魔族襲来
その時は突然やって来た。
カンカンカンカン・・・
王都中に鳴り響く警鐘により魔族の襲撃を知るのだった。
────王都の城壁外に広がる平原地帯の上空。
私は空中に浮きながら魔族が向かって来ているのを目で確認する。
やはり予想した通り、地上の魔族より飛行系魔族の数が圧倒的に多かった。
私はちらりと城に目をやる。城には魔族襲撃の知らせにより、まだ避難していなかった残りの人々が避難し終えていた。勿論その中には私のお母様や使用人達も。さらに国のトップが落とされると困るので国王夫妻も城に残ってもらっている。ちなみに、騎士ではない宰相のお父様とヒューイも城で待機中。最初ヒューイも前線に行くと言い出したが、騎士では無く足を引っ張る恐れがあるとお父様に諭され渋々納得した。
城には守りたい人々が沢山居る・・・そしてこの下にも。
地上には沢山の両国の軍隊が平原地帯に整列して魔族との戦闘に備えている。その先頭には総騎士師団長、軍総督、アラン様、ユリウス殿下、ジークフリード様。
私はゆっくりと守りたい人々を見回し、そしてジークフリード様を見て視線を外せなくなった。
その視線に気が付いたのか、ジークフリード様が私を見上げてきて一瞬視線が交わる。
私は急いで視線を外し前を向く。顔が凄く熱いが気のせいだと言い聞かせて気を取り直し魔族達を見た。
もう倒す事に躊躇しない!絶対守ってみせる!
そう心に誓い、じっと魔族達を観察する。
魔族達は様々な姿をしている。醜い魔物の様な姿から人間に近い姿の者まで。しかしそんなに違うのに一つだけ共通点がある。それは深紅の瞳。人間には絶対いないその瞳の色が凄く印象的である。
私は魔族の事を知るため城に滞在してる間、図書館に通い魔族についての文献を読み漁った。
そこで分かった事は魔族にも階級があり、下級魔族、中級魔族、上級魔族、最上級魔族がある。ただ、人間貴族の階級とは違い力によってその階級に分けられる様だ。さらに魔族の力は見た目にも現れ、より人間に近い者ほど魔力が高く力が強い。なので、ユリウス殿下の話から聞いたマリアンヌ嬢は多分中級魔族で、アルカディア王国に居た黒装束の首領は、焼けただれてはいたけど人間の姿に近かったので多分上級魔族だったと思われる。
私は更に飛行系魔族の特徴も調べた。飛行系魔族は私の様に魔力で飛んでいる訳ではなく、背中には必ず蝙蝠の様な羽や鳥の様な翼が生えておりその羽で飛んでいる。これも階級が上がるにつれて大きさが変わる様だ。
しかしこれは逆に羽さえなんとかすれば、飛行系魔族は飛ぶことが出来ないので地上に落とすことが出来る。
私は極力羽を狙って攻撃する事にした。そしてもう一度魔族達を見回す。
下級魔族6割、中級魔族3割、上級魔族1割て言うところかな?
まあ、下級魔族と中級魔族はそのまま下に落としても問題無いだろうから、上級魔族はなるべく私が相手をする事にしよう。
そう思いもう目の前まで迫ってきた魔族と戦う為、腰の剣を鞘から抜き構える。
ちらりと下を見るとみんなも抜刀して戦う構えを取っていた。
「出撃!」
総大将のユリウス殿下の掛声と共に軍隊は一斉に雄叫びを上げ地上の魔族に向かって行った。
では私も!
私は速度を上げて飛行系魔族達の中心に飛び込み、バッと左手を上げその手から大量の雷を辺りに撒き散らす。
ある程度の数の下級魔族が雷に当たってその衝撃で下に落ちていく。さすがに中級魔族になると当たっただけではやられないが、だいぶ弱っていたので素早く背中に回り込み羽を剣で切り落とし地上に落としていく。上級魔族はと言うと自分の回りに魔力で障壁を作って雷を防いでいた。やはり一筋縄ではいかない様だ。
とりあえず先に下級魔族と中級魔族から減らして行くことにして、上級魔族達からの攻撃を交わしつつ魔法と剣でどんどん下に落として行った。
戦いながら下を見ると、地上にも上級魔族がいるがそれには腕の立つ者が複数がかりで戦っている。
一応弱らせて落とした魔族達は地上の騎士達に簡単に倒されているのが見えた。とりあえず上手くいってる様でホッとする。
地上の方は特に問題無いと判断した私は、最初の頃よりもだいぶ減ってきた飛行系魔族達に更なる攻撃を仕掛けるべく、更に速度を上げて次々と背中の羽を落としていった。さすがの上級魔族達も私の速度についていけないようで、私は魔法で反撃を食らう前に羽を切り落とし、落ちて行く所を追い討ちで業火の魔法を叩き込んでおく。
粗方飛行系魔族を叩き落とし、地上でも騎士達がだいぶ魔族を倒している事で人間側の優勢が確定しようとしていた。
その時・・・猛烈な勢いで私の横を通り抜ける物が!
しまった!!
振り返ると巨大な闇の塊が城に向かって飛んで行ったのだ。
しかし、城に激突する寸前に城を囲っていた透明な防護壁に弾かれ近くの山に激突しその山は吹き飛んで跡形も無くなってしまた。
その光景を見て、もし私の張った防護壁が無かったらと思うとゾッとする。
「ほお、我の魔法を防ぐ事が出来るとは」
その声を聞いた途端私は思わず背筋がゾクリとして少し体が震えた。振り返らなくても分かる。この声の主は強い。上級魔族ですら比較にならないぐらいの強さだと後ろから漂ってくる気配で察する。
私はゆっくりと振り返った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます