二人の王太子と私
何でまたこんな状態に・・・。
片方のソファに足を組んで堂々と座っているこの国の王太子。
その向かいのソファにローブを脱ぎ堂々と座る私の国の王太子。
ユリウス殿下の後ろにはこちらもローブを脱いだヒューイとアラン様が立ち、ジークフリード様の後ろには護衛騎士が二人立っている。
ただでさえそんなに広くないリビングなのに、この人数だと圧迫感が凄い・・・。
正直この空間に居たくない気持ちを抑え、二人の王太子に紅茶を持って行く。
「ありがとう」
そう言ってふわりと私に微笑むジークフリード様。
そして、自分の横を手で示し、
「サラ、ここに座って」
「結構です」
「それなら、私の隣に」
「お断りします」
ユリウス殿下が明らかに落ち込んだが知りません!
別の所から椅子を持ってきて、二人からちょっと離れて座ることに。
そんな私の様子を見ていた二人だが、諦めた様で互いに向き直り王太子の顔になった。
「久しいなユリウスよ」
「あぁ、ジークも相変わらずなようで」
二人は笑顔で話し出す。
元々グランディア王国とアルカディア王国は同盟国で、王子同士交流があった。
「・・・それで?君がこの国に来ている報告は受けていないのだが、何故こんな所に居る?それと、どうもサラとは知合いの様だが?」
「そ、それは・・・」
笑顔のままユリウス殿下に斬り込むジークフリード様。ユリウス殿下は笑顔を無くし言い淀んで黙り込む。
まあ、ここに来た経緯の話はユリウス殿下の汚点を曝け出す事になるからな~。
「・・・話せない事なのか?まあ話したくないのなら構わないが、その代わり君の国に不穏な動き有りと見なし同盟関係にも影響が出ることだろう」
「っ!」
「さあ?どうする?」
「・・・・・・分かった、話そう」
ユリウス殿下は辛そうな表情のまま、私に話した内容をジークフリード様に話し出した。
ジークフリード様は殿下の話を最初余裕の笑顔で聞いていたのだが・・・今は全くの無表情で聞いている。
怖!!なんかジークフリード様の背中から黒いオーラが出てる様な気さえするよ。正直この場所から逃げ出したい・・・。
「・・・そうか、話は分かった。それで君はサラに謝罪し終えたのだろ?なら何故まだここに居る?」
「それは・・・サラスティアを我が国に連れ帰る為だ」
「・・・・」
「国に帰れば元の身分に戻れる事も約束してある・・・一応私の婚約者にもなれると・・・」
「・・・ほぉ~なんとも都合が良い話しだな?主に君にとって。でもその話しをしてもサラが今だにここで働いて居ると言う事は、断られたのだろ?」
「くっ!」
殿下は悔しそうにし、手を強く握りしめた。
「サラ、君に直接聞くが、君は国に帰る意志が少しでもあるのかい?」
突然私に話題を振られびっくりしたが、これはハッキリと言った方が良いだろうと思い、椅子から立ち上り王子達の近くに行く。
「ハッキリと申しますが、私はもう国に戻って公爵令嬢になるつもりは全くありません!なので、ユリウス殿下の婚約者にまたなるのも、公爵令嬢としてずっと屋敷で暮らすつもりも全く無いので、外交問題になる前に殿下達は国にお帰り下さい」
「サラスティア・・・」
「そんな・・・義姉さん・・・」
「・・・・」
殿下達三人に悲しそうに見つめられるが、私の気は変わりませんよ!
「だそうだ、君達には国までこちらの護衛をお付けしてお送りしよう」
そう勝ち誇った笑みでソファから立とうとした時、
「・・・分かった、ここは一旦国に戻ろう。ただジーク、一つ聞きたい事があるのだが、君とサラスティアの関係は?」
「あぁ、恋」
「ただの店主とお客様です!」
この男何を言い出すつもりだ!『恋人』と言いそうな雰囲気を察して咄嗟に遮ったけど油断ならん。
ギロリとジークフリード様を睨むが堪えてる様子が無い。
「一国の王太子がこの街外れの喫茶店の客?」
怪訝な表情でジークフリード様を見るユリウス殿下。
「まあ、正確には命の恩人だがな」
「命の恩人?」
「三ヶ月程前だったかな?近隣領主の視察の帰りに侍従の一人が体調を崩し、たまたま近くにあったこの店で休ませて貰ったのだ」
確かにあの時の侍従さんは、凄い顔色悪そうだったから2階の私のベットに寝かしてあげたんだっけ。
「侍従の体調が良くなるまで店で寛がせて貰っている時に、俺を殺しに来た者が居た・・・まあ、俺が手を出す前に全てサラが片付けてくれたんだが」
「あの時はジークフリード様はお客様だったので、お客様を守る為店主として当たり前の事をしただけです」
「だが命の恩人である事は事実だし、その姿を見て俺はサラを気に入ったんだ」
「・・・・」
あれは今でも失敗だったと思ってる。あれからちょくちょく時間を作っては店に来るようになったので、他のお客さんが王太子様が来る時は緊張してしまうらしい。喫茶店は寛ぎの空間なはずなのに・・・。
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