魔法省にて
アンナさんが待機している部屋にジークと一緒に戻ると、ジークは凄く機嫌が悪いまま私にどうしてああ言う状況になったのかと説明を求められた。
私はその鋭い視線に身を縮ませながら経緯を説明する。私の説明にジークは無言のまま眉間に皺を寄せていたが、クラリスと踊った話をすると眉間の皺が深くなった。
そんなジークに私が怯えていると、気付いたジークが手で目元を覆い少し顔を上げて深くため息をついたのだ。
そして手を顔から離し眉間の皺を無くしたジークが苦笑混じりに私を見てきた。
「・・・どうやら俺はサラに対してだけ心が狭いようだ」
「え?」
「いや、気にしないでくれ。そうそう、サラには申し訳ないのだが暫く城に滞在して貰いたい」
「何で?」
今日散々私達の仲を見せ付けて、噂が間違いだったと思わせる事に成功してたと思うけど?
私がそう思いジークを不思議そうに見上げると、ジークはちょっと困った表情になり私を抱き締めてきた。
「サラ・・・そんな可愛い顔されると我慢出来なくなるから」
「なっ!」
真っ赤になっている私の額に口付けを落としてくる。
「これでも俺色々我慢してるんだ・・・あまり俺を煽らないで欲しい」
「あ、煽ってなんていないから!」
「・・・その可愛らしく顔を真っ赤にして睨んでくる所とかだよ」
そう言って微笑みながら私の唇に軽く口付けをしていった。
「・・・っ!ジ、ジーク!話の続きは!!」
「やっぱり可愛いな・・・そうそう、サラに城へ滞在して貰いたいのは、どうやらファメルバ侯爵が諦めずに裏で何か画策しているようなんだ」
「・・・何となくファメルバ侯爵が諦めて無いとは思ってた。それにクラリスから侯爵がどこかの貴族と話をする為どこかに行ったとも聞いてたから」
「そう言う事もあって、何かあった場合でもすぐ近くにサラがいてくれると助かるし侯爵への抑制にもなる。それにもしかしたらサラに危害を加えてくる可能性もある事から近くにいてくれれば絶対俺が守る」
「ジーク、ありがとう・・・分かったそう言う事なら暫くここにいるよ」
「ありがとう」
ジークは笑顔でお礼を言うともう一度私に口付ける為顔を近付けてくる。私はそれに応えようと目を閉じたが咳払いが聞こえてハッと目を開き、もう少しで触れる所だったジークの口を手で押さえて制した。
ジークはとても不満そうな目で訴えてきたが私はそんな場合では無い。顔を入口の扉に向けるとその近くで立っていたアンナさんが顔を赤らめ困った表情をしている。
しまったーーー!!アンナさんが部屋にずっといるの忘れてた!!!
私は顔を赤らめながら激しく動揺していると、ジークは私の手を口から外しアンナさんを見た。
「アンナ・・・出来ればもう少し気を効かせて欲しかったのだが」
「申し訳ございません。しかしこれ以上続くとサラお嬢様が大変な目に遭いそうでしたので・・・」
「・・・ここにも敵がいたのか」
「私が必ずサラお嬢様を『危険』からお守りします!」
「・・・その『危険』に俺が含まれていそうだが?」
「さぁ~?どうでしょう?」
「・・・・」
二人が笑顔で激しい火花を散らしている事など、恥ずかしさで気が動転していた私は気付いていなかったのであった。
城での生活をする事になって数日。今の所、特にファメルバ侯爵の動きに目立った動きは無かった。だがいつ何があるから分からないので一応警戒は怠らないようにしている。
そんなある日、滞在用に用意して貰った客室に訪問者がやって来た。
部屋に入ってきたのは二人の男性。一人は細身にローブを纏いもう一人はガッチリとした身体に軍服を着ていた。
私はその二人を見てうんざりする。
「サラスティア様お久し振りです!」
「お元気そうでなによりで。いやぁ~あのグランディア王国での魔族との戦い以来ですな」
「・・・お久し振りです。二人共元気そうで・・・」
笑顔で私に挨拶をしてきたのはこのアルカディア王国魔法師団長のカルロスと軍総督のビクトル。二人とはあの魔族との戦い以来会っていなかったのだ。しかし私はその二人を見てなんだか嫌な予感がする。
「実はジークフリード殿下からサラスティア様が暫くこの城に滞在されるとお聞きしまして、それならば是非我が魔法省にお越し頂き魔法の話をして頂きたいのです」
「私もカルロス殿と同じで是非我が軍の視察に来て頂き、そして出来れば指導もして頂きたいのです!」
・・・やっぱりか!!この魔法馬鹿に脳筋馬鹿共!!!!!
────アルカディア王国魔法省内実験広場。
私はグランディア王国で作って貰った何着かの一枚の騎士の恰好をしている。城に行く事になった時念の為と思って持って来ていたのだ。
今私が立っている場所は回りを高い壁に囲われた広場の中央。ここは魔法省が魔法の実験をする時に他に被害が行かないよう壁に防護魔法が施されている。
何故私がこんな所にいるかと言うと、あの時カルロスに必死に頼まれ仕方がなく魔法省に行ったのだが、どうやら私の話を聞いていた者や実際あの戦いで私の飛行魔法を目にした者達が是非目の前で見たいと懇願されてしまい、結局その熱意に圧されて現在に至っているのだ。
回りを見回すと魔法省の人達がワクワクした顔で見てきている。凄い人数がいるので多分ほぼ魔法省の人全員らしい。
私は一つ大きくため息をつき、そして目を閉じて意識を集中する。
体の周りに風を纏う感覚を感じ目を開け空を見上げて体をゆっくり浮かす。その瞬間回りの人々から感嘆の声が洩れる。私はその声を気にする事無く、速さを増して空高く浮かび上がり空中で一度停滞してから軽く旋回して地上に降り立った。
私が地面に足を着けると同時にドッと歓声が上がり人々はキラキラした目で私を見てくる。私はその目に既視感を感じた。
その時人々の中から一人大きく手を上げてきた者がいたのだ。
「お願いです!その魔法私に教えて下さい!」
その声に同意するように他の人々も手を上げて教えを請うてきた。
私はうんざりした顔になりながらカルロスを見ると、カルロスは困った顔をしながら頷いてくる。
・・・要は口で何言ってももう収まらないからやってくれと言うことか・・・しかしカルロス本当に良いのか?この後に起こる事は身を持って知ってるだろう?
そう思いながらも再度強く頷いてきたカルロスを見て、もう一度大きくため息をついてから周りを見渡した。
その数分後広場はぐったりしている人々で埋め尽くされていた。ちなみにやはり一番浮いたのは1㎝だけ浮いたカルロスだけだったのだ。そう結局ぐったりするの分かっててまたやったのであるこの男は。
・・・絶対こうなると思ってたよ!この魔法馬鹿共!!!
私はお城から人を呼び介抱を任して魔法省を後にしたのだった。
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