騎士の誓い

あの後、しつこく指導を!と言ってきた四人をユリウス殿下とジークフリード様がなんとか抑えてくれて、また全員で会議室に戻り魔族戦の協議を再開した。


そこでの話し合いで、飛行系魔族は私が空中で魔法や剣で叩き落としていくので、他の方々は落ちてきた魔族と戦うと言う作戦になった。


ただ取り溢す可能性もあるので、念のため避難所の城には私が取り囲む様に防護壁を張っておくと伝えると、また魔法師団長の二人にそんな事が!と驚かれたけど無視する事に。一応王都全体にも張ろうと思えば出来そうだけど、どうしても大きくなる分どこかで綻びが出てくる可能性もあったので城に限定する事にした。


その後色々細かい事を話し合って決め、連日連夜続いていた協議は漸く終わる事が出来たのである。


ちなみに協議後シグルド国王様に呼び出され、ユリウス殿下の婚約破棄の件の謝罪を受けた後、身分剥奪と国外追放を取り消すのでもう一度殿下の婚約者になって欲しいと言われた。




ここでもかーーーー!!




私はキッパリとお断りしたが、あの表情は諦めて無さそうだった・・・。






────協議終了3日後。




私は城のある所に向かって歩いている。そして横にはアラン様が一緒に歩いていた。ユリウス殿下に付いていなくて良いのだろうか?と疑問に思うが離れるつもりは無いようだ。


そう言えば最近気になる事がある。城の中で他の令嬢とすれ違う事が多いのだが何故かみんなアラン様では無く私の姿を見てキャッと言いながら頬を染めてしまう。




・・・私の格好何か変なのかな?




私は自分の格好を見下ろした。


今着ている物は私用に作って貰った白い騎士の服。魔族がいつ襲ってきても戦いに行けるよう常にこの服を着て帯刀している。


髪も下ろしておくと邪魔なのでポニーテールにしてある。


まあパッと見は男装の麗人ぽいとは自分でも思ってるけど・・・どこの世界でも男装の麗人にはときめく女子がいる様だ。


そんな事を考えながら、騎士の訓練所を見下ろせる廊下を歩いているとそこから男達の掛声が聞こえてくる。


ちらりと声が聞こえた方を見ると、沢山の騎士たちが一斉に剣を降って訓練している所が見えた。指導しているのは総騎士師団長と軍総督。どうやら合同訓練をしている様だ。ただ、時々あの二人が、まだまだこんなものではあの方の足元にも及ばんぞ!と言う怒声が聞こえるのだが・・・。




『あの方』って・・・。




騎士達も何の事か分からないだろうに、上官の怒声に真剣に訓練を続けている。




・・・頑張って下さい。






私は目的の部屋の前に立ち静かに扉を開いた。




「皆さんお加減はどうですか?」




ここは民の為に開放されている救護室。ベットがいくつも並んで置いてありそれぞれに包帯を巻いた人が横になっている。先の魔族の襲撃で怪我をした人がここに運ばれているのだ。


私は一人一人容態を見て回り、時には治癒魔法で痛みを取ってあげていた。


私の治癒魔法は強力だが万能では無い。大抵の傷や痛みは治せるが、失った体の一部の再生や病はどうしても治せない。ましてや亡くなった人を生き返らせる事など到底無理なのである。


私はせめて少しでも心が休まればと連日見舞いに訪れては笑顔で話を聞いて回っているのだ。






私は見舞いを終えた後中庭に出て溜息を吐く。勿論後ろにはアラン様が無言で立っている。




「結局魔力が沢山有っても私の力は無力だな・・・」


「・・・そんな事は無い・・・貴女のお陰で・・・みんな最初に比べると・・・明るくなった」


「アラン様・・・」


「・・・みんな貴女の笑顔に・・・救われている」


「そう言ってもらえると嬉しいです」




私がニコリとアラン様を見て微笑むと、アラン様はじっと真剣に見つめてきてそして私の前に回り込み口を開いた。




「・・・オレは・・・貴女が好きです!」


「ア、アラン様!」


「・・・オレに・・・一生貴女を守らせて欲しい」




突然のアラン様の告白に驚き戸惑う。薄々は気持ちに気が付いてはいたけど、アラン様がこんなハッキリと告白してくるとは思って無かった。




私は・・・私の気持ちは・・・。




真剣なアラン様に対していい加減な返事をしてはいけないと、必死に自分の気持ちを考える。その時、フッと蒼い髪色をした人の頬笑みが頭に浮かび私は慌てて頭を降ってそれを打ち消した。




なんでこんな時にあの人の顔が!?




疑問に思うが自分でもよく分からなかったので、その考えを一旦忘れる事にする。そして、私の中にあるアラン様への気持ちを確認し私も真剣に見つめ返す。




「アラン様・・・そのお気持ち凄く嬉しいです。でも、私にとって昔からアラン様はいつも私を守ってくれる頼れる兄の様な存在でした。告白してくれた今もその気持ちが変わることは無かったです・・・だからその気持ちは受け取れません。ごめんなさい」


「・・・分かった・・・返事をくれて・・・ありがとう」


「アラン様・・・」




アラン様は私の答えに少し悲しそうな表情を浮かべたので胸が痛くなる。




「・・・しかし・・・これだけは・・・させて欲しい」




アラン様はその場で片膝をつき、鞘から剣を抜いて両手を添え顔の前で掲げ持った。それは騎士の誓いを捧げる時の格好。


アラン様は深く深呼吸をしてからこう言った。




「私アラン・ロズウェルはサラスティア・アズベルトに忠誠を誓う!」


「アラン様!」


「・・・オレは・・・ユリウス殿下と・・・貴女だけの騎士だ」




そう言って剣を鞘に納め立ち上り優しく微笑んできたのだった

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