令嬢から庶民編

序章

「サラスティア、君との婚約を今ここで破棄する!」






私サラスティア・アズベルト 17歳。


腰まで伸びた銀髪と紫色の瞳を持つ、グランディア王国の筆頭貴族アズベルト公爵の令嬢です。


そして、その私に向かって堂々と婚約破棄を宣言してきたのは、


ユリウス・ラ・グランディア殿下 21歳。


サラサラの金髪に碧眼の美青年。


グランディア王国の王太子で私の婚約者である。




今私達が居るのは、国王夫妻も参加している舞踏会場。沢山の王侯貴族がそれぞれにダンスや会話を楽しむ社交の場。そんな場所で殿下が突然私に向かって婚約破棄を言い渡してきたので、周りの人々は一体何事かと怪訝な様子で見てくる。




・・・一体いきなり何を言い出すんだこの男は。




私はそう思い、殿下を見る。


そこで殿下の隣に寄り添う女性が居るのに気付いた。




あれ?なんかこう言う展開どこかで見た事あるような・・・。


そうだ!『断罪イベント』!!


前世の乙女ゲームや漫画等でよく見かける展開だ!




そう、私は前世の記憶を持つ転生者。


前世の記憶を思い出したのは6歳の頃、突然の頭痛と高熱に襲われ意識を失い、3日後に意識を取り戻した時に前世の記憶を思い出したのである。


私は、前世ではゲームや漫画等大好きな独身OL。どうして死んだのかは思い出したく無いのかその辺りの記憶は無かった。




これはどう見ても『断罪イベント』だよな~。


リアルでも本当に起こるんだ~。


なら、私は悪役令嬢ポジションなのか・・・何も悪いことして無いんだけど。


まあ、正直婚約破棄して貰えるのは助かるんだけどね。




実は私の前世はごくごく一般的な日本人だった為、どうにもこの貴族生活が合わなかったのだ。


ただ、筆頭貴族の令嬢に生まれてしまったので仕方がないと思い、一応貴族の礼儀作法、ダンス、教養と記憶を取り戻した時にはすでに王太子の婚約者になっていた事で、王妃教育もみっちり教え込まれた為、今ではどこに出しても恥ずかしくない令嬢に仕上がっている。


だけど、どうしてもこの貴族同士の繋がりや心を隠しての表面上の付き合い方が苦手で、しかも殿下と結婚して王族の仲間入りとなると更に政治的な駆け引きも加わってくる為、正直めんどくさい。


そんな時にこの婚約破棄の発言・・・。




よし!これでとりあえずは王族の仲間入りしなくても良くなりそう!




そう心の中で喜んでいるがこれを表面に出さないように気を付けた。




「・・・理由をお聞かせ願っても宜しいでしょうか?」




無表情に殿下を見据えて発言する。




「理由を聞きたいだと?分からないのか?」




そんな人を軽蔑する様な目で見られても本当に分からないのだが・・・。




「はい・・・。まったく心当たり御座いませんわ」


「・・・・」




私の発言を聞き、ちらりと隣の女性に目を向ける殿下。


女性も殿下を見つめて目を潤ませる。


それを見て殿下は頷き再び私の方を突き刺す眼差しで見てきた。




「サラスティア、君は私とこのマリアンヌ嬢との仲に嫉妬し、影で様々な嫌がらせをしていたそうだな?」


「・・・・」


「その沈黙は認めるんだな?」


「・・・いいえ。まったく身に覚え御座いませんわ」




本当に身に覚えなんて無い。だって・・・このマリアンヌ嬢とはこの時初対面だったから!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る