港街ルネサス

太陽が真上に差し掛かる頃に目的の街が見え、少し離れた小高い丘に誰も居ないのを確認して降り立つ。


そして岩影に隠れて、持っていた鞄からスカートを出しズボンから履き替えた。




さて、行きますか!




目的の街に続く街道沿いに出て歩き衛兵の立つ門をくぐる。




街の名前は『ルネサス』。


海に面してる為様々な国の船が行き交う活気溢れる街。


貿易も盛んでこのアルカディア王国貿易の要とも言われている。


他の街ではなかなか手に入らない物もここでは沢山売っているので、色んな所から人が集まり王都に次ぐ栄えた街だ。


ちなみに私の住んでる家からは馬車で1日程かかるので、もしあの四人が追いかけて来ても今日1日は安心である。


私は先ず目的の店に向かうことにした。




「マーサおばさん、こんにちは!」


「あらサラちゃん、こんにちは。どうしたの?今回はちょっと早いわね?」


「ちょっと色々あって、材料が足りなくなったんです」




苦笑しながら答える。


マーサおばさんはちょっと恰幅の良い元気で明るいお母さんみたいな人で、このお菓子の材料も取り扱っている店の店主である。




「なら、今日はどうする?」


「必要な物はいつもので良いんですが、またすぐ無くなってしまいそうなので量は1.5倍程でお願いします」


「あいよ。用意出来たらまたサラちゃんの店に運ぶ様に手配しておけば良いのかい?」


「はい、よろしくお願いします」


「なら金額は・・・これぐらで良いかい?」




マーサおばさんは使い馴れたそろばんみたいな物で、カチャカチャと計算してから金額を提示してきた。




「・・・マーサおばさん、実は新作のお菓子持ってきたんですけど?」


「まあ!サラちゃんの新作お菓子!?」


「はい、ドライフルーツを沢山使ったパウンドケーキです」




そう言って私は鞄から紙に包んでおいたパウンドケーキをマーサおばさんの前に置く。




「まだ店には出して無いんですが、良かったらどうぞ」


「本当に良いのかい?ありがとうね!サラちゃんのお菓子はいつも美味しいから大好きなのよ」


「そう言ってもらえると嬉しいです!」


「・・・ならお礼に、金額少しまけてあげるわ」


「本当ですか?ありがとうございます!」




実はこれが目的でいつもお菓子を持ってきている。ただ、マーサおばさんも分かっているみたいで、いつも値引き前提の金額を提示してきてるみたいだけどね。流石です。まあ、それでも定価の金額よりはいつも安くしてくれてるけどね。




私はお金を払いマーサおばさんの店を出て、次々と目的の店に入って必要な物を買っていった。もちろんお菓子を出すのは忘れていない。




ある程度必要な物を買い終えて、海の見えるレストランでちょっと遅めのランチを取った。




やっぱり海が近いから海鮮が美味しい!




大好物の海鮮料理を堪能しほくほく顔で店を出る。さらに目の前の屋台でアイスが売ってたので買うことに。




このアイスも美味しい!




ニコニコとアイスを食べながら次はどこ行こうかな~と思案していると、




「・・・きゃぁ・・・」




どこからか小さな悲鳴が聞こえた様な気がした。


ちらりと横を見ると細い路地があり、途中の脇道に柄の悪そうな男が入って行く。


私は気になり急いで手元のアイスを食べきり路地に入っていった。




「・・・おい、これで数は足りたか?」


「あぁ、大丈夫だ」




気付かれない様に脇道を覗くと、もう一人男が居て二人で気を失っているらしい女性を袋に積めている所だった。




「おい、大事な商品に傷付けるなよ?」


「分かってる、上客の要望で綺麗な娘を十人用意しろと言われてるからな、傷付けて商品価値下げる様なへまはしないさ」




・・・この男達は人身売人か。この話からすると他にも捕まっている女性が居そうだけど。今ここでこの男達を捕まえる事は出来るけど、ちょっと様子を見て後をつけてみるか。




私はそう思い、足に風の魔法をかけて屋根まで跳躍する。


屋根に乗り、男達が移動するのを上から確認し静かに後を追った。






────港の倉庫前の屋根の上。




男達はこの倉庫に拐った女性を連れて入っていった。




さて、どうしたものか・・・。




このまま突入しても良いが、他の女性も全員ここに捕まっている保証も無いし、騒ぎを大きくして捕まっている女性達に危害が加えられるのも問題だ。




そう思案にくれていると倉庫から一人の男が出てきた。




「くっそ、急に後一人追加で欲しいとか言いやがって、捕まえてくるこっちの身にもなれってんだ」




ぶつぶつ文句を言いながら男は街の方に向かって行く。




・・・後一人追加・・・。




そこで私はある事を思い付き、男の後を先回りする様に追った。

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