あの時の男達
サラが隣街『ルネサス』で深夜に人身売人の男達に連れて行かれたその日の午後。漸く四人の男達が街に着いた。
馬車を持っていたジークフリードに抜け駆けさせないため、他の三人も無理矢理ジークフリードの馬車に乗り込み一緒に来たのだ。
「何か街が騒がしい・・・」
ジークフリードはいつもと違う街の雰囲気に怪訝な表情になる。
いつもは活気溢れる街なのだが今は騒然とし、至るところで衛兵が走り回っていた。
ユリウスは近くを通りかかった衛兵を捕まえ事情を聞く。
すると、深夜に人身売人から拐われていた娘達が逃げ出してきたらしい。娘達の話を元に今その組織の壊滅と残党がいないか捜査中との事。
「・・・義姉さん大丈夫だよね?まさかこの事件に関わってはいないと・・・思いたいんだけど、あの義姉さんの事だし・・・」
「「「・・・・」」」
ヒューイの呟きにそれぞれが嫌な予感を感じ、四人は無言で衛兵詰所に向かった。
詰所で更に詳しい事情を聞くと、どうやら一人だけ売人達の船に乗せられ連れて行かれた娘がいることを知る。
その娘は他の娘達に助けに来たと言っていたらしく、不思議な魔法で娘達は安全に逃げる事が出来たとか。
そしてその娘の特徴が長い銀髪に紫の瞳の美しい人と聞いた時は四人は頭を抱えて唸った。
とりあえず何とか気を取り直した四人は、連れて行かれた娘『サラ』を助けるため詰所を出ようとして、
「売人達の船が見付かったぞ!」
外からそんな声が聞こえすぐさま船がある港に向かった。
港には無惨に焼け落ちた船が一艘。よくこの状態で沈没しなかったと思える程に酷い。
衛兵達の手によって、陸に次々と黒く焼けただれた男の死体が並ぶ。どれも鋭利な刃物で切られた跡があった。
いくら強いサラでもここまで残虐な事はしないと知っている四人は、衛兵に考えたくないが娘の死体があるか確認すると男の死体だけしか無い事を知る。
サラの死体が無い事に安堵するがそれならサラはどこに行ったのかと疑問に思い、そこで売人は娘を売るため船に乗せた事を思い出す。
多分サラは何らかの事情により取引相手に拐われた可能性が高いと判断をし、ジークフリードはその場の衛兵達に追跡の指示を出してから、この港に残っていて捕まった売人達に取引相手の事を聞く為もう一度詰所に戻った。
結果は何も情報を得られなかった。
売人達は誰も取引相手の事を知らなく、ボスから上客とだけ聞かされていたらしい。取引相手と直接会っていたのもボスだけだったので姿を見た者はいなかった。ちなみにボスは身体的特徴から先程の死体の中にいたのは確認済みである。
結局追跡に出した船も特にこれと言った成果が得られず、ここの衛兵だけでは出来る事が限られているため、四人は一旦城に帰って新たに捜索部隊を派遣する事にした。
────捜索隊を派遣してから2日目。
あれから直ぐに馬車を夜通し走らせ、次の日の午後城に着いてからすぐさま四方に捜索部隊を派遣したが、いまだにサラの行方が分から無い。
1つの部屋で四人集り捜索の進展を待っている所だが、焦りと不安であまり睡眠が取れていないらしく四人の顔は憔悴しきっていた。
「くっサラ、君は一体何処に?」
「ジーク、他に何か思い当たる所は無いのか?」
「売人から娘を買いそうな貴族や商人など思い当たる所は徹底的に調べているが全く駄目だった」
「くそっ、無事で居てくれ」
「・・・義姉さん」
「・・・・」
その時扉をノックする音が聞こえ、ジークフリードが中に入るよう促す。
入ってきたのはジークフリード付きの侍従。手には一枚の手紙を持っていた。
ジークフリードは手紙を受け取って侍従を下がらせ、手紙の送り主を確認し眉間に皺を寄せる。
「ジーク?」
「・・・俺の弟からだ」
「あぁ、あの弟か・・・」
「あいつがわざわざ俺に手紙など・・・」
そう言いながら、封蝋をペーパーナイフで外し中に入っていた手紙を読む。
「なっ!何!?」
「どうしたジーク?」
ユリウスはジークフリードから手紙を受け取り、中身を読んで驚愕した。
その二人の様子に何事かとヒューイとアランは近付き、受け取った手紙を二人で読んで絶句した。
「まさかサラはこんな近くに捕らわれていたとは盲点だった!さらに弟が関与してるとは・・・」
そう悔しそうにしながら窓の外の弟の離宮がある方を睨む。
「それもジーク、サラを脅しの材料にして君の王位継承権の破棄を要求してくるとは」
「くっ・・・」
「とりあえず、義姉さんの居場所が分かたんだから早く助けに行かないと!」
「・・・いや待て、まだこの手紙だけでは本当にサラが捕らえられているか分からない。俺の間者に弟の離宮を探らせる」
直ぐにジークフリードは部屋から出て行き、そうして暫くして戻ってきて今間者に探らせているからもう暫く待つようにと。
数刻後、戻ってきた間者から離宮の中の一室に銀髪の女性が居る事が分かった。ただ、離宮の外の警備が厳しくどうやら離宮の回りには侵入者探知の魔法が施されていて、間者でも中に入って女性を近くから確認する事が出来なかった。
「やはり捕らえられているのはサラで間違い無さそうだが、今すぐに助けに行くことは不可能な様だ」
「となるとジーク、サラを助け出せる可能性があるのは・・・」
「手紙で指定されている明日の夜行われる舞踏会でだ」
「私もその舞踏会に参加させてもらうぞ」
「僕も行きますから」
「・・・オレも」
「ああ、皆でサラを助けだそう」
そうして四人はサラ救出のための話し合いを夜遅くまで行った。
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