あの時の男達2
────舞踏会場内。
ジークフリード達四人は険しい表情でじっと入口を見つめ、目的の人物が現れるのをひたすら待った。
そして暫くして入口が開き、漸く目的の二人組が入場してくる。
二人組が入場すると周りの貴族達がざわめき立つ。
一人は白い正装姿のクロード。もう一人は彼の腕に手を置き淑やかに歩く美しく着飾ったサラ。
周りの男貴族達はそのサラの姿に惚けた表情をし、女貴族達は羨望の眼差しを向ける。
当然四人もあまりの美しさに見惚れていた。
二人は何事か囁き合いそして中央に移動しダンスを始める。
パートナーとのファーストダンスだ。
クロードは勿論だが、サラのダンスの腕前は相当の物だった。
周りの貴族達はそんな二人に目が離せないでいる。
「相変わらずサラのダンスは素晴らしい」
「・・・そうかユリウス、君も『元婚約者』だからサラとダンスを踊った事があるのか」
「元婚約者・・・あ、ああ、サラのダンスの腕前は国一番と言われた程だったからな」
「僕も義姉さんのダンスの練習で、何度か一緒に踊った事があるよ」
「・・・オレも」
「くっ、踊って無いのは俺だけか」
そんな話をしていると、いつの間にかダンスが終わったらしく二人は中央から離れていった。
そしてサラが誰かを探す様にしているのに気が付き、ジークフリードは一人で二人の元に向かった。
一人で向かったのは、この国の王太子としてそしてクロードの兄としてまず自分で話し何とかするべきだと思い、昨日のユリウス達との話し合いで決めていた。
「サラ!」
「ジークフリード様・・・」
サラはジークフリードをじっと見つめて固まり、少し頬が染まっている様だったが直ぐに気を取り直した様でジークフリードの元に近付こうとした。だが、クロードが後ろからサラの腰に手を回し自分の所に引き寄せる。そして髪を一房すくってそこにキスを落とした。
ジークフリードは激しく嫉妬しクロードを睨み付ける。
────その後サラを脅しの材料にし、ジークフリードに王位継承権破棄を宣言させようとして、突然サラがクロードの不正を証拠品と共に暴露。そして捕縛されそうになったクロードが狂気の暴走を始めた。
黒装束の男達の出現により会場中で悲鳴が上がる。
クロードが狂気の笑顔でサラに手を伸ばしている事に気付いたジークフリードは、サラを守る様に間に入り兵から渡されていた剣を鞘から抜き構える。
その様子を見ていた他の三人もすぐさま近付きサラを守るように横に立った。
ジークフリードがクロードと対峙していると、突然サラはドレスを翻し綺麗な脚を曝け出して脚に着けていた短剣を引き抜き剣と剣がぶつかり合う音が響く。
サラの後ろからクロードの近のにいた黒装束の男が襲い掛かっていたのだ。
黒装束の男はサラから距離を取って離れたので、ユリウスが短剣の事をサラに聞く。
サラは何でも無い様に脚に着けていたとさらっと言ったのだが、三人の男達はその綺麗な脚を間近で見たため顔が赤い。
ちなみにサラに後ろを向け、クロードと対峙しているジークフリードの顔もほんのり赤い。ちゃっかり見ていたのだ。
サラは黒装束の首領と思われる男と戦う為、距離を取っていた男の元に自ら向かう。
三人の男達は焦ってサラの元に向かおうとするが、襲ってきていた他の黒装束の男達に行く手を阻まれ近付くことが出来ない。
ジークフリードも、襲いかかってきたクロードに剣で応戦する事で手一杯。
男達はサラの事は心配だったが、サラを助けに行くためにはまず目の前の敵を片付けなければいけないと思い、自分に相対する敵にそれぞれ立ち向かっていった。
ジークフリードはクロードとの激しい剣の打ち合いの末、クロードの腕を切りつけ剣を落とさせ膝をつかせる。そして喉元に剣先を突きつけた。
「駄目ーーーー!!」
突然サラの叫び声が上がり、ジークフリードの後ろで何かが激しく燃え盛った。
そこには業火に焼かれる黒装束の首領の姿が。
すぐさま近くに来たサラが魔法で大量の水を出し消化したが、もう男の命は消えている様でサラが酷く落ち込む。
しかし、突如男の体が変化しだしあっという間に焼けただれた魔族の姿になって立ち上がり、去り際にサラに対して恨み言を言い残し逃げていった。
漸く事態が収まりクロードやその他不正に関わっていた者達などが捕らえられ、そしてそれぞれの処罰が決まったのだった。
これでサラの誘拐から始まったアルカディア王国のお家騒動は幕を閉じた。
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