作戦会議

────王城の会議室。




ここで連日連夜魔族戦に対しての協議が行われている。


部屋に居るのは、グランディア王国のシグルド国王、ユリウス王太子、同盟国でアルカディア王国のジークフリード王太子、筆頭貴族にして宰相のアズベルト公爵、次期公爵家当主にして宰相候補のヒューイ、ユリウス殿下付き近衛騎士隊長のアラン、グランディア王国の総騎士師団長、アルカディア王国の軍総督、両国其々の魔法師団長。




「さて、とりあえず今までの話を纏める。次に魔族が攻めてきた場合、恐らく先の襲撃とは比べ物にならない程の数が攻めて来ると予想される。これは全員が同じ考えで良いだろうか?」




ユリウスが問うと皆頷く。




「なら魔族が襲撃してきた時は、まだ城に避難して来ていない人々の避難をまず優先させる。そして、避難させ終わった後本格的に魔族との戦いになるのだが、兵の数はジークフリード王子の援軍も合わさって多少多くなり地上の魔族と応戦出来る程だろう」


「今、更に援軍を俺の国に要請してあるからもう少し増えるだろう」


「ジークありがとう。まあ、これで地上の魔族に対しては対策が一応取れてるのだが・・・問題は飛行系の魔族の方だ」


「先の魔族襲撃の時もこの飛行系の魔族にだいぶ手を焼きました。なので今度の襲撃はこれを踏まえて飛行系の魔族を増やしてくる可能性が高いです」


「私達魔法師団も魔法で飛行系の魔族と戦ったのですが、地上からだとどうしても射程距離が決まっているため、なかなか当てる事が難しいのが現状でした」




グランディア王国の総騎士師団長と魔法師団長がそれぞれ魔族との戦いを振り返る。




「結局それが今最大の問題だな。魔法で届かない高さだと弓も届かないからな・・・」




そして其々が唸って考え込む。


連日連夜協議が長引いているのはこの問題の解決策が全く見付からないからだ。




「・・・空を飛べる魔法があったらな・・・」




ポツリと誰かが言った。そんな夢物語に出てくる魔法に頼りたいほど皆切羽詰まっていたのだ。




バン!




「空を飛べる魔法なら使えるわよ!」




突然扉が開き、サラが部屋に飛び込んで叫んだ。






────王城の会議室前。




サラは扉の前に立つ警護兵に名を告げ部屋にノックをして入ろうとしていた。


しかし、中からとても緊迫した話し合いが聞こえてくるのでなかなか入るに入れなかった。


話の内容から、飛行系魔族に対しての戦い方が決まらず悩んでいる様だ。




私だったら空を飛べるから戦えるんだけどな~。




「・・・空を飛べる魔法があったらな・・・」




バン!




「空を飛べる魔法なら使えるわよ!」




思わずノックも忘れて飛び込んで叫んでしまった。






私は叫んだ後、自分で言った発言に後悔している。




しまった!飛べることは秘密にしておくつもりだったのに、丁度私の考えていた空を飛べる魔法の事が聞こえて何も考えずに言ってしまった!・・・聞こえて無かった事にならないよね?




周りを見ると突然居るはずの無い人が入ってきた事で、みんな驚き固まっている。


ヒューイは額に手を置き、大人しくしてろと言ったのに・・・と言う呟きが聞こえてきたけど聞こえなかった振りをする事に。


私はコホンと咳払いをしてから、身を正しドレスのスカート部分を両手で軽く摘まみ頭を少し下げて淑女の礼を取る。




「ノックも無しに突然入りましたこと大変失礼致しました」


「サラスティア!」


「・・・お父様、お久しぶりです。お元気そうでなによりです。この度は大変ご心配お掛けして申し訳ありませんでした」


「いや良い、お前の人生だもうお前の好きにするが良い」


「お父様・・・」




あの厳しかったお父様がこんなに優しくなるなんて・・・相当心配かけてしまったみたいだ。




「・・・それでサラスティア、先ほどの空が飛べる魔法とは?」




ですよね~。やっぱり聞こえていたよね・・・。仕方がないもう腹を括るか!




「・・・とりあえず私の自由にして良いと許可を得たので、堅苦しいしゃべり方はまず止めます。そして先ほどの発言の通り私空が飛べる魔法が使えます!」


「そんな馬鹿な!どの書物にも飛行系魔法は載っていなかったし、魔法省も長年に渡って研究してきているけど成果が出なかったんですよ?」


「我アルカディア王国の魔法省も一緒です」




其々の魔法師団長が口々にあり得ないと言う。周りを見ると他の人も半信半疑の表情でこちらを見ていた。




「そんなに信じられないなら一度見せますよ」






────城の裏手の少し開けた場所。




今ここに先ほど会議室に居た全員が集まっている。


何故ここにしたかと言うと人目が少ない場所だったから。


ちなみに、今私の格好はドレスから騎士の服装に変わっている。


さすがにドレスのまま飛びたく無かったので、とりあえずすぐ手に入る騎士の服を着ることにした。まあ、私が一度着てみたかったのが本音だが。


しかしそこで総騎士師団長がブツブツと女性が男の服を着るなど・・・と言ってきたので、ならそのままドレスで飛んで下から覗く男性など・・・と言ってやって黙らせておいた。


この騎士の服は比較的小柄な人用のを借りたのだが、それでもぶかぶかだったので裾や袖を折り曲げてなんとか着る。




うん、戦い迄に私用の騎士服作ってもらおう!




「では、とりあえず見てて下さい」




私は目を閉じ意識を集中させて体全体に風を纏うイメージを持って風の魔法を使った。


その瞬間体が地面からゆっくりと浮く。


それを見ていた周りの人々がざわつくきだす。


私は目を開け空を見上げて一気に浮上し、ある程度の高さになってから下を見下ろした。


地上に居る人々は私をポカンと見上げている。




とりあえず城を一周して戻るかな。




私はそう思い、風を切るようにくるりと城を一周したのだった

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