蒼の王太子と私
突然ジークフリード様と二人っきりになりとても緊張している。
ジークフリード様への想いを自覚してしまった為まともに顔が見れないでいるからだ。それも今は正装姿なのでかなり格好良く心臓が凄い勢いで動いているのが分かる。多分今私の顔は赤くなっていると思う。
「・・・サラ、ユリウスと何かあったのか?」
「え?」
「なんだか様子がおかしいし顔が少し赤いから」
「え~と、これは・・・」
「ユリウスにはさっき内緒だとはぐらかされるし・・・」
さすがにジークフリード様が好きな事に気が付いたからだと恥ずかしくて言えない!
「ユリウスに何かされたのか?」
「な、何もされて無いよ」
「じゃあ、何で俺の顔を見ないの?」
ジークフリード様が私の両肩を掴み、私の顔を覗き込んできた。
あまりの至近距離にさらに心臓が早鐘を打ち、思わずおもいっきり顔を反らせてしまう。
「・・・・・ちょっとユリウス殴ってくる」
「なっ!違うの!ユリウス殿下は関係無いから!」
目の据わったジークフリード様が踵を返してユリウス殿下を追おうとしたので、私は必死に腕を掴んで止めた。
「だが、明らかに様子がおかしい・・・」
「こ、これは・・・ジークフリード様が側に居るから!」
「!?」
あ~~~~もう!こうなりゃ女は度胸だ!!
私はさらに顔が真っ赤になっているのを感じながらジークフリード様の顔を見る。
呆然としているジークフリード様と目が合うと心臓が大きく跳ね上がった。そのせいで一瞬言うのを躊躇してしまったが、大きく深呼吸し落ち着かせてから口を開く。
「私・・・・・・ジークフリード様の事が好きです!」
「!!」
「さっきユリウス殿下が私の想いを気付かせてくれたんです」
「・・・・」
「・・・まあ、あんなに色んな事を仕出かしている私をもう嫌いになっていてもおかしくないけど・・・」
最後の方は段々弱気になって声が小さくてなってしまった。
普通そうだよね。あんなに好意を寄せてくれているのにずっと無下にしていたし、私のせいで死にかけもしたから今更告白しても困らせるだけだったかも・・・。
自分の発言に後悔してきて俯いてしまう。
「・・・嫌いになる筈が無い」
「え?」
突然ジークフリード様が私を抱き締めてきたのだ。
「俺がサラを嫌いになる筈無いだろう!」
「・・・・」
思わず顔を上げると真剣に見つめてくるジークフリード様と視線がぶつかり合う。
「・・・サラ、君が好きだ。もうサラ無しでは生きていけないほど君が好きなんだ」
「ジークフリード様・・・」
「サラ・・・愛している」
そう言ってジークフリード様が顔を傾けて近付いてくる。
私はゆっくり目を閉じてそれを受け入れた。
唇に柔らかく温かい感触を感じる。
その瞬間私の心は幸福に包まれ目から嬉し涙が溢れた。
唇が離れたので目を開けるとすぐ目の前で嬉しそうに頬笑まれる。
そして私の溢れた涙を唇で吸ってからまた私の唇にそれを重ねてきた。
暫くお互い唇を合わせ続けてから漸く離れた。しかしジークフリード様は私を離してくれない。
今更になって凄く恥ずかしくなり私はジークフリード様の胸から顔を上げられないでいる。ジークフリード様は何も言わずずっと私の髪を愛おしそうに撫でてくれた。
その時会場内からワルツの曲が聞こえてくる。
「そう言えば俺だけサラと踊って無いな・・・」
そうポツリと呟くと私を離し、手を差し出して笑顔でダンスを誘う姿勢をした。
「サラ、俺と踊ってくれませんか?」
「はい、喜んで!」
私はその手を満面の笑顔で取り二人っきりの庭で月明かりに照らされながらダンスを踊った。
今まで踊ってきたダンスで今が一番楽しい!
そうして楽しそうに見つめ合いながらのダンスを終え、二人で寄り添いながら噴水の縁に座って休憩する。
ジークフリード様はずっと私の肩を抱いたまま時折頭の上にキスを落としてくる。
「サラ、国に帰ったら婚約発表をしよう。そしてなるべく早めに結婚式をしようか」
そう言われてハッと気が付く。
そうか、お互い好きと言い合ったら普通はそうなるか。それもジークフリード様は王太子、早めに婚約発表をしたいよね。でも・・・。
街外れの街道沿いにある自分のお店を思い出す。そしてそこに楽しそうに来てくれるお客さん達の顔も・・・。
私は凄く悩んだ、ジークフリード様と一緒に行けば幸せな結婚は待っているだろうけど、その代わり貴族に戻りまた庶民としては店で働けない。逆に庶民として店を続ければ身分差の為ジークフリード様とは結婚出来ない。
「サラ?どうした?難しい顔して黙りこんで」
「・・・ジークフリード様!」
じっとジークフリード様の顔を見つめて決意を込めて口を開いた。
「私『今はまだ』ジークフリード様の婚約者にはなりません!」
「なっ!?」
「私の我儘だと分かっているけど、店の事もジークフリード様の事もどちらも諦める事が出来ないんです」
「・・・・」
「だからごめんなさい!私の気持ちが定まるまで婚約者にはなれないです・・・・・・だけどそれまで『恋人』では駄目ですか?」
「サラ!!」
ジークフリード様は私をぎゅっと強く抱き締めた。
「分かった、あの店はサラの大切な場所だからな。君の気持ちが決まるまで俺は待つよ。ただ時々は『恋人』の俺だけのサラになってくないか?」
「はい!」
私はジークフリード様の優しさに嬉しくなり、私からもジークフリード様の背中に手を回して抱きつく。
そしてもう一度唇を重ねて合わせたのだった。
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