仮面の男の正体
私は男に促され向かい合わせの長椅子に座ると、男も向かいの長椅子に座った。
「さて、お前の名は?」
「・・・人に名前を尋ねる場合はまず自分から名乗るのが礼儀じゃ無いんですか?」
「ふむ、まあ良いだろう。私の事を知っていつまでその態度でいられるか見物だな」
「どう言うこと?」
私は怪訝な表情で男を見る。
「私の名は・・・クロード。クロード・デ・アルカディアだ」
「ア、アルカディア?」
「そう、この国の『一応』第二王子だ」
「では、ジークフリード様の弟?」
「・・・そうだ」
ジークフリード様の名前を出すと少し嫌な顔をする。どうやら兄の事はあまり好きでは無い様子。一応とも言ってたので、第二王子であることにも不満を持っている様だ。
そうか!ずっと誰かに似ていると思ってたけど、ジークフリード様に似ていたんだ!確かに言われて見れば、金色の瞳はそっくり。
しかし、ジークフリード様は暖かい太陽の様な明るい雰囲気の方なのに、クロード王子は対照的に冷たい月の様な鋭利な雰囲気。
兄弟なのにここまで対照的とは・・・。
「さあ、私は名乗ったのだが?」
「・・・サラです」
「家名は名乗らないのか?」
「私は貴族では無くただの庶民ですので家名はありません」
「・・・言葉使いは別として、立ち振舞いがただの庶民には見えないが?」
「・・・どう言われようと庶民です」
「まあ良い、今はそう言う事にしておいてやろう」
全く私の言葉を信用していない発言だった。
「ちなみにここはどこなの?」
「私の離宮だ」
「離宮・・・」
確かに置いてある家具や調度品は公爵邸にあった物より高級そうである。
「しかしサラ、お前は本当に面白いな。私が王子であると言ったのにまるで態度を変えない。まあ身分を知って媚びてくる女は嫌だがな」
・・・私の周りに高貴な人達が居すぎて感覚が麻痺しちゃってるからだろうな~。しかし、あの四人今頃あの街で必死に私の事探してそうだな。
「今更変えるのもどうかと思うし、この方が話しやすいので」
「成る程、変わった娘だ」
クロード王子は楽しそうに目を細めて見てくる。
・・・そんなに私の何が面白いんだか。
「そう言えば、本来娘達を買ってどうするつもりだったの?後宮に入れるにしても身分が・・・」
「あぁ、大臣や貴族達への賄賂用だ」
さらっと凄い事を聞いてしまった。やっぱり女を物と見ている発言だ・・・。
「では逆に聞くが、あの娘達を逃がしたのはお前だな?」
「!・・・な、なんの事だか?」
「とぼけても無駄だ。どうやったかは分からんがあの時のお前の態度で誰がやったかは明白だ」
「・・・・」
「黙秘か、まあ良い。どうせあの男達はそろそろ用済みだったし、タダで面白い掘り出し物も手に入ったから正直他の娘達などどうでも良いからな」
「用済みって・・・」
あの血生臭い惨状を思い出す。
そう言えばあの時居た黒装束の男の格好、確か前ジークフリード様を襲ってきた男と一緒だ!
「あの男達は最近調子に乗ってどんどん値を上げ始めてきていたからな。それに娘に逃げられたのなら、そのうち衛兵に捕まるのも時間の問題だったから、私への繋りを消すために処分したまでだ」
「酷い、人の命を何だと思って・・・はっ!そう言えばあの船には他にも乗組員がいたはずだけど?その人達はどうしたの?」
「ふん、そんなの全員殺したに決まっているだろう」
「なっ!」
「何をそんなに驚く。証拠を残さない為に船に火を放っておいたからもしまだ息があった者も生きていないであろう」
「そんな・・・」
あまりの酷さに絶句した。
私が意識を失っていなければ、例え悪人でも殺させはしなかったのに・・・。
自分の不甲斐なさにぎゅと手を強く握りしめる。
そんな私の様子を不思議がるクロード王子。
「やはり変わった娘だ。自分を拐った男達の心配をするなど」
「人の命に良し悪しなんて無い!」
私キッとクロード王子を睨み付けた。
「・・・綺麗事を」
「っ・・・」
「さてこの話はここで終わりだ。私はこの後用事があるからこれで失礼する。・・・あぁ、ちなみにこの離宮内でならば私の執務室以外なら好きに過ごして良いぞ。ただし逃げようとして外に出れば衛兵に捕まるがな」
そう言い残してクロード王子は部屋から出ていった
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