蒼の王太子

パンパンと服に付いた汚れを叩き落とすと・・・




おぉぉぉ!!


パチパチパチ




「さすがサラちゃんだ!」


「相変わらず強いな~」


「今回は見られるなんてついてるぜ!」


「サラちゃん!助けてくれてありがとう!」




そう口々に拍手と共に誉められると照れるから。




「お騒がせしてごめんなさい」




ちょっと照れなが周りを見渡すと、剣の柄に手を乗せたまま呆然とこちらを見て固まるローブの三人組が目に入った。




まあ、そりゃびっくりするでしょうね。公爵令嬢の時はこの力見せた事無かったし。




実はこの世界には魔法が存在する。誰でも使える訳では無いのだが幸い私には魔力が多く有り使うことが出来た。魔法を使う事は前世から憧れだったので自分で本を読み漁り、こっそり魔法の修行をしていた。そして、魔法のコツを掴むとアレンジで大体自分の思い通りの魔法を使えるようになったのである。


魔法も使える様になったので、今度はこっそり義弟の剣の特訓を盗み見て密かに剣の修行を行い今に至る。




私はそんな三人を無視して、床で伸びてる男達を縄で縛る。一応その時に手を切ってしまった男の手に治癒魔法を掛けて治しておく。




「俺、衛兵に連絡してくるよ!」


「すみません、ありがとうございます」




一人のお客さんが衛兵を呼びに外に出ていった。




「・・・しかし、この店に襲いに入るなんてこいつらここら辺の者じゃ無いな」




そう言いながら、ロブさんがロープで縛るのを手伝ってくれる。




「ここら辺のやつらは、サラちゃんの強さを知ってるから絶対にこの店には襲いに来ないのに、こいつら運が悪かったよな」




そう笑顔で向けられて、私は苦笑するしか無かった。




ここで喫茶店を始めてから、ちょっとずつ常連客が増えて来たぐらいの時に、このような盗賊が時々店を襲って来ていたのだ。まあ、全部今みたいに返り討ちにしていたのだけど。


そのお陰か、この店を襲って来る者はほとんど居なくなった為、お客さんが安心して店に来てくれる様になったんだけね。




外が騒がしくなってきたので衛兵が到着したのかと思い、入り口に目をやっていると・・・




バタン


ガランゴロン




凄い勢いで扉が開き、そこから背の高い男の人が駆け込んできた。




げっ!!




「サラ!無事か!?」




そう言って、男の人は私を強く抱き締めてくる。




「は、離してください!私は大丈夫ですから!」




なんとか腕の中から逃れようともがくが、余計に抱き締める力を強められる。




さっきの様に明らかに敵意が有る時は、考えなくても体が動くのだが、こう好意を全面に出されて来られるとどうも反撃しづらい。でも・・・




「いい加減に離して下さい!ジークフリード様!」


「あ・・・」




魔法で自分の周りに空気の層を纏い、腕が緩んだ隙をついてその腕の中から逃れた。


まだ私に手を伸ばそうとして来るが、今度は捕まらないように距離を取る事にした。




ジークフリード・デ・アルカディア 23歳


蒼い髪に金色の瞳の美青年。


この喫茶店を出しているアルカディア王国の第一王子にして王太子。




「とりあえず、私は何とも無いのでこの捕まえた男達を連れてお帰り下さい!」


「しかし、せっかく君に会いに来れたのに・・・」




そうして私を見つめて来たのだが、ふと視線が私の後ろの方に向くと途端に表情が厳しくなる。




「あの怪しい三人組は・・・?」




三人組?あ!そう言えば殿下達の存在忘れてた。


ヤバイ!こんな所に他国の王太子が居るのは説明するのが非常にめんどいから困る。




「え~と・・・ただの旅人ですよ」


「・・・ローブで分かりづらくしているが、只者では無い気配がするのがただの旅人か?それに、俺を睨んできているような・・・・・お前は!」




ジークフリード様はじっとローブの男達を見つめ、一人の男の顔を覗き見てハッと驚く。




あ~バレた・・・。




「・・・ジークフリード様、とりあえずこの捕まえた男達の事からお願いします」


「!・・・そうだな、おいこの男達を連れて行け」


「はっ!」


「あとすまないが客人達、この後色々と事後処理が有るため今日はこのまま帰る様に」




私はあまり大事にはしたく無かったので、ジークフリード様が私の言いたいことを察して、衛兵に男達を連れて行かせ成り行きを見ていたお客さん達に帰る様に指示を出してくれた。




「ならサラちゃんまた明日来るね」


「今日も美味しかったよ。ありがとうね」


「みなさんごめんなさい!ありがとうございました!また明日も待ってます!」




口々に帰りの挨拶をしてお店を出ていくお客さんを頭を下げながら見送り、そして店には私とジークフリード様と殿下達だけが残った。




「・・・とりあえず、今日はこのまま閉店にします」

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