魔族襲来編
嵐の前の平和な日々
あのお家騒動が無事終わり、今はまたいつもの平和な生活を取り戻している。
城から逃げ出した私は、自分の店に戻り1日ゆっくり休んでから直ぐに店を開いた。予定よりも長く店を休んでしまった事でお客さんに随分心配をかけてしまっていたらしい。
朝一番に店の様子を見に来てくれたロブさんが私の姿を見てホッとしていた。
どうやら心配して毎朝見に来てくれていた様だ。ちなみに、ルネサスの街で買った材料は配達に来た人からロブさんが代わりに受け取っておいてくれたそうだ。本当にありがとうございます。
「しかし、サラちゃん今回のお休み結構長かったけど何かあったの?」
「・・・あ~隣街に行った時に体調を崩して、暫くその街で療養してたんです」
「そうなんだ、もう大丈夫?」
「はい!もう元気一杯です!」
いつものカウンターに座り心配そうに見てきたロブさんに元気だと見せる様に両腕を上げる。
・・・さすがに誘拐されて、国家のお家騒動に巻き込まれていたとは言えないから。
暫くして続々と常連客の人達がお店を訪れ、またいつもの様な日々に戻る。
忙しい時間が過ぎ、お客さんが丁度途切れたこの間に明日のお菓子の仕込みでも始めようとしていた時、
バタン
ガランゴロン
あ、なんか既視感が・・・。
「「サラ!」」
「義姉さん!」
「・・・無事?」
やっぱり・・・。
これもまたいつも通りの生活だと思う事にして諦める様に溜め息をついた。
ジークフリード様の話では、あの後突然部屋から姿を消した私がまた拐われたのではと城中大騒ぎになったらしいけど、アンナさんの証言で帰ったらしいと言うことで落ち着いた。でも警備兵の人達は気が付かなかった事に少し落ち込んでいたらしい・・・。
しかし私の姿を見ないと落ち着かなかったこの四人は直ぐに店に来たのだ。
「サラ、君の無事な姿を見れて安心した」
そう言って、私の右手を取って見つめてくるユリウス殿下。
すると横からその手を奪い取るヒューイ。
「義姉さんは僕が目を離すと直ぐ何処かに行ってしまう・・・やっぱり何処かに閉じ込めて・・・」
最後の方は小声で言ってたけど、聞こえてますから!ちょっとヒューイ怖いよ!
不意に左手を握られる感触がしてそちらを見るとアラン様が優しく握ってきていた。
「・・・凄く心配した」
真剣な表情でそう言われたので、相当心配させてしまったと思い申し訳ない気持ちになる。
すると後ろから腰に両腕が回されぐいっと後ろに引っ張られ、捕まれていた手がそれぞれ離れた。
そして私はジークフリード様に抱き抱えられる様に腕の中にスッポリと収まる。
「ジ、ジークフリード様!?」
背中から伝わるってくる熱に心臓が早鐘を打つ。
以前に抱きしめられた時は何とも無かったのに・・・一体私はどうしたんだろう?
自分の気持ちの変化についていけず戸惑っていた。
「父上に必ず君を俺の婚約者にすると約束してきたから、もうこれからは遠慮しないでいくことにした」
「なっ!?」
「だからサラ、早く俺のものになって?」
そう言って私の頭の上にキスを落とす。
私はその瞬間顔が真っ赤に染まる。
「ジーク!いい加減離れろ!」
「義姉さんを離せ!」
「・・・!!」
私はこれから以前の様な平和な生活に戻れるのかどうか一抹の不安を覚えたのだった。
─────あれから数日が経った。
今日も相変わらず四人は私の店に来て騒いでいる。
ただ、以前と違うのは私へのスキンシップが多くなった事だ。
事ある毎に私の手を取ってきたり髪に触れてきたり、時には抱き寄せて来ることも。
さすがに店には他のお客さんも居るから、とても恥ずかしいし迷惑なので止めて頂きたい・・・。
カランコロン
「いらっしゃいませ・・・?」
入口から入ってきたのは一人の兵士。誰かを探す様にキョロキョロ辺りを見渡しジークフリード様を見付けて駆け寄る。
「ジークフリード殿下!大変です!これを」
そう言って兵士は一枚の書簡を手渡す。
ジークフリード様はその書簡に目を通しそして驚愕する。
「ユリウス、今すぐ城に戻るぞ!ヒューイ殿もアラン殿も一緒に」
「・・・ジーク一体何があったんだ?」
ジークフリード様はちらりと私を見て悩んだ後こう言った。
「・・・グランディア王国の王都が魔族の襲撃を受けたらしい」
「「「「!?」」」」
「これから城でその対策会議が行われる。サラすまないが今日はこれで失礼する。ユリウス行くぞ」
「あぁ、分かった」
そしてジークフリード様達は険しい表情で店から出ていった。
グランディア王国の王都が魔族に襲撃された?
街の人は?お父様やお母様や使用人のみんなは?
その日は不安一杯で全く仕事にならなかったので早めに店を閉めさせてもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます