魔法と剣

私はゆっくりと地面に降り立った。


周りを見ると皆信じられない物でも見た様に驚愕の表情のまま固まってしまっている。




「え~と、こんな感じなんですが?」




私が声を掛けると、その拘束からいち早く抜け出したグランディア王国の魔法師団長が、是非教えて欲しいと目をキラキラさせて言ってきたので仕方がなく飛ぶコツを教えてあげた。




・・・結果、浮くことは出来た・・・1㎝程。


そして、今その師団長は地面に体を横たえぐったりしている。


私はいつもなんとも思わずに使っていたのだが、どうやらこの魔法は相当な魔力を使うらしく、魔法師団でもトップクラスの魔力量を誇る師団長でこの有り様・・・。




「・・・と、飛ぶのは厳しそうなんで、でしたら跳躍の魔法だったら簡単だしどうでしょう?跳躍して魔族に近付き魔法を放つとか良いかも」




そう言って私は一度見本を見せるべく足に風の魔法を掛け、一気に城の3階にあるベランダまで跳躍した。


地面に戻ってきた私に、今度はアルカディア王国の魔法師団長に教えて欲しいと頼まれコツを教えてあげる。




・・・結果、飛ぶ魔法よりは高く跳躍出来た。私の頭の上ぐらいまでは。


そして、もう一人地面に横たわりぐったりしている人が増えたのだった。




あれ?私全然疲れないんだけど・・・私の魔力量どうなってるんだ!?




ユリウス殿下はそんな二人を見てから私を見た。




「・・・これでは実戦には使えないな。サラ、君はあんなに飛んで疲れないのか?」


「全然、だって今日アルカディア王国からグランディア王国までこの飛行魔法で飛んで来たけど平気だったから」


「・・・・」




私のこの言葉に全員が絶句。




「だからあの時、厳重な城の警備の中から出られたのか・・・」




ジークフリード様が合点がいった表情でポツリと呟いていた。






「う~んこれじゃあ、飛行系の魔族の相手は私しか出来無さそうね」


「ちょっと待て!戦いに参加するつもりか?いくら魔力があっても女性が魔族相手に戦える訳が無いだろう!」


「・・・・」


「それは私も同意見だ。戦いに行くのは男の役目で女性は大人しく守られているべきだ!」




そう私に意見してきたのは、最初騎士の服を着る事に難色を示してきた総騎士師団長と軍総督だった。


総騎士師団長は分かるが、この様子だと軍総督は前のアルカディアお家騒動の時の舞踏会場での戦いの時いなかった様だ。


私はじっと物言いたげな視線をユリウス殿下とジークフリード様に送る。この脳筋馬鹿共をどうにかしろと。




「師団長、何だったらサラと一度剣だけで手合わせしてみれば良い」


「そうだな、総督も一緒にやらせてもらえ」


「なっ殿下!女性と手合わせなど出来ません」


「そうですとも!相手はあの様な華奢な女性、怪我をさせてしまいます!」


「良いからとりあえずやってみろ」


「総督もだ」


「「御意・・・」」


「サラ、すまないが相手してやってくれるか?こう言う男達は実力を見せないと納得しないんだ」


「・・・・」




そりゃ殿下達は私の実力知っているから良いけど、こう言う脳筋馬鹿共相手にすると後々面倒そうなんだが・・・。


私はただ殿下達に説得して欲しかっただけなのに・・・何故こうなる。




「はぁ~分かりました。でも一人一人相手にするの面倒なので二人同時でお願いします」


「「なっ!」」




小娘に馬鹿にされたと思い、二人とも顔を真っ赤にさせてこちらを睨んできた。






さすがに真剣での勝負は出来ないので、練習用の刃が潰してある切れない剣を使っての手合わせに。




「いくらアルベルト公爵様のご令嬢であっても手加減しないからな!」


「一度大人の男の恐ろしさを知ると良い!」




すっかり憤慨している二人はギラギラした目で私を睨み付けてくる。




まあ、本気出して貰わないと後で納得してくれないから良いんだけどね。




「いつでもどうぞ」


「くっ、馬鹿にしおって!後悔しても知らんからな!」




そう言って総騎士師団長が素早く踏み込み間合いを詰め、腹に一撃を食らわせようと剣を薙ぎ払う。しかしサラはその一撃を持っていた剣で素早く受け止めた。


そしてサラはそのまま剣を打ち返し後ろに飛んで間合いを開けたと思わせて、着地と同時にまた素早く間合いを詰め剣を降り下ろした。それを辛くも師団長は受け暫く激しい剣の打ち合いが続く。段々焦りの色が濃くなる師団長に対して余裕の表情のサラ。


そこに総督が横から剣を振り被ってきた。サラは素早く足元を蹴って飛び上がり一回転して後ろに飛びし退る。


突然目の前から居なくなり空を切ってよろけた隙を見逃さず、サラは総督の後ろに回り込み脚に一撃を加えた。痛みで膝を突いた総督の手から剣を叩き落とし喉元に剣先を向ける。


後ろから師団長が剣を降り上げてきたので、足で落ちてた剣を蹴り上げ空いてる方の手で受け止めさっと師団長の喉元にも剣先を向けて師団長の動きを止めた。




「そこまで!」




ユリウス殿下の声が響き私は剣を下ろした。


二人を見ると、座り込み項垂れて意気消沈している。




・・・ちょっとやり過ぎたかな?




そう思っていると二人ともガバッと顔を勢いよく上げ私を真剣に見つめ、




「サラスティア殿!私共々我部隊の剣のご指導お願い出来ないでしょうか!!」


「サラスティア様!私も含め我軍隊の方もご指導お願いします!!」




げっ!!やっぱり脳筋馬鹿と関わると面倒な事になった!




「「サラスティア様!我々の魔法師団の方もお願いします!」」




起き上がれる様になった両国の魔法師団長二人も声を揃えて言ってくる。




魔法馬鹿お前たちもかーーー!!




予想通りの面倒事に頭を抱えて唸るしか無かった。

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