魔具

私の意識はゆっくり覚醒していき重いまぶたを開けた。


そこに見えたのは・・・レースの付いた天蓋。




・・・またこの展開かい!!




とりあえず体を起こそうとして全身の痛みでまたベットに横になる。




そう言えば私ゼクスの撃った闇の珠の直撃を受けたんだった。




私の全身には包帯が巻いてあり一応手当てはして貰えたみたい。なんとか動く右手を胸に当て自分に治癒魔法を掛け・・・ようとして出来なかった。




あれ?何で?魔法が発動しない!?




右手を上げそこまで威力の無い魔法をいくつか掌から出そうと試みたが何も発動しない。そこで初めて私の右足首に何か異物を感じ、痛みを我慢して上半身を起こし掛けられていた布団を退かして右足首を見る。ちなみに服は変わっていたがもう2回目なので気にしないようにした。その足首には赤い大きな宝石の付いた銀色のアンクレットが足にピッタリと嵌めてあったのだ。


私はなんか嫌な感じがして、なんとかそれを外そうとしたが留め金の部分が無く全然外れない。




そもそもこれどうやって付けられたんだろう?




そう不思議に思っていると、入口の扉が開きそこから見知らぬ男の人が入ってきた。


白い髪に深紅の瞳。眼鏡を掛けておりその美しい顔は無表情で何を考えているのか分からない。


深紅の瞳から魔族だと分かるが、この男もほぼ人間と変わらない容姿をしているので多分最上級魔族だ。




「・・・目覚めた様ですね」




そう言って男は私に近付き、おもむろに私の額に手を当てた。


そして次に目を大きく開けられ、口を開けられ、首筋と手首に手を当てられて何かを調べている様な行動を無言でされる。




なんだかお医者さんに診察されてるみたい。




私が不思議に思っていると、今度は男が服に手を掛けて脱がそうとしてきたので私は慌ててそれを制した。




「な、な、何するの!」


「何って、傷の状態を確認するためですが?」


「確認してくれなくても良いです!そもそも何故あなたがそんな事を!?」


「私は医療の知識を持っているので、ゼクス様に貴女の傷の手当てをする様に言われています」


「ゼクス!?あなたは一体?それにここは?」


「・・・私はリカルド。ゼクス様の側近をしています。ここはゼクス様が住まわれている城です」




そう無表情に淡々と私の質問に答えてくれた。




やっぱり私はゼクスに連れて行かれていたのか・・・ジークフリード様は大丈夫だろうか?




意識を失う前に見たジークフリード様の様子を思いだし胸を痛めていると、また扉が開き今度はゼクスが入ってきた。




「思ったよりも元気そうだな」


「ゼクス!・・・っ!」




私はゼクスを見て咄嗟に体を動かそうとし全身の痛みに苦痛の声を上げてしまう。




「あぁ、無理はするな。そなたは意識を失ってから4日間も目を覚まさなかったのだぞ」


「4日間も!」


「体力も落ちている様だから、しばらくはゆっくり養生すると良い」


「ゆっくり養生なんて必要無いので私は帰ります!」


「その体でか?それに・・・」




ちらりとゼクスは私の足にあるアンクレットを見る。




「そなたは今魔法が使えないであろう?治癒魔法も飛行魔法も使えないでどうやってここから帰ると言うのだ?」


「何で!?今私が魔法を使えない事が分かるの!?」


「簡単な事だ。そなたが今足に付けている装飾品は我が魔力を込めて作った魔具。そなたの魔法発動を抑える物だ」


「なっ!」




私は自分の足に嵌まっているアンクレットを見て、もう一度外そうと試みる。




「無駄だ。それは我にしか外せん」


「なら外して!」


「それは出来ぬ相談だな。それを外したらそなたは帰ってしまうであろう?我はあの国にもう手を出さない代わりにそなたを貰ったのだからな。もうそなたは我のものだ」


「私は物じゃ無い!」




そう言ってゼクスを睨み付ける。しかし逆にゼクスは面白そうに私を見返してきた。




「くく、やはりそなたは我を楽しませてくれる・・・さぁ、まだ休んだ方が良いだろう。リカルド後は頼んだぞ」


「御意」




リカルドはゼクスに頭を下げて肯定の言葉を述べ、そしてゼクスは扉に向かっていったのだがふと何かを思い出した様に振り私見る。




「そう言えばそなたの名を聞いていなかったな?」


「・・・サラ」


「サラか・・・良い名だな」




そう私の名前を満足そうに述べてから今度こそ扉から出ていった。




「・・・ではサラ、ゼクス様に言われた通りもう一度横になり休んでください」


「いや、さすがに4日間も寝てたからもう眠くないし、この状況では寝れそうには・・・」


「寝てください」




リカルドは私の目に掌を当てて両目を塞ぎ、そしてその手から闇の魔力を流し込んできた。


すると、あんなに気分が高ぶり眠くなかったのに団々睡魔が襲ってきたのだ。




「・・・おやすみなさい」




私は倒れる様にゆっくりベットに沈み込み、意識が薄れていく中でリカルドの少し優しさが籠った言葉を聞いて眠りについた。

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