、もう…走れない……」
俺が脳内の声に走れない事を言うと。
『思案中………。わかりました。それでは右に曲がりましたら落ちている木の枝を取ってください』
俺は言われた通り右に曲がり落ちている木の枝を手に取る。
『そこの曲がり角でゴブリンを待ち伏せして下さい。ゴブリンが出て来ましたらそれをゴブリンのどこか柔らかい所へと突き刺して下さい』
「そんなのでいいのか?」
『私の計算ですとそれでゴブリンを倒す事が出来ます』
「分かった」
俺は角でゴブリンを待つ。緊張で心臓がバグバクして来た。
日本では決して味わう事の無い身近な死への恐怖。
そして俺は、殺さないと俺が死ぬかもしれないと言うこの状況に俺はある意志を立てる。それは殺意を向けて来た相手は殺す。だが勝てないと分かっている相手には全力で逃げる。これを誓った。
そしてスグにその時は来た。
不敵に口角が弧を描く。
ゴブリンは俺が曲がった所を曲がってくる。そして茂みに隠れて待っていた俺は、茂みから出て手に持っていた枝でゴブリンを躊躇無く刺しに行く。ゴブリンは躱そうとしたが躱すことが出来なく目に枝が突き刺さる。
「グギャァァァッ!」
ゴブリンは目に突き刺さった痛みに耐えられなく悲鳴を上げる。だが俺は枝を更に深く刺し脳へと到達する。するとゴブリンの鳴き声は止まり俺の脳内に聞き覚えのあるファンファーレが鳴り響く。
《テレレテッテッテー》
『おめでとうございます。レベルが上がりました。ステータスを確認して見て下さい。それと同時に<身体強化(極)>を取得しました』
俺はそう言われるが確認の仕方が分からなく聞いてみる。それとなんかスキルを習得したらしい。
「どうやって確認するんだ?」
『秋人様のスキル<#表面__ディスプレイ__#>で確認してみて下さい。出し方はスキルを言うか、念じると出てきます』
俺はスキル名を念じる。すると目の前に半透明の画面が出現する。そこに俺のステータスが書いてあった。
名前:柊秋人
Lv.63
種族:人間
ユニークスキル:<経験値ステータス倍加><奪う者><幸運><叡智><異空間庫><ディスプレイ>
スキル:<身体強化(S)>
称号:転生者
「なんかレベルが高くないか?最初は1だもんな?」
『はい。最初は1からです。ですが先程のゴブリンはLv.103でした』
「………え、103?まじで?てかあんたは誰なんだ?」
『はい。私は秋人様のスキル<叡智>から生まれた人格です。世界全ての情報を掌握しております』
「そ、そうなのか。それは凄いな……それと”様”付けは止めてくれ。俺には合わない」
『わかりました。それではマスターと呼ばせて頂きます』
「…まあいっか。あのゴブリンのレベルは普通なのか?」
『いえ。通常は3~15となっております』
「……あのゴブリンが異常なだけか?」
『違います。この森のゴブリンは全てのレベルが100~120となっております。この森で最弱な魔物です』
俺はあのレベル帯のゴブリンがうじゃうじゃいると聞いて戦慄した。それにあれが最弱だなんて。あのゴブリンのステータスはこんな感じだ。
名前:ゴブリン
Lv.103
スキル:<身体強化(S)>
俺はこの森で1番高いレベルを聞いた。すると返ってきた答えは。
『この森の最高レベルは8600です。ちなみにですが種族は竜王族です』
「は、8600!?俺なんてゴブリンのレベルにも及ばないこの大陸最弱の人間だぞ!」
『マスターはスキルの<奪う者>でゴブリンのステータスが手に入っております。Lv.100のゴブリンなら互角の勝負ができます』
「ゴブリンと互角って………」
だがごちゃごちゃ言ってられない。まずは自分の拠点からだ。
「どこか拠点に出来そうな場所はあるか?」
『思考中………。魔物の確認。見つけました。ここから西に2キロ離れた小さな洞窟が魔物はいなく、最適かと思われます』
俺は即決する。「行く」と。
それからも俺は出会ったゴブリンを<叡智>を使い倒して向かった。
拠点まであと1kmと言う所で隣から大きな音がした。確認して見るとそれは──”山”だった。先程まではそこに居なかったそれはこちらへと動き始める。
「なんだよアレは…。」
『あれはマウンテンタートルです』
「あっ、ご丁寧に説明ありがとうございます」
『レベルは2470です』
「……それを早く言えーーッ!」
そして俺は全力の全力で逃走する。ステータスが上がったからか、走る速度が段違いに早くなっていた。
そして晴れ渡っていた空が急に暗くなった。自分が居た場所が突然暗くなったのに不安になりつつ上を見上げると───巨大な鳥がいた。見た目は鷹の様な姿のそれはマウンテンタートルへと向かって急降下する。
マウンテンタートルは急に襲い掛かって来た鷲の姿をした魔物に、背負っている山を”噴火”させる。噴火したマグマは鷲の姿をした魔物へと向かって行く。
鷲の姿をした魔物は急降下をしたからか、それを避けられなくマグマへと突っ込む。そしてその魔物は一瞬で溶け絶命する。
それは後ろを振り返った一瞬の出来事だった。
「この場所ヤバすぎだろ!?てか火山弾がこっちに降り掛かって来てるじゃねぇーか!」
俺は火山弾を避けながら逃げる。頭の真上を通ったり目の前に落ちたりとそれはもう散々だった。それでも俺はなんとか目的地の洞窟までたどり着いた。
「はぁ…はぁ…。ここが、そうなのか?」
俺は息が上がりながらも<叡智>へと聞く。
『はい。こちらが目的地の安全地帯の洞窟です。マップをご覧下さい』
そう言われて俺はマップを見て確認する。入口は人が1人通れる程度。中に入ると真っ暗だった。それもそうだろう。ここは洞窟なのだから。
「暗いな……」
『スキル<魔法(S)>を申請中…………。承諾を確認。<魔法(S)>を習得しました。これでマスターは全ての魔法が使用可能です』
なんか叡智さんが頑張ってくれました。
叡智さんの説明だと、この世界の基本属性魔法は火、水、風、地、光、闇の6属性となっている。これに生活魔法や時空魔法などがあるが、俺は叡智さんのお陰?で全てを取得しているので使用するときにでも説明するので割愛する。
それとスキルレベルの階級はこうなっている。
S>A>B>C>Dとなっている。
俺は取ったばかりの魔法を使用し光源を出す。魔法だが取得した時に魔法に関しての詠唱や技名など、全ての情報が脳内へと流れ込んできた。
俺の精神などはスキルの<叡智>が管理してくれているので、一気に情報が流れ込んで来ても耐えられるので大丈夫だ。
そして俺は人生で初めての魔法を発動させる。
「大いなる光よ、闇を照らしたまえ。ライト!」
すると目の前に15cm程の光の玉が出現し輝く。すると洞窟の中が見渡せるようになった。
洞窟の中は天井までの高さは3メートル。奥行は10m程だ。それよりも………。
「詠唱するの恥ずかし過ぎる!」
俺は地面をゴロゴロと転がり、先程の詠唱を思い出していた。
「あれは恥ずかしすぎる……俺は異世界に来ても黒歴史を作る事になるのか!?」
『スキル<無詠唱(S)>を申請中…………。承諾を確認。<無詠唱(S)>を習得しました』
叡智さんは俺の為に頑張ってくれています。これで黒歴史を作らなくて済んだ俺は心からホットするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます